14
棗が向かったのは北の森。ここは凶暴なベアがいるため、誰も近付かない場所だ。2人はベンチに座って、それから……無言のまま。
「な、何で今更構うの?」
凛は、意を決して口を開いた。気になっていたことだ。
「仕方ねーだろ。お前のランプ引いちまったんだから」
「……心読み君にかかれば、中身見なくても選べたのに…」
言えるわけがない。心読みが、選んだなんて。自分が頭の中で凛のことを考えていたと暴露するのと同じだ。
「…お前、痩せたか?」
「え?」
突然話を変えた棗に聞き返す凛。棗は腕を組んで俯いていた。
「どう見たって、ほせーだろ…///」
凛は、蜜柑と同じランプの精の衣装を着ていた。くびれがくっきりして、細いのは丸判りだ。
「べ、別に関係ないじゃん。てゆーか、私のこと嫌いなんでしょう?だったら私に"近付くな!"って、命令すればいいじゃない」
「……聞きたいことが、ある。全部答えろ」
「…何?」
「本当に、お前は自分から任務を…」
「それの何がいけないの?」
「っやりたくてやってんのか?」
「……うん、そーだよ」
凛がそう言った瞬間、視界が反転した。
「いった……っ棗?」
この状況、何?!何で棗に押し倒されてんの?!
「お前、自分で何言ってるのか分かってんのか…?」
久々に棗がこんなに近くにいる。…けど、こんなの…っ
「わ、分かって「人殺してんだぞ…」…っ」
分かってる…。あの、私の消した人達には家族がいた。…家族から、奪った。命を、一瞬で消した。だけど…っ
「お前は、それを望ん「分かってるよ!!!じ、自分のしてることくらい、よく分かってるよ…っ」
あぁもう、何で涙なんかでるの?
「分かってる…っ!!だけど、私にはこれしか方法がないの…っ」
痛い、痛い。心も、棗に押さえつけられてる腕も、全部。
「方法って…」
「棗には分からないよ!!今までどんなに頑張っても誰にも見てもらえなかった苦しさが…っ」
分かるわけ、ない。
「ちゃんと大切な人がいる棗に、私の惨めさが分かるわけない!!」
「………、」
棗には、流架っていう大切な友達がいるでしょう?けど、私にはいないの。
「友達って思ってた人は、みんな蜜柑の友達で…っ!!私はいつだって蜜柑のおまけで、陰だった!!取り残されていた私の気持ち、分からないでしょう?!みんな、みんな蜜柑が1番で…っ!!置いていかれる私の気持ち、分かんないでしょ?!どんなに頑張っても、誰も私を見てくれない気持ち、分からないでしょ?!ずっと独りだった私の気持ちなんて分からないでしょう?」
…止まらない。一度口を開いたら、今まで溜めてたものが全部溢れ出てくる…。
「妹って言われる度に、心が引き千切られるくらい痛いの!!棗には、分からないでしょう?!」
「……ごめ、」
「大丈夫、大丈夫って呪文みたいに唱えなきゃ自分を保てなくなる気持ち…っ」
「………」
「ずっとずっと、居場所がなかったの…っ!!だけど……あの人は、私の力を必要としてくれたの!!初めて私を見てくれたの!!初めて、"蜜柑の妹"じゃない私自身を見てくれたの!!初めて褒めてくれたの!!初めて、必要としてくれたの!…!初めて、自分で自分の居場所を手に入れたの…っ!!私の居場所は、あそこしかないの…っ」
「…ごめん、」
「裏工作員や白猫と呼ばれても……っ人殺しだって罵られても、そこが私の居場所なの!!!私には、そこしかないの…例え、屍で出来た場所であろうと、私には…っ!!だから…」
「お願いだから…今の私を否定しないで…っ」
私には、屍で出来た場所しかない。他に、なにもないの。
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