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安堵 (連載3)


隣の芝は青い。(絶対に)





【安堵】



最近、松本の様子がおかしい。ただ単に"おかしい"というと語弊があるが、松本のサボり癖を知っている俺からしてみれば、至極不思議だ。本棚の上に隠すとか、俺に対する挑戦的な小細工をしてまで書類整理を嫌っていた松本。仕事は溜まってんのに定時に帰るわ、書類運びと言ってはどっかの隊で寛いでるわ、サボりの天才としか言えないほどだった。なのに、今目の前にいる松本は…インクが無くなったといって他の隊士に借りるほど机に噛り付いている。おかげで俺も定時に帰れて楽なんだが……怪しい。



「松本、」



「なんですか?ちゃーんとやってますよー?」



「…あ、あぁ…;そろそろ休憩していいぞ?」



「んー…これ終わったらにします」



「そうか、」



…。何だ、何だ?!俺が松本に休憩しろと言ったのは何年ぶりだろうか。記憶にある限り無に等しい…なのに、松本は喜びもせず黙々と手を動かす。(本当にどうなってんだ?)



「冬獅郎、ちょっと話があるんだけど…」


「…なんだ?」


「ここじゃちょっと…」


「じゃぁ、今晩俺の部屋に来るか?」


「うん!!」















「…で、話って何だ?」

定時を過ぎ、いつも通り自室に戻った俺。いつもと違うのは、隣に凛がいることだけ。(しかも、ちゃっかりお泊りセットってのを持ってる凛)夕食を食べ終え風呂に入り、あとはもう寝るだけって時に話を振った。(凛は、それまで何も言わなかった)きっと、自分から言い出すには重い話なんだろう。



「…私、十番隊にいないほうがいいのかな?」


「・・・は?」



(誰かに厭味を言われたのか?)



「あ、いや、みんないい人なんだよ?!だけど…その、松本副隊長が、」



「松本がどうかしたか?」



「なんか、元気がないってゆーか……きっと、私のせいだと思うんだよね」



元気がないのは分かる。だが…



「凛の…せいだと?」





「この前、雛森副隊長とお話したの。その時に…」






凛はゆっくり、自分の頭の中を整理するように話した。
松本は、凛に副隊長を…俺の背中を護る役をとられるんじゃないのかって不安がってること。自分は書類整理もやらない、卍解もできない。だけど凛は俺の彼女で卍解もできるし、書類整理も早い。だから、最近無理してまで俺に"副隊長辞めろ"って冗談でも言われないようにしているんだと……。あの松本が雛森にそんな相談してただなんて思いもよらないことだった。確かに、凛は卍解もでいるし書類整理も申し分ない。…だけど、松本、





「…あいつ、勘違いしてるな」


「…そうだね」





俺の副隊長と認めているのは…俺の背中を護っていい奴は、そこまで信頼しているのは、松本なんだぜ?



「どうしたらいいのかな、私」



「凛、お前が悩むことはない。俺がなんとかするから。…確かにお前は強い。だけど…お前には俺の背中は預けないさ」




「…?」



「お前は俺の護りたい奴だからな。もちろん、十番隊の奴みんなも護る。だけど、それは隊長としてだ。日番谷冬獅郎が護りたいのは…欲しいと思うのは、お前だけだぜ?」



(今いるのが、布団の上とか……)



「っ…///あほ、ばか、へんたい、てゆーか空気読め!まじほんと冬獅郎って空気読めてない!」



「そーゆー俺を好きになったのは何処のどいつだ?(それに、お前が一番シリアス空気が嫌いなの知ってんだぜ?)」



「…//////」




月明かりに照らされる真っ白いシーツの上にいる凛は、




(死神というより天使だな)



ま、本人には絶対言ってやんねーけど。



















「おはようございます、隊長」


「あぁ。今日も早いな、松本」


「まぁ副隊長ですから?」


「…そうだな」




(重役出勤とは良い御身分だな、松本)


(隊長の代わりに遅刻してるんですーっ)



そんな会話が、凄く懐かしく感じた。







「なぁ、松本」


「なんですかー?」




「俺の背中を護るのはお前しかいないからな。そんな肩に力入れんな」



「…っはーい!!!」






(幸か不幸か、)




次の日から、松本は元通り。



( 多分、不幸よりだと思う)










「…十一番隊はともかく、他の隊の副隊長は、もっとしっかりしてるんだがな。少しは見習ったらどうだ?」


「何言ってんですか、隊長!隣の芝は青いって言うじゃないですか!気のせいですよ♪気・の・せ・い!」



たまには肩に力を入れてほしいと思った。



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あきゅろす。
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