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最遊記外伝
ほのぼの
友情(?)
恋愛要素無
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「…うぜぇ」


「まぁそう言うな。黙って座ってりゃいーんだぜ?」




天界―――


とある一室で新らしく入った軍人の歓迎会…いや、宴が行われていた。首謀者は観世音菩薩のため、上官ともいえる人は倦簾大将、天蓬元帥の2人。そして自分と甥である金蝉童子と(ペットの)悟空である。(二郎神は上手く撒いた)


(ただの観世音の暇つぶしと言った方が頷ける)


宴が始まってから1時間―――100人近くいた軍人の中の半数近くは頬を染めていた。(単に酔っているだけ)そんな盛り上がっていた頃、観世音が思いついたように言いだしたのだ。意気込み…まぁ、抱負と言うべきなのだろうか。面白半分で自分の暇つぶしの為に言ったのだが、なんとも(変に)上手く出来た頭の軍人達は、自分を観世音が評価してくれるという、自分の今後のためのチャンスだと思い込んで一人一人観世音に向かって言った。




天界のために


天帝のために


平和のために


自らの命など


力のある限り





そんな台詞が殆どで、すぐに観世音は飽きていた。金蝉や倦簾、天蓬は最早聞いていないで酒を飲んでいた。(観世音も聞いているかどうか不明だ)悟空は最初から手を休めずに口に食べ物を詰め込んでいた。



「あのなー…俺が聞きてぇのは、んな事じゃねーんだよ…」


痺れを切らしたように観世音が言うと、軍人達は口を閉ざして視線を泳がせ始めた。観世音の機嫌をとる言葉が見つからないのだ。



(つまんねー。つまんねー)



端から端まで部屋を見渡して、誰か面白そうな奴はいないのかを探す観世音。








「―――――――おい、」





出入り口の前で1人、腕を組んでつまんなそうに外を見ている人がいた。




(髪が短くて分かんなかったけど、あいつ…女じゃねーか)




女の軍人だなんて聞いたことがない観世音。誰かのコネか、と考えてじっと女を見た。






「―――ナンデスカ?」



観世音の視線に気が付いた女は、カタコトで喋った。敬語が苦手なのか、はたまた観世音に対して敬語を使いたくないのか。どんな理由にせよ、観世音にとっては退屈しのぎになりそうな奴と認識されてしまった。



「おい、お前観世音菩薩様になんて口聞いてんだ!」



「…その菩薩様に退屈で耳にタコができるような台詞吐き続けてるよりはマシだと思うぜ?」


「なんだと…?!」


「止めろ!菩薩様の前だぞ!」


「…お前も、天帝のためなら死ねるとかほざきやがって…。無駄死にもいいとこだぜ」


「な…っ!!!」


「黙れ黙れ!!」



女に話しかけた観世音を差し置いて話しだす人達。観世音は至極面白そうに見ていた。(それに溜息をついて金蝉は見て、倦簾と天蓬も横目で見ていた)




「お前はまだ観世音菩薩様に何も言ってないよな?」



「もう家に帰りたいでーす、とか言って出てけっ!」



女は少し考える素振りをして観世音に視線を向けた。



(!!!こいつ………)




目が合った瞬間、観世音は息をするのを一瞬止めてしまった。澄んだ碧い瞳に吸い込まれるかと思ったのだ。自分の甥のように純粋で、倦簾のように誇らしく、天蓬のように温かく、悟空のように真っ直ぐな瞳に…。








「あたしは、こいつらのように死ぬ覚悟なんてない。誰かの為になんて死んでやらない。…まぁ、生きる覚悟なら持っているけどな」


大声で言ったわけでもないのに、広い部屋に女の凛とした声が響いた。




(悟空がポロっと林檎を手から落とした)

(倦簾が天蓬の持つお猪口に注いでいた酒を溢れさせた)

(頬杖をついて今にも寝そうだった金蝉が目を見開いた)



(観世音が、ニヒルと笑った)



「な、なんてこと「おい、お前の名は何だ?」…観世音菩薩様?」


観世音は続けて言った。



「お前に興味がある。喜べよ」



「嬉しくねー……凛だ。桜井凛」


「凛、か…」



「桜井さーん、こっちきて一緒に飲みませんか?」


「凛ちゃん、俺に酒注いでくれーっ」


倦簾も天蓬も、ヘコヘコしないで堂々としてる凛を気に入り、自分達のもとに来るように促した。


女…凛は、フッと笑って歩き出した。(まるで、モーゼの十戒のように道が開いた)


…が、そんな上手くいくわけもなく。




「女っていーよな。上官に色目使えばあんな…」


そんな言葉が聞こえ、凛は足を止めた。


「…今言ったの誰だ?」


「俺だが?何か文句でもあんのか?間違ったこと言ってねーだろ?なぁ、」


その男は偉いのか何なのかは分からないが、周りに同意を求めるとすぐに賛同の声が上がった。(ついでに凛を中傷する声も)


「…さっきの会話で色目使ったか?あ?それにな…今の台詞、倦簾大将と天蓬元帥に対する冒涜だと思わねーのか?」


「…なに?」


「あの2人が女の色目に引っかかるような軽い男だって言ってんのと同じなんだよ、バーカ」


「―――クソッ!」


凛に対する厭味を言ったのだが、上手く返されてしまって自棄になり、男は凛に殴りかかった。(凛はそんな男に憐れんだ視線を向けて上手くかわした)


「すぐ頭に血が上るんだな。図星、ってか?…てゆーか、いっつも思ってたんだけどさ…親のコネで軍人になった奴がいい気になってんじゃねーよ。実力もねぇくせに。天界のために、とか綺麗事ばっかいいやがって、いい加減うぜーんだよ」


「何だと?!」


「ちょうどいい機会だ。あの人達に実力見せてやれよ。全員まとめてかかってこい」


男達に鼻で笑いながら言うと、挑発に乗って一斉に男達は殴りかかった。これはちょっとまずいだろ…と思って止めようとした倦簾と天蓬、金蝉、悟空だったが…







「い」


「い」


「ひ」


「ま」


「つ」


「ぶ」


「し」


「だ」


「ろ」





殴りかかってくる男達を簡単に避けて、凛は5人に向かって確かにそう言ったのだ。


「…どう思います?」


「いい女じゃねーか」


「…フン」


「あのねーちゃん、つよ…」


「(4人とも…いや、俺を含めて5人に一気に気に入られるとはな)」

観世音はクックと喉で笑って成り行きを見ていた。










「おいおい、本当に軍人か、こいつら…」


数十分で立っている人は凛だけとなっていた。そんなことに驚いていたのは凛だけではない。暇つぶしに見ていた彼等も、凛の強さに少なからず驚いていた。



「…やっと見晴らしがよくなりましたねぇ。桜井さん、一緒にゆっくり飲みましょう♪」


「(結構図太い神経してんな、天蓬元帥;)アリガトウゴザイマス」


今度こそ凛は5人の元へ行き、雑談を交えながら酒を飲んでいった。






(こんな暇潰しも、たまには…な)









「観世音菩薩様―――っ!!!」



遠くで、二郎神が泣き叫ぶ姿が目撃されていたとか。


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あきゅろす。
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