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治療を終えた凛は個室に移された。冬獅郎は凛に付きっきりだった。卯ノ花に頼んで病室で一晩を過ごす事が何度もあった。
…あの後、総隊長に報告をした。"以後勝手な行動は控えること"と注意を受けただけだった。一緒に人質にされていた平隊員は十三番隊、浮竹の部下だった。明後日、来るように言った男達は牢獄行き。大金を手にしても、使う前に魂魄は消滅するであろう。――――――こうして、時は過ぎてゆく。



「凛……」


あれから、1ヵ月が経った。雛森は復帰して、十番隊にくる書類は減った。松本は相変わらずサボり常習犯。たまに来る浮竹は食いきれない菓子をたくさん持ってくる。…いつも凛が食べていたのに、今は手付かずのままだ。(きっと、中にはもう食べれないものもあるだろうな)凛が復帰したとき、埃の積もった机は嫌だろうから、毎日掃除してんだぜ?凛が目を覚ました時、疲れ切った顔なんて見せたくないから、毎日ちゃんと寝てんだぜ?(卯ノ花に何度か睡眠薬を貰ったけど)…なぁ、みんな待ってんだから、


「頼むから、目…覚ましてくれよな…」


(ぴくりと手は動くのに、綺麗な瞳が見えないのは何故?)




「たーいちょ!!」


「…松本か」


「ちょっと休憩しに♪凛は…」


俺は静かに首を振った。すると、松本は僅かに俯いた。…何度、こんな会話をしただろう。



「そうですか…。あ、そーいえば…っ」


松本は、懐から封筒を取り出した。差し出されたから、咄嗟に受け取ったが…これは、何だ?



「今日は満月ですから、みんなで宴です!!ぜっっっっったいに来て下さいね!!」

「あ、おい…っ!!」


松本は、チラッと凛を見てからすぐに病室を出て行った。……何なんだ?宴?行くわけ…


(一緒に、月でも見に行かない?)


不意に、凛の声がした。……昔、よく夜に2人で月を見ていた。。ぼーっと月を見ているだけで、2人の世界にいるように思えて…


「行く、か……」


封を破って中を見れば、今日の勤務が終わり次第、……(何故か)十番隊の屋根の上…?一体何人集まるんだよ。(屋根、潰れるんじゃねーの?)俺は、乾いた笑いを零して立ち上がった。



「…そろそろ隊舎に戻らねーとな。本棚の上とかに書類隠されちゃたまんねーし。(いつも凛が見つけてくれたよな)…じゃぁ、また後で来るから」


返事はないけど、早く凛が目を覚ましてくれることを願って、病室を後にした。




(聞こえる…ちゃんと、聞こえてるよ、冬獅郎)

(……もうすぐ、)


ぴくりとまた、凛の指先が動いた。




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