13
「凛、この書類を六番隊に届けてくれ」
「はーい。帰ってきたら、一緒にお昼食べよ?」
「……あぁ」
「んじゃ、行ってくるね」
凛も復帰して他の隊舎も修理を終え、平穏が戻りつつある瀞霊廷。冬の決戦に備えて能力を高める者もいれば、束の間の安息を満喫する者もいた。十番隊隊舎は、復帰した凛と冬獅郎の熱愛ぶりに、溜息をつくほどになった。
「そんな寂しそうな目しちゃってぇ〜♪隊長ってばかーわーいーいーっ!」
「……松本、口を動かす前に手を動かせ!!」
「ちゃんと動かしてるじゃないですかぁ〜」
「ほーう。だったら今朝から減らない書類の山は俺の見間違えか?」
「(こ、怖い…っ)今からやりますよぉ〜っ」
泣く泣く筆を持つ副官に溜息をつき、自分も書類に目を向けた。10分ほどして凛の霊圧が近付いてくるのを感じると、冬獅郎は筆を置いて立ち上がった。
「…ちゃんと片付けておかないと残業だからな」
「えぇ〜?!隊長の鬼っ!」
「何とでも言え」
チラッと項垂れる乱菊を見て、冬獅郎は部屋を出た。
「あれ?どっか行っちゃうの?」
「いや、切りがよかったから迎えに行こうとしただけだ」
「…そっか。じゃ、行こう?」
「お、おい…っ」
凛は冬獅郎の手を取って駈け出した。
「見て見て!!昨日見つけたんだぁ〜♪」
凛が連れて行った場所は食堂ではなく、瀞霊廷の端にある広場だった。周りに何もなく放置されたそこは、一面の花畑になっていた。
「…すげぇな。こんなとこがあるなんて…」
「じゃーん!!さっき、準備しといたんだぁっ!」
1本の木の根元に、準備された昼食。シートの上に、色とりどりの料理が詰められた弁当。凛が朝早く起きて作ったものだった。
「…ありがとな」
チュッと隙をついて頬にキスをすると、凛は両手で赤くなった顔を必死に隠した。そんな仕草が可愛くて、思わず笑みを零す冬獅郎に、凛は微笑んだ。
「ねぇねぇっ!」
「ん…?」
「これから毎日…一生私のお弁当、食べてくれますか…っ?!///」
不意に、凛が冬獅郎の羽織を引っ張った。俯いた凛に何かと思えば、逆プロポーズとも聞こえる台詞。
「当たり前のこと聞くな、ばーか」
「なっ………//////」
「ば、ばかやろっ///」
余裕そうな返事を聞いて、思わず顔を上げると、自分と同じように赤い顔をした冬獅郎。
「……と、とりあえず食うか」
「う、うん…」
顔を赤くした2人は、目を合わせては更に頬を染めていた。
( 幸あれ )
( 未来永劫 )
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