10 夜、また任務に行く私。最初は3日間ごとだと思ってたけど、私以外にも任務をする人がいるみたいで、5日に1回のペースで私に任務がくるってペルソナに教えられた。 「白猫…今日はペアでやってもらう」 「ペア?…誰と?」 白猫ってのは、私の呼び名。単純に白猫の仮面をつけてるから。…って、 「黒…?」 私の目の前に現れたのは、黒猫の仮面を付けた人。暗くてよく分からないけど…何か、知り合いかな? 「こいつは黒猫だ。」 「………凛?」 この声… 「なつ…め?」 「お前、特力じゃないのかよ」 特力?…あぁ、特別能力系のことか。 「表向きはね。だって、みんなは私のアリスを無効化って思ってるもん」 任務は、私がやりたいからだよ?…こんなこと言ったら、棗に嫌われちゃうかな? 「話は後だ。…行くぞ」 ペルソナの後ろを、私と棗は距離をあけて歩いた。 「任務は危力の仕事だろ?なんでこいつが…」 「お前も見ただろう。こいつは何でも消滅させられるんだ。…使わない手はないだろう?それに、アリスに寿命もなければ命にかかわる事もない。お前より優秀だ」 「…おい、凛。これはお前が望んだことなのか…?」 帰りの車の中、私はずっと俯いていた。だけど、棗の視線が痛くて… 「…そう、だよ」 それから、棗は一言も話さなかった。 学園に着くと、棗はすぐに部屋に戻って行った。肩を落とす私を見て、ペルソナは私の頭に手を置いて言った。 「…大丈夫だ。お前の居場所はちゃんとある。…何度も言うが、我々はお前の力を必要としている。そのことを忘れるな」 「……うん」 大丈夫、大丈夫。 いつしか、この言葉で自分を保っていた。 人を殺してるのに、血の匂いすらしない。叫び声も聞かない。一瞬にして消してしまう私の消滅のアリス。何も感じないのが、逆に怖い。 罪を犯しているのに、それを隠すように全てを消してることが、何より重く感じた。 次の日の朝、棗はいなかった。 いつも、私が出るのを待ってくれた棗。…もう二度と、私を待ってくれることなんてないんだね。だって、私は進んで人を殺すような残虐な人間。こんな奴と一緒にいたくないよね。棗は……任務を終えると、悲しそうな顔をする。仮面で表情は見えない。だけど、雰囲気が悲しいんだ。棗はやりたくてやってるわけじゃないんだよね。毎回、罪の意識に押し潰されそうになってるんだよね。だけど私は……そんなに綺麗な心を持っていない。自分の居場所を多くの人を犠牲にして作っている。屍でできた場所。…それでも、私は居場所が欲しいんだ。 「…大丈夫、大丈夫…」 この言葉を唱えれば、私は頑張れる。 [*前へ][次へ#] [戻る] |