シャーマンキング(ハオ)
ハオ切甘
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--千年前--
「わ、私を裏切ったのですか?!」
「別に裏切ったわけじゃないよ。子孫を残すためには仕方のないことなんだ。それくらい君だって分かってるだろう?」
「!!!!それでも、密会なんて…っ」
「じゃぁ堂々と側室に会いに行くって言えばよかったの??」
「そのようなことは…」
「そんなこと気にしないでよね。僕は君を愛してる…それで充分じゃないか」
「……っ貴方の愛は分かりずらいのです!!全く、見えないのです…っ!!」
涙を流しながら彼に訴える彼女は、懐から短刀を取り出した。
「な…っ?!!!」
彼女は自分の腹部を短刀で貫いて刀を抜いた。色鮮やかな服は、徐々に血で染まっていく。
「何してんだ、馬鹿者!!死にたいのか?!今すぐ医者を呼ぶからじっとして…っ?!」
彼女は慌てる彼に抱きついた。
「―――――の、」
「え??」
彼女は、か細い声で言った。
(こんなことでしか、貴方の愛を確かめられないの)
「愛だと…?」
「…こんなに慌てる貴方、初めて見ました…私は、とても…」
(嬉しいです)
彼女は口角を上げたまま目を閉じた。
「―――――――っ!!!!!!!」
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「ハオ様は、この世に生きてるかな…」
長い藍色の髪をした少女が空を見上げて呟いた。彼女は目を瞑って彼を想った。彼女は千年前、ある術にかけられていた。それは自分で望んだもの。彼は転生して何度も蘇ると言っていた。そんな彼に一生ついて行こうと、彼女は自分に術をかけるように言ったのだ。そして転生することに成功し、現代を生きていた。だが、肝心の彼の姿が見つからない。
「あんなみっともない死に方しちゃったし…愛想尽かされちゃったかな。……、」
今までっずっと想っていたことを口にすると、自然と涙が零れてくる。上を向いても擦っても止まることのない涙。あぁ、こんなに愛しているんだな。そう言って彼女は涙を流しながら口許に笑みを浮かべていた。
「――――――あ、」
ふと街灯がチカチカしているところを見ると、知り合いが両手に荷物を持って歩いていた。知り合いだからと言って、声をかけることはしないが。最初に彼を見た時は驚いた。千年も前から想っている人と酷似していたから。だが、彼は私を知らなかった。初めましてと言った彼からは、自分の知っている想い人の気がなかった。見た目は同じでも、中身が違ったのだ。
「おぅ、久しぶりだなぁ〜」
視線に気付いたのか、彼は手を振ってへらっと笑った。
「ほんと、久しぶりだね……葉」
一緒に飯食うかと言われ、彼女は屋根から飛び降りた。
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「しっかし、おどろいたなぁ〜」
「顎が外れそうなくらい口開いてたよ(笑」
「オイラでもびっくりしたよ。まさか屋根の上から飛び降りるなんてよぉ〜」
「ま、これくらい楽勝♪」
「凄いなぁ〜」
「(ユル!!一般人が2階の屋根の上から飛び降りたんだよ?!)…で、何でそんな大量に買い物袋持ってんの?」
「あーこれ?晩飯と明日の朝の分なんよ」
「へー…。ま、頑張ってね?何か辛そうだし。…リスバンとか、全部錘入りなんでしょ?」
「すげーな。何で分かったんだぁ?これめちゃめちゃ重いんよ」
「……うん、まぁともかく私は夕飯もう食べちゃったし、家に戻るね」
死なないように。そう言って彼女は葉に手を振って家に戻っていった。
「う、う゛〜(涙」
[葉殿〜(涙]
「…あ、葉ならハオ様のこと知ってたかなぁ…明日にでも学校に行って聞いてみるか、」
部屋に戻ってから気付いたが、すでに葉の姿は窓から見えない。私は諦めて窓の外から視線を離した。
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「…え、休み?」
学校に行くと、葉とアンナが休みだと先生から聞いた。…そういえば、と思ってカレンダーを見てみた。もうシャーマンファイトの時期だ。しかも、今頃パッチジャンボにでも乗ってるだろう。そして落とされる……確実に。
「先生!!私今から家族旅行なんで当分休みます!!」
みんなの笑い声と、先生の怒鳴る声を若干耳に入れながら、私は教室を飛び出した。――――シャーマンファイトには、必ずハオ様が出ているはずだ。私なら、どんな姿でも彼を見つけだすことが出来る。
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えーっと…
「会場に着いたのはいいけど…」
ハオ様に会いたい。だけど、今のハオ様に私は必要なのかな?私の代わりなんて、あの人ならいくらでもいるはず。…いまさら、だよね。
「ハオ、さまー…」
あぁ、千年経った今でもこんなに愛しいなんて。ねぇ、どうしたらいいの?私にはハオ様しかいないの。だけど、あの人は…。
「おーい!!!」
「………へ?葉?」
俯いていた顔を上げると、葉が目の前に立っていた。…しかも、なんか大勢連れて;
「久しぶりだなぁ〜。旅行かなんかか?」
「え?あ、まぁ……そんなもんかな?」
「ひとりで来たんかぁ?」
「まぁね。家族………、いないし」
つまんないから学校サボって1人旅。そう言って笑うと、葉も笑ってくれた。
「へぇ〜。1人旅でわざわざこんな所にねぇ」
「ア、アンナ…;その、ちゃんと理由を話せコラ的なオーラ放つの止めてよ!まじで怖いし殺気を感じるんだけど」
(((あんな口の聞き方出来る奴がいたのか…っ!!!)))
「あら、感じ取ってくれてるのね。なら話しなさいよ」
……怖い。葉が凄い可哀相に思えてきた。いつも他人事みたいに笑ってたけど、これは確実に怖い。
「……ちょっと、会いたい人がいて」
「おい!!俺は聞いたぜ!!」
私とアンナが話…というか、一方的に言わされた的な会話をしていたら、変な人が割って入ってきた。…鬱陶しいな、
「…誰?」
冷めた目で見ると、変な人は怖気づいたっぽい。
「こいつはオイラの仲間さ。チョコラブって言うんよ。こっちがホロホロで、こっちが蓮。んで、竜」
「…木刀の竜もシャーマンだったのね。まん太は?」
「ぼ、僕は違うよ。僕は…みんなの戦いを見届けに見たんだ」
「へー…やっぱ、まん太って友達思いだね」
「…って、俺をムシすんじゃねーっ!!!!!」
…忘れてた;
「ユルい葉は誤魔化せても、俺は誤魔化せないぜ!!お前、今…」
「ハオ様って言っただろ?!!!」
――――――――っ、
あぁ、視線が突き刺さるってこんな感じなんだなーなんて思いつつ冷静になってる自分って、周りから見たらどんなふうに見えてるんだろーなぁ。
「あいつと知り合いだったのか?相変わらずすげーなぁ」
「葉は相変わらずユルいわね。確かに、私はハオ様と知り合いよ」
「ハオ"様"だと?!」
カチャ、と私に向けられた武器。この時代でも、彼はこんな…
「ねぇ、」
アンナが私の名前を呼んだ。咄嗟にアンナの方に顔を向けると、頬に電流が流れるような痛みが走った。
「…?!」
少ししてから、アンナに頬を叩かれたのだと気付いた。(しかも左手)
(((幻の左手…っ!!!!)))
「なんでもっと早く話さなかったの、この馬鹿!!」
「…い、痛いんだけど;」
「当たり前じゃない。で、いつから?」
きょ、恐怖…っ
「せ、千年前からです!!」
敬礼をする勢いで言うと、アンナは冷たい目で私を睨んだ。
「冗談言う余裕があるなら、もう一発喰らう?」
な、涙が…っ(冗談じゃないもん!!)
「冗談なんかじゃないよ。彼女の言ってることは本当さ」
―――?!!!
「ハ、オ…様?!」
「「ハオ?!」」
「千年ぶりだね、凛……;」
ハオ様の姿を見た瞬間、逆方向に駈け出した。だって、会わせる顔なんてないもん。会いたいと思ってたけど、やっぱり会えない。愛してるけど、あの人はきっと私を愛していない。もう、千年も前のことだもん。彼にはたくさんの従者がいる。選びたいほうだいじゃない。
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「あーもうバカバカっ!!せっかく会えたのに何で逃げてんのぉ?!」
最悪だあ!!あのまま感動の再会でもしてれば…っ
「本当だよ。逃げなくていいのに」
そうだよねぇ。逃げる必要なんてないのに…
「ってハオ様?!!」
「僕から逃げられるとでも思ってたの?君は相変わらず逃げる時は森の中なんだよね。心は読めなくても行動パターンは丸見えだよ」
「……;」
せっかく見つかりにくそうな森の中に逃げたのに…。葉達と離れちゃったのは心寂しいけど、ハオ様が追いかけて来てくれたことが嬉しいとか、私ってほんと空気読めない!!
「……あのさ、凛」
「はい?」
「僕は今でも君を愛してるよ」
……私はこの言葉をずっと待っていたんだ
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「あの時は…悪いと思っている」
あの時…?あぁ、千年前のことか。
「ハオ様は悪くありません。全部私の我儘だったんです。あの時のこと、本当に申し訳ないと思っています。ハオ様は私をちゃんと愛してくれていました。でも、私が気付かなかったんです。だからハオ様の前で、あんなみっともない…」
「僕が悪いんだ。仕事ばかりで全然君に構ってあげられなかったからね。…ねぇ、今でも昔の約束は有効かな?」
約、束………、
「当たり前じゃないですか。約束は守るためにあるんですよ?…私は、ハオ様に一生ついていくと決めたんです。もう二度と、あんなことしません」
「…それを聞いて安心したよ」
「『ハオ様…心の底から、お慕い申し上げています。生涯、貴方についていきたいのです』」
「…『僕もだよ。君は僕が初めて本気で好きだと…愛しいと思った人なんだ。手放してなんてあげないからね?約束しよう』」
「覚えてたんですね」
「忘れるわけないだろう?あんなに緊張したの初めてだったんだから」
私たちは、顔を見合せて笑った。
僕が不甲斐ないせいで凛が死んだ。あの時のことは、今でも夢に見てしまう。何度も転生して家族を持った。だけど、僕の愛はそこになかった。その感情を抱くのは凛だけ。もう絶対に不安なんてさせない。――――――千年前の約束を果たそう、凛。
時 を 越 え て
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ちょっと長めの1Pのくせに
ネーム変換少ないですね;
申し訳ないですorz
〜解説〜
1000年前、ハオの妻は自害しました。生まれつき子供が産めない身体で、ハオは子孫を残すために側室と密会。自分が子供を産めないから…そう言い聞かせても、ハオは仕事ばかりで自分に構ってくれません。ハオの愛を確かめたくて、自らの手で短刀を身体に突きつけました。ハオは大慌て。それを見て彼女は愛を感じ、息絶えました。
そして1000年後、葉と同じクラスです。因みにサボり魔で、学校はきまぐれで行く程度。だけど、葉の家とはわりと近いので仲良し。
シャーマンファイト本戦の前になると、必ず選手は会場に集まります。ハオが予選で負けるわけないと思い、彼女は本戦寸前に日本を発ちました。そこですぐに葉と会い、葉に会いに来たハオと会い……。
1000年前、自分がハオに告白したときのセリフをもう一度言いました。ハオもしっかり覚えていて、2人で懐かしいなんて思いつつ抱擁。(終わり)
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