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昔から、みんなみんな蜜柑が1番だった。

テストの点数がクラス1番だった私より、最下位だったけど、初めて50点を取った蜜柑をみんなは褒めていた。


運動会。1位を取った私より、転んだけど最後まで走りきった蜜柑をみんなは褒めていた。


蜜柑は、自分が1番だった。


夏休みの宿題も、毎日コツコツやっていた私に手伝ってと泣きついて、結局私が全部やった。蜜柑は蛍ちゃんと遊びに行っていた。

給食のとき、嫌いな食べのもは全部私のお皿に入れて、私のお皿からは好きなものを有無も言わさず全部取ってった。


私を頼りにするのは、いつだって自分が都合の悪い時。困ったら私に頼れって感じで行動していた。




初めて蜜柑が嫌いだと思ったのは、小学1年の時。

授業が終わってから、校舎内でクラスのみんなとかくれんぼをしていた。その時、私は隠れる場所が見つからなくてあたふたしていた。だけど、蜜柑が見つからない場所を教えてくれた。そこに隠れていたら、本当に見つからなかった。ちょっと蜜柑を見直したって思ったけど…。

気付いたら、取り残されていた私。

隠れていた場所から顔を出すと、誰もいなかった。放課後の誰もいない校舎。薄暗いのがすごく怖くて、泣きそうになった。ランドセルの置いてある教室に入ると、私のだけがポツンと置いてあった。それを見て、凄く哀しくなった。

家に帰ると、蜜柑は寛いでいた。私が帰ったのに気付くと、テレビから視線を離さずに…


"どこいっとたん?先に帰ったと思ってた。あんたが見つからないから諦めてみんなと先に帰ったんやで?"


…そう言って、謝りもせずに蜜柑は笑っていた。











「私は…っ私は、あいつなんかの人形じゃないんだから…っ!!」



「随分とストレスが溜まってるんだな」



「ぺ、ペルソナ?!」


わ、忘れてた…。日向君から逃げた後、私は自分の部屋に逃げ込んだんだ。食事は適当に1人で食べて、早めに仮面をつけてここに…。



「随分と早いな。そんなに任務を遂行したいのか?」


「…必要なら、なんでもする。…だって、そこが私の居場所なんでしょう?」


「……あぁ。お前の力は必要不可欠なんだ」


「ありがとう。そう言ってくれるなら、私は何だってする」


…何だって、やってみせる。

























「私って、実は悪魔なのかもね」


「…俺はそっちのほうがいいと思うがな」


「・・・そう」


行きの車の中で、任務内容について教えてもらった。ある組織から、資料を奪えって任務。へ向かう者は消してもいいって言われて、最初は怖かった。…けど、何でかな。私は全員消した。建物に入って辺りを見回して、頭の中で、誰もいない風景を浮かべた。…刹那、警報機の音も、侵入者だと叫ぶ声も、足音も全部消えた。―――人を、消した。その人の存在を簡単に消した。その時、心が痛むことはなかった。私は無意識に、痛む心も消していたんだ。資料を持ってペルソナの待つ車に入ると、よくやったと褒められた。行為は悪い事だけど、初めて褒められたことが凄く嬉しくて……その後、3回も同じことを繰り返し、学園に戻ってきたのは夜中の2時だった。



「次の任務は1週間後だ」


「…そんなに先なの?」


私は愚か者だ。人を殺して、褒められて喜んで…。自らの手で、自分を罪人にして…。



「…3日後、今日と同じ時間に此処に来い」


「分かった。…ありがとう、ペルソナ。私を必要としてくれて…」


私は、早々に立ち去るペルソナの背中に向かってそう言った。




















「大丈夫…。今の私は、ちゃんと必要とされてるから…」


そう呟いてから、私もその場を離れた。






初めて、自分の力で手に入れた場所。




どんなことをしてでも、手放さない。







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