6
昔から、みんなみんな蜜柑が1番だった。
テストの点数がクラス1番だった私より、最下位だったけど、初めて50点を取った蜜柑をみんなは褒めていた。
運動会。1位を取った私より、転んだけど最後まで走りきった蜜柑をみんなは褒めていた。
蜜柑は、自分が1番だった。
夏休みの宿題も、毎日コツコツやっていた私に手伝ってと泣きついて、結局私が全部やった。蜜柑は蛍ちゃんと遊びに行っていた。
給食のとき、嫌いな食べのもは全部私のお皿に入れて、私のお皿からは好きなものを有無も言わさず全部取ってった。
私を頼りにするのは、いつだって自分が都合の悪い時。困ったら私に頼れって感じで行動していた。
初めて蜜柑が嫌いだと思ったのは、小学1年の時。
授業が終わってから、校舎内でクラスのみんなとかくれんぼをしていた。その時、私は隠れる場所が見つからなくてあたふたしていた。だけど、蜜柑が見つからない場所を教えてくれた。そこに隠れていたら、本当に見つからなかった。ちょっと蜜柑を見直したって思ったけど…。
気付いたら、取り残されていた私。
隠れていた場所から顔を出すと、誰もいなかった。放課後の誰もいない校舎。薄暗いのがすごく怖くて、泣きそうになった。ランドセルの置いてある教室に入ると、私のだけがポツンと置いてあった。それを見て、凄く哀しくなった。
家に帰ると、蜜柑は寛いでいた。私が帰ったのに気付くと、テレビから視線を離さずに…
"どこいっとたん?先に帰ったと思ってた。あんたが見つからないから諦めてみんなと先に帰ったんやで?"
…そう言って、謝りもせずに蜜柑は笑っていた。
「私は…っ私は、あいつなんかの人形じゃないんだから…っ!!」
「随分とストレスが溜まってるんだな」
「ぺ、ペルソナ?!」
わ、忘れてた…。日向君から逃げた後、私は自分の部屋に逃げ込んだんだ。食事は適当に1人で食べて、早めに仮面をつけてここに…。
「随分と早いな。そんなに任務を遂行したいのか?」
「…必要なら、なんでもする。…だって、そこが私の居場所なんでしょう?」
「……あぁ。お前の力は必要不可欠なんだ」
「ありがとう。そう言ってくれるなら、私は何だってする」
…何だって、やってみせる。
「私って、実は悪魔なのかもね」
「…俺はそっちのほうがいいと思うがな」
「・・・そう」
行きの車の中で、任務内容について教えてもらった。ある組織から、資料を奪えって任務。へ向かう者は消してもいいって言われて、最初は怖かった。…けど、何でかな。私は全員消した。建物に入って辺りを見回して、頭の中で、誰もいない風景を浮かべた。…刹那、警報機の音も、侵入者だと叫ぶ声も、足音も全部消えた。―――人を、消した。その人の存在を簡単に消した。その時、心が痛むことはなかった。私は無意識に、痛む心も消していたんだ。資料を持ってペルソナの待つ車に入ると、よくやったと褒められた。行為は悪い事だけど、初めて褒められたことが凄く嬉しくて……その後、3回も同じことを繰り返し、学園に戻ってきたのは夜中の2時だった。
ペ
「次の任務は1週間後だ」
「…そんなに先なの?」
私は愚か者だ。人を殺して、褒められて喜んで…。自らの手で、自分を罪人にして…。
「…3日後、今日と同じ時間に此処に来い」
「分かった。…ありがとう、ペルソナ。私を必要としてくれて…」
私は、早々に立ち去るペルソナの背中に向かってそう言った。
「大丈夫…。今の私は、ちゃんと必要とされてるから…」
そう呟いてから、私もその場を離れた。
初めて、自分の力で手に入れた場所。
どんなことをしてでも、手放さない。
[*前へ][次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!