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すまない…。だけど、俺は納得できない。凛のいなくなった部屋には、できたての料理。まだ温かかったから、拉致されてから数時間。それなら、追いつけるはず。だったら、俺のできることは1つじゃねぇか。
微かに残る凛の霊圧を追った。辿り着いた場所は………東流魂街80地区だった。ここは、東で一番治安が悪い場所。こんなところに、藍染達の本拠地への道がるのか…?
「待ってろ、凛…」
(絶対に、連れ戻す)
(そして、俺の隣に…)
銀髪の冬獅郎は異様…つまり、浮いていた。80地区の屋根の上をトン、トンと飛び移って凛の霊圧を追う冬獅郎。その表情はいつになく必死で、ただ凛を取り戻すことだけを考えていた。
深い深い森の中に入っていった冬獅郎。道といえる道はなく、前に進むのも困難だった。
「……くそ…っ」
木の枝のせいで、顔も死覇装もボロボロ。でも、休んでいる暇はない。早く追いつきたい…その一心で、歩みを速めた。
「あれれぇ〜?もう来ちゃったのかぁー…」
草むらを抜けると、広場に出た。そこには………15人の柄の悪そうな男と…傷だらけの凛がいた。
「――――っ!!!」
スッと目を細めて男達に近付く冬獅郎。背中にある氷輪丸に手をかけた。
「おっと…それ以上近付いたらこいつ、死ぬぜ?」
1人の男が、凛の首に刀をあてた。
「それに…見ろよ、」
体格の大きい男が、1歩横にずれた。
「な…っ!!」
そこにいたのは、女隊員が1人。他隊の平隊員だった。外傷は見られないが、意識は無いようだ。
「霊圧が上がった瞬間、こいつ等ポックリ道連れだ。いや〜悲しいねぇ。彼女を守るために他の隊の隊士を犠牲にしちゃうなんてぇ〜」
刹那、男達の下品な笑い声が響く。
「……お前等の目的は何だ。藍染達との繋がりは、」
「あ?俺等は金で雇われたんだよ。たけーよな。人質使って脅して、やってくる死神を殺せだなんてよ。贅沢して過ごせるくらい金貰ったんだよ」
「(こいつらは捨て駒ってわけか…)…俺の話には乗らねえか」
「…あ?」
「俺なら人生2回やり直しても贅沢できるくらい払う。命の保障もする」
冬獅郎がそう言い切ると、男達は動揺した声を出す。
「そ、そんな上手い話あるか…っ」
「十番隊隊長日番谷冬獅郎。…不可能なわけないだろ」
「死神なんて信用できるかっ!」
「だったら信用しなければいい」
「・・・なんだと?」
「人質がいるからお前等は息を出来るんだ。…――――分かるか?」
冬獅郎の低い声に、男達は身震いした。
(…あれ、声が聞こえる)
(真っ暗な世界に、光が見えた)
(…誰?)
(痛い痛い痛い痛い)
(体が悲鳴を上げてる)
(―――助けて、 )
意識を失っていた凛が、ぴくりと動いた。
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