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次の日の朝、朝食を食べに行こうとして部屋をでると、日向君とはち合わせた。何となく気まずくて視線を下に向けると、日向君が声をかけた。
「…はよ」
「お、おはよ…?」
何で立ち止まってんの?さっさと行けば…
「お前、食堂の場所知らねーだろ?連れてってやるよ」
あ、そーゆーことですか。…けど、私絶対日向君に嫌われたはずなのに…なんでだろ。
「あ、ありがと…?」
「お前、意外と抜けてるからな。水玉とか今井に頼らないで1人で行こうとして、道に迷うのが落ちだろ」
「な…っ!!そんなことない…と思うよ。人の流れに沿って行けば…」
けど、迷ったら恥ずかしいよね、うん。
「…とりあえず行くぞ。流架も待ってる」
「流架…?あ、乃木君のことか」
日向君は、ポケットに手を入れて前を歩く。それを私が追うように歩く。この感じ、嫌いだけど…。でも、悪くない。だって、蜜柑なら私を置いてさっさと行っちゃいけど、日向君は、私を気にして歩調を遅くしてくれているのがわかるから。だから、思い切って隣を歩いてみた。チラッと私を見たけど、日向君は、何も言わず歩く。この人、優しいな…。
「棗!!…と佐倉??」
…………。乃木君って、ほんと可愛い。うさぎさん抱いて、凄い輝いてる。可愛いうさぎさんが似合うの、乃木君くらいだよ…。
「こいつ、食堂分かんないらしい」
「(棗が自分から誘ったのかな…?)珍しいじゃん。棗が人助けだなんて」
「…こいつが道に迷って教室くんの遅かったら水玉がうるさいだろ」
「…そっか。(そーゆーことにしとくよ)」
いいな、この2人。日向君の雰囲気が、柔らかいもん。乃木君は日向君にとって大切な人なんだね。
「乃木君、ごめんね?」
「別にいいよ。佐倉って朝早いんだね。この時間に食堂行く人って少ないよ?」
「そーなんだ…。私、早起きに慣れてるからさー。それに、道に迷った時のことを考えて早めに部屋出たんだよね(笑」
「佐倉と違って…あ、えっと佐倉じゃなくて、」
あ、乃木君困ってる(笑)なにげ、日向君も笑ってるし…。
「私のこと、凛って呼んで?佐倉が2人いるとややこしいし、蜜柑の方は佐倉で呼び慣れてるでしょ?」
本当はね、ただ、私を見て欲しいだけ。蜜柑とは違うってこと、知ってほしいだけ。
「…わかった。えっと…佐倉って、猪突猛進タイプでしょ?なのに、凛は後先考えてしっかりしてるなーって思って」
「ありがと。姉があんなんだから、私がしっかりしなきゃいけないし(笑」
「姉妹っていいね」
「……うん。あ…ねぇ、ひとつ聞いていい?」
「何?」
「B組の担任って誰…?」
「え……」
ちょ、何ですかー?日向君も吃驚した顔しないで下さいよー。
「お前、知らないのか?ナルが担任だよ。昨日教室にいた根暗っぽいのが副担」
ナル?…あ
「あのナルシストっぽいナル先生が?」
そう言った瞬間、2人が噴き出した。
「お前、やっぱ抜けてる…」
「当たり前みたいに言うから…っ」
あの、一言いいですか?
「笑い堪えないでほしいなー。てゆーか堪え切れてないよ?そんな笑える事言った覚えないんだけど…」
「(無自覚?)…ごめんごめん。普通にナルシストって言うからつい…」
「一応先生だから、ちゃんと"ナル先生"って呼んでるよ?」
「お前、意外と毒舌だよな」
「これが本当の私。…あ、みんなには内緒ね?特に蜜柑」
「何で?」
「蜜柑は、私が内気な子って思ってるから」
「そ、そう…(何か変だな。実は仲良くないとか…?)」
「あ、食堂!!連れてきてくれてありがとね?」
2人にお礼を言うと、何かきょとんとした顔された。私、変なこと言った…?
「一緒に食べないの?てっきり俺は…」
あ、そーゆーこと。…迷惑じゃないかな?2人とも凄く仲良さそうだし、私は邪魔になっちゃうんじゃ…
「お前、遠慮すんなよ」
「私は謙虚と遠慮の塊なんですー」
って、言い返したところでどうにもならなそうだけど。
「ナルのこと、ナルシストって簡単に言う奴のどこが謙虚と遠慮の塊なんだか」
「…乃木君。日向君ってサラリと酷いこと言うよね?」
「棗にとっては普通だよ」
「(乃木君も侮れない…)」
「…行くぞ」
日向君は、私を見て言った。………なんか、凄く嬉しいかも。もし、この優しさは私が蜜柑の妹だからだとしても、嬉しい。
「うん!!ありがとね」
笑顔を向けると、2人は微笑んだ気がした。
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