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07-GHOST_2
※続編等ではありません
コナツ切甘
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凛、ちょっといいですか?……そう言ってふわりと微笑んで私を呼ぶ彼が大好きだった。…いや、今でも好きなの。だけど、彼は隣にいない。



発端はちょっとしたもの。私が友達と遊びに行くと約束して。同じ日にコナツにデートに誘われて。友達と先に約束しちゃったって言ったら、彼は友達は大切にと言って、また今度にしようと提案してくれた。彼の気遣いが嬉しかった。ブラックホークの一員である彼は忙しい。しかも、サボリ魔で有名なヒュウガ少佐のベグライターだがら苦労が絶えない。そんな彼のせっかくの休日のデートの誘いを断っちゃっちゃうのは…と思ったが、ここで友達との約束をキャンセルするとコナツが困った顔をするのは目に見えていたから頷いておいた。そしてそして、当日。…………彼との恋仲を知っているはずなのに、友達はあろうことか合コンしようと言い出した。話を聞いているうちに気付いた。私は人数合わせで呼ばれたんだと。そんなもののためにコナツの誘いを断ってしまったのか。後悔と懺悔の念でいっぱいになってしまった。けど、後には引き返せないような状況になってから真実を聞かされ、そのまま合コンに参加するはめになってしまった。そこで無理にでも出ていけばよかったのに。気付けば盛り上がって、私も楽しんでいた。二次会にでも行こうって話になって、友達と男2人で移動していた。…そこで偶然にも会ってしまったのだ。ちょっと不機嫌そうなコナツと。

彼と目が合うと、時が止まったかのように静かになった気がした。私のその時の表情は焦燥にかられた顔か、驚愕で満ちた顔か、はたまた困惑した笑みを浮かべていたのか。きっと、全部に当てはまるような複雑な表情をしていたのだと思う。コナツは私から視線をそらすと一緒にいた男2人に視線を向け――――――何も言わずに踵を返してその場を去ってしまった。最後に見た表情は、切なげな表情。私はすぐに追いかけたかったのに足が動いてくれなくて…気付いた時には、彼の背中は見えなくなっていた。


それから1週間。故意的なのか、彼とは一度も会っていない。彼がよくいる場所に行っても姿が見えない。完璧に避けられていた。……寂しい。普段からあまり会えないのに、避けられてるなんて……こんなモヤモヤした気持ちのまま仕事なんてできない。…けど、書類を持ってちゃんと仕事をしている自分が笑えるなぁ……





「コナ、ツ…っ」



クシャリと思わず抱えていた書類をぐしゃぐしゃにしてしまった。








「あーらら」



不意にうしろから声がして、はっと振り向いた。それは以前まで聞き慣れていた声。いつもコナツをからかってばかりのヒュウガ少佐の声だった。少佐はニコニコと笑みを浮かべて私に近付いてきた。



「す、すみません…っ!!」


確か、中にはブラックホーク宛ての書類もあった気がする。あぁ、どーしょう。まったく、何やってんだ私。しっかりしろ。


「別に俺は困らないからねー。あえて言うなら、書類整理をするコナツが困るかな」


「っ…」


ほんとバカだなぁ、私。仕事中にも困らせちゃうなんて。



「ごめ、なさ「謝るならさ、俺の話きいてよ。ね?」


少佐は壁に寄り掛かって私を見た。…うん、完全に行く手を阻むって感じのポジションにいるから、どうやら私に拒否権はないみたい。


「…はい」




「最近さー、書類整理が進まないんだよねー。まぁ、俺は何もやってないけど」


何もやってないんですか。


「コナツの調子が悪くてさー。なんかイライラしてて、この前なんて本気で刀向けられちゃうくらい棘々しい雰囲気でさ?カルシウム…や、凛ちゃん不足なんだよねー」



「………へ?」



パサリ。少佐の思いがけない言葉に、書類を落としてしまった。慌てて拾おうと屈むと、少佐も一緒にしゃがんだ。…ってか、顔が近いのはきのせい?



「あの、少「しっ……コナツが見てるからさ」…っ?!」


気配をけしてるのだろうか、それとも少佐の嘘なのか、私にはコナツの気配は感じられなかった。…けど、いるとしたらこんな姿…


「きっと、ここで俺が凛ちゃんを襲ったら、まじで刀出してくるよ(笑)…凛ちゃんが、好きだからさ。だからちょっと乗ってみない?」


「…え、」


「早く仲直りしてくれないと、書類整理が終わらなくてさー。アヤたんの鞭の餌食になっちゃうんだよね。それだけはほんと勘弁。だから、ね?」



もし、少佐の話に乗ったら…本当にコナツは出てきてくれるのかな?



「だから、僕が凛ちゃんの腕を掴むから、コナツって叫んでみ?」


「は、はい…っ!!」


なんか、遊ばれてる気がするけど……いい、よね?





「凛ちゃん」


急に少佐が真剣な目で私の名を呼んだ。


「は、はい………っ?!」


今思い出したんだけど、私…コナツ以外の男の人を知らない。手を繋いだのも、キスをしたのも、それ以上も全部全部コナツが初めてだった。………って、




「キャッ…っ!!!」





背中は床とこんにちは。…って悠長に考えてる場合じゃないって!!!!この状況、本当に演技なわけ?!少佐が私の上に…っ





「コナ、コナツ…っ!!!!!!」




あぁもう、本当に助けて!!ぶっちゃけニタニタした少佐が怖いですって!!なんかリアルなんですって!!





「コナツなんて止めて、俺にしちゃえばいいのにー」




「じょ、冗談言わないでくださいっ!!」



「えー?こう見えて本気なんだけどなー」



「っわ、私はコナツが好きなんです!!!」









「本当ですか、それは」




一瞬、身体の全機能が停止した。本気でそう思った。私と少佐から数歩離れたところにはコナツが立っていた。真っ直ぐ私を見て…ただ、まっすぐな瞳を私に向けていた。




「ほ、本当です…っ!!」



「…と言う訳でヒュウガ少佐。今すぐどいて下さい」




「ほーい。じゃ、仲良くね、2人とも!!これで俺も楽ができる♪」



少佐はものすごくあっさりと私の上からどいて手を振ってその場を後にした。うん、迫真の演技過ぎてびっくりしましたよ、ほんと。




……少佐には感謝してますとも!けど、この場の空気は最高潮に悪いですよ?!何言っていいかわからないじゃないですか!






「「あの、」」



っとっと。コナツ君とハモっちゃった。コナツ君も気まずそうに視線を泳がせてる。こんな彼を見るの初めてだな。まずは…謝るべき、なのかな?友達と遊びに行くって言ったのにあの人達まで一緒で…。





「すみません、凛」



「……へ?!」



え、ちょ、まっ




「な、なんでコナツ君が謝るの?」






「その…………嫉妬、してたんです」



「嫉妬…?」



「先日、凛の友達が私を訪ねて来たんです。あれは誤解だって、一生懸命過ぎて支離滅裂な話し方でしたが」



「え…」



「大体は予想してた通りでした。凛は優しいから断れなかったんだろうって。……けど、最近凛とまともに話していなかったので、楽しそうに周りにいる奴と話している凛を見て…」



珍しくコナツ君が言葉を濁した。それを見て、私は不謹慎だけど笑ってしまったんだ。









大 好 き 過 ぎ て










あのね、あの時コナツ君のことを話してたんだよ。俺達に勝ち目ないじゃんって笑って言うもんだから、私もおもわず笑って話をしてたの。私が笑顔で楽しくいられるのは、全部コナツ君のおかげなんだよ。

そう言ってコナツ君に抱きつくと、背中に手をまわして私を包んでくれた。






「凛、ちょっといいですか?」


「なーに?」







彼を見上げると、優しいキスが降ってきた。

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