5 「最近、冬獅郎の笑顔…見てないんですよね〜…」 「え、私は一度も見たことないような…」 「そ、そうじゃなくて……ほら、眉間の皺の量が全然減らないような…」 「(きっと、隊長の笑顔を見たことがある人なんてあんたくらいよ…)」 「やっぱり、私は隊長を幸せにはできないんでしょうかね…」 「そんなことないわっ!今の隊長は……そのうち凛にベタベタになって、逆に凛が嫌がるくらいになっちゃうんだから」 私は、笑うことしかできなかった。 (嫌になるなんて、ありえませんよ) 「てゆーか、隊長はどこ行ったの?!昨日の今日で…まったく懲りてないんだから…」 「仕方ないじゃないですか」 そう…昨日、私が勇気を出して言った日。乱菊さんは、冬獅郎に何か言ってくれたらしい。だけど、今日の冬獅郎は相変わらず。休憩に行ってくると言って、四番隊に行ってしまった。…休憩が四番隊?しかも雛森副隊長のところ?……、 ??? 「な、なに…?この足音…」 「ま、松本副隊長、桜井三席!!雛森副隊長が目を覚ましました!」 そう報告しに来たのは、四番隊の友人、花太郎だった。 「……乱菊さん、私、仕事に戻りますね」 「え、ちょ、凛?!」 乱菊さんの焦って私を呼びとめる声さえ、煩わしかった。 ”心配しすぎだよ、シロちゃんったらぁ〜” ”心配するに決まってんだろ?…よかった、目が覚めて” ”ちょ、髪の毛ぐしゃぐしゃになっちゃうじゃんっ” ”…黙ってろ” 久々に見た冬獅郎の笑みは、私に向けられていなかった。執務室を飛び出すようにして四番隊に向かった私達。ドアを開けて1番に見たのは…起き上った雛森副隊長と、笑顔の冬獅郎だった。 …やっぱり、彼の中での私の順位は2番だ。1番は雛森副隊長だ。……寂しい、ねぇ、寂しいよ… 「わ、私が怪我してれば…」 「そんなこと言わないでくださいっ!!」 「…はな、た、ろう…っ」 私を追いかけてくれたのは、花太郎だけだった。 「え、桜井三席?!」 「…友達、でしょ?」 「……凛ちゃん…」 花太郎の目の前で、私は泣き崩れた。 心配してくれた友達がいた。 心配してくれた、死神の友達がいた。 だから、まだ言っちゃだめ。 ”死神なんて、大嫌い”だなんて…。 (きっと、冬獅郎は私霊圧に気付いてた) (なのに、ここにいない) (私は所詮、そんなもの) (価値のない、恋人の肩書を持った、ただの部下) [*前へ][次へ#] [戻る] |