宵闇に曙光を 2 幸助の初めての浮気は同棲してから一週間後のことだった。 最初の頃は泣きながら幸助を怒った。 幸助も、もうしないって言ってたのに…。 幸助の浮気は止まることがなかった。 ───幸助は、今日が付き合ってから一年なのを覚えているだろうか。 賭けをしていた。 もし幸助が記念日を覚えていたら、もう少し我慢しようと。 もし忘れていたら、この家を出て、幸助とお別れしようと。 「───…ばいばい」 あなたに、この声は届いているだろうか。 情事のあと、私が使っていた部屋に荷物がないことをあなたは気づくだろうか。 「…可愛くなけよ」 嫌でも耳に入る、私じゃない誰かに囁く甘い言葉。 扉の向こうから聞こえた言葉に、私は泣きながら部屋を出た。 「瑠樹ちゃん、ホントにいなくなるの?」 爽やかな茶髪の少年が悲しげに顔を歪ませた。 「…うん。 ここにも紅蓮にももう来ない」 紅蓮は幸助が頭の族だ。 「凌馬が寂しがるよ…?」 凌馬…。 私より小さい弟のような存在を思い出す。 ───それでも。 「私はもう決めたんだ」 あなたにもう会わないと。 [*前へ] [戻る] |