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シャーマンキング(ハオ)
ハオ切甘
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--千年前--



「わ、私を裏切ったのですか?!」


「別に裏切ったわけじゃないよ。子孫を残すためには仕方のないことなんだ。それくらい君だって分かってるだろう?」


「!!!!それでも、密会なんて…っ」


「じゃぁ堂々と側室に会いに行くって言えばよかったの??」


「そのようなことは…」


「そんなこと気にしないでよね。僕は君を愛してる…それで充分じゃないか」


「……っ貴方の愛は分かりずらいのです!!全く、見えないのです…っ!!」


涙を流しながら彼に訴える彼女は、懐から短刀を取り出した。


「な…っ?!!!」


彼女は自分の腹部を短刀で貫いて刀を抜いた。色鮮やかな服は、徐々に血で染まっていく。



「何してんだ、馬鹿者!!死にたいのか?!今すぐ医者を呼ぶからじっとして…っ?!」



彼女は慌てる彼に抱きついた。




「―――――の、」



「え??」


彼女は、か細い声で言った。











(こんなことでしか、貴方の愛を確かめられないの)



「愛だと…?」



「…こんなに慌てる貴方、初めて見ました…私は、とても…」




(嬉しいです)



彼女は口角を上げたまま目を閉じた。



「―――――――っ!!!!!!!」



**********************











「ハオ様は、この世に生きてるかな…」


長い藍色の髪をした少女が空を見上げて呟いた。彼女は目を瞑って彼を想った。彼女は千年前、ある術にかけられていた。それは自分で望んだもの。彼は転生して何度も蘇ると言っていた。そんな彼に一生ついて行こうと、彼女は自分に術をかけるように言ったのだ。そして転生することに成功し、現代を生きていた。だが、肝心の彼の姿が見つからない。



「あんなみっともない死に方しちゃったし…愛想尽かされちゃったかな。……、」


今までっずっと想っていたことを口にすると、自然と涙が零れてくる。上を向いても擦っても止まることのない涙。あぁ、こんなに愛しているんだな。そう言って彼女は涙を流しながら口許に笑みを浮かべていた。





「――――――あ、」


ふと街灯がチカチカしているところを見ると、知り合いが両手に荷物を持って歩いていた。知り合いだからと言って、声をかけることはしないが。最初に彼を見た時は驚いた。千年も前から想っている人と酷似していたから。だが、彼は私を知らなかった。初めましてと言った彼からは、自分の知っている想い人の気がなかった。見た目は同じでも、中身が違ったのだ。



「おぅ、久しぶりだなぁ〜」




視線に気付いたのか、彼は手を振ってへらっと笑った。





「ほんと、久しぶりだね……葉」



一緒に飯食うかと言われ、彼女は屋根から飛び降りた。





*************************



「しっかし、おどろいたなぁ〜」



「顎が外れそうなくらい口開いてたよ(笑」



「オイラでもびっくりしたよ。まさか屋根の上から飛び降りるなんてよぉ〜」



「ま、これくらい楽勝♪」



「凄いなぁ〜」



「(ユル!!一般人が2階の屋根の上から飛び降りたんだよ?!)…で、何でそんな大量に買い物袋持ってんの?」



「あーこれ?晩飯と明日の朝の分なんよ」



「へー…。ま、頑張ってね?何か辛そうだし。…リスバンとか、全部錘入りなんでしょ?」




「すげーな。何で分かったんだぁ?これめちゃめちゃ重いんよ」





「……うん、まぁともかく私は夕飯もう食べちゃったし、家に戻るね」


死なないように。そう言って彼女は葉に手を振って家に戻っていった。





「う、う゛〜(涙」

[葉殿〜(涙]









「…あ、葉ならハオ様のこと知ってたかなぁ…明日にでも学校に行って聞いてみるか、」

部屋に戻ってから気付いたが、すでに葉の姿は窓から見えない。私は諦めて窓の外から視線を離した。

*****************************





「…え、休み?」

学校に行くと、葉とアンナが休みだと先生から聞いた。…そういえば、と思ってカレンダーを見てみた。もうシャーマンファイトの時期だ。しかも、今頃パッチジャンボにでも乗ってるだろう。そして落とされる……確実に。



「先生!!私今から家族旅行なんで当分休みます!!」


みんなの笑い声と、先生の怒鳴る声を若干耳に入れながら、私は教室を飛び出した。――――シャーマンファイトには、必ずハオ様が出ているはずだ。私なら、どんな姿でも彼を見つけだすことが出来る。



*****************************






えーっと…


「会場に着いたのはいいけど…」


ハオ様に会いたい。だけど、今のハオ様に私は必要なのかな?私の代わりなんて、あの人ならいくらでもいるはず。…いまさら、だよね。



「ハオ、さまー…」



あぁ、千年経った今でもこんなに愛しいなんて。ねぇ、どうしたらいいの?私にはハオ様しかいないの。だけど、あの人は…。



「おーい!!!」




「………へ?葉?」




俯いていた顔を上げると、葉が目の前に立っていた。…しかも、なんか大勢連れて;



「久しぶりだなぁ〜。旅行かなんかか?」



「え?あ、まぁ……そんなもんかな?」



「ひとりで来たんかぁ?」



「まぁね。家族………、いないし」



つまんないから学校サボって1人旅。そう言って笑うと、葉も笑ってくれた。




「へぇ〜。1人旅でわざわざこんな所にねぇ」



「ア、アンナ…;その、ちゃんと理由を話せコラ的なオーラ放つの止めてよ!まじで怖いし殺気を感じるんだけど」



(((あんな口の聞き方出来る奴がいたのか…っ!!!)))



「あら、感じ取ってくれてるのね。なら話しなさいよ」



……怖い。葉が凄い可哀相に思えてきた。いつも他人事みたいに笑ってたけど、これは確実に怖い。



「……ちょっと、会いたい人がいて」



「おい!!俺は聞いたぜ!!」


私とアンナが話…というか、一方的に言わされた的な会話をしていたら、変な人が割って入ってきた。…鬱陶しいな、



「…誰?」



冷めた目で見ると、変な人は怖気づいたっぽい。



「こいつはオイラの仲間さ。チョコラブって言うんよ。こっちがホロホロで、こっちが蓮。んで、竜」



「…木刀の竜もシャーマンだったのね。まん太は?」



「ぼ、僕は違うよ。僕は…みんなの戦いを見届けに見たんだ」



「へー…やっぱ、まん太って友達思いだね」



「…って、俺をムシすんじゃねーっ!!!!!」



…忘れてた;




「ユルい葉は誤魔化せても、俺は誤魔化せないぜ!!お前、今…」








「ハオ様って言っただろ?!!!」




――――――――っ、



あぁ、視線が突き刺さるってこんな感じなんだなーなんて思いつつ冷静になってる自分って、周りから見たらどんなふうに見えてるんだろーなぁ。




「あいつと知り合いだったのか?相変わらずすげーなぁ」



「葉は相変わらずユルいわね。確かに、私はハオ様と知り合いよ」



「ハオ"様"だと?!」


カチャ、と私に向けられた武器。この時代でも、彼はこんな…



「ねぇ、」



アンナが私の名前を呼んだ。咄嗟にアンナの方に顔を向けると、頬に電流が流れるような痛みが走った。




「…?!」




少ししてから、アンナに頬を叩かれたのだと気付いた。(しかも左手)




(((幻の左手…っ!!!!)))




「なんでもっと早く話さなかったの、この馬鹿!!」




「…い、痛いんだけど;」



「当たり前じゃない。で、いつから?」



きょ、恐怖…っ




「せ、千年前からです!!」


敬礼をする勢いで言うと、アンナは冷たい目で私を睨んだ。



「冗談言う余裕があるなら、もう一発喰らう?」



な、涙が…っ(冗談じゃないもん!!)









「冗談なんかじゃないよ。彼女の言ってることは本当さ」


―――?!!!




「ハ、オ…様?!」



「「ハオ?!」」



「千年ぶりだね、凛……;」




ハオ様の姿を見た瞬間、逆方向に駈け出した。だって、会わせる顔なんてないもん。会いたいと思ってたけど、やっぱり会えない。愛してるけど、あの人はきっと私を愛していない。もう、千年も前のことだもん。彼にはたくさんの従者がいる。選びたいほうだいじゃない。




***************************









「あーもうバカバカっ!!せっかく会えたのに何で逃げてんのぉ?!」


最悪だあ!!あのまま感動の再会でもしてれば…っ







「本当だよ。逃げなくていいのに」



そうだよねぇ。逃げる必要なんてないのに…




「ってハオ様?!!」



「僕から逃げられるとでも思ってたの?君は相変わらず逃げる時は森の中なんだよね。心は読めなくても行動パターンは丸見えだよ」



「……;」



せっかく見つかりにくそうな森の中に逃げたのに…。葉達と離れちゃったのは心寂しいけど、ハオ様が追いかけて来てくれたことが嬉しいとか、私ってほんと空気読めない!!



「……あのさ、凛」



「はい?」



「僕は今でも君を愛してるよ」







……私はこの言葉をずっと待っていたんだ




***************************



「あの時は…悪いと思っている」


あの時…?あぁ、千年前のことか。


「ハオ様は悪くありません。全部私の我儘だったんです。あの時のこと、本当に申し訳ないと思っています。ハオ様は私をちゃんと愛してくれていました。でも、私が気付かなかったんです。だからハオ様の前で、あんなみっともない…」



「僕が悪いんだ。仕事ばかりで全然君に構ってあげられなかったからね。…ねぇ、今でも昔の約束は有効かな?」



約、束………、




「当たり前じゃないですか。約束は守るためにあるんですよ?…私は、ハオ様に一生ついていくと決めたんです。もう二度と、あんなことしません」



「…それを聞いて安心したよ」






「『ハオ様…心の底から、お慕い申し上げています。生涯、貴方についていきたいのです』」



「…『僕もだよ。君は僕が初めて本気で好きだと…愛しいと思った人なんだ。手放してなんてあげないからね?約束しよう』」





「覚えてたんですね」


「忘れるわけないだろう?あんなに緊張したの初めてだったんだから」


私たちは、顔を見合せて笑った。







僕が不甲斐ないせいで凛が死んだ。あの時のことは、今でも夢に見てしまう。何度も転生して家族を持った。だけど、僕の愛はそこになかった。その感情を抱くのは凛だけ。もう絶対に不安なんてさせない。――――――千年前の約束を果たそう、凛。






時 を 越 え て




********************

ちょっと長めの1Pのくせに
ネーム変換少ないですね;
申し訳ないですorz


〜解説〜

1000年前、ハオの妻は自害しました。生まれつき子供が産めない身体で、ハオは子孫を残すために側室と密会。自分が子供を産めないから…そう言い聞かせても、ハオは仕事ばかりで自分に構ってくれません。ハオの愛を確かめたくて、自らの手で短刀を身体に突きつけました。ハオは大慌て。それを見て彼女は愛を感じ、息絶えました。
そして1000年後、葉と同じクラスです。因みにサボり魔で、学校はきまぐれで行く程度。だけど、葉の家とはわりと近いので仲良し。
シャーマンファイト本戦の前になると、必ず選手は会場に集まります。ハオが予選で負けるわけないと思い、彼女は本戦寸前に日本を発ちました。そこですぐに葉と会い、葉に会いに来たハオと会い……。
1000年前、自分がハオに告白したときのセリフをもう一度言いました。ハオもしっかり覚えていて、2人で懐かしいなんて思いつつ抱擁。(終わり)



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