3 「乱菊さん、私の独り言…聞いて下さい」 「……いいわよ」 以前より少し活気のない食堂。個室のようになっている角の席で、私と乱菊さんは向かい合って座った。…何故か、あの話をしたくて仕方なかった。(それはきっと、心が悲鳴を上げていたから) 「私、死神が大嫌いでした」 あれは、私が尸魂界に来たときのこと…。 「私を魂葬した死神が…大の女好きで。霊力のあった私に、食糧をやるから俺の女になれって…」 「(なんて最低な男なの?)」 「あいつの人形のような扱いに、もう死んだはずなのに死にたいって思ってました。死神なんて大嫌い。死神のいない所にいきたい…そう思ってました」 「だけど、ある日…偵察にきた他の死神が、私を助けてくれたんです。真央霊術院に私を紹介してくれて……死神でも、こんなに優しい人がいるんだなって思いました」 「(もしかして、それが隊長…?)」 「けど、その人も考えてることはやっぱり一緒で。十番隊の平隊員になった私を見つけて、好き勝手私で遊びました」 「(な…っなんて、)」 「やっぱりこうなる運命なんだなって思った時、現世での虚退治に行くように言われました。私と席官3人、乱菊さん…。何で私が現世で虚退治なんだって思いながら瀞霊廷に戻ったら…男は、十一番隊に移動していました」 「(え…?)」 「そして、すぐに殉職しました。その報告は、冬獅郎から聞きました。何で隊長がって言ったら…」 「"俺も嫌な隊長だな。十一番隊に向いてないのに無理に移動させて…。まぁ、お前に被害がなくなったと思えば、嫌な隊長でもいいかって思っちまった"…って言ったんです」 「隊長は、いつからか知っていたんです。無理矢理やられる私を。誰も気付かなかったことが…平隊員の私に気付いてくれた隊長が…凄く、凄く…っ」 「どんどん好きになって、少しでも近付けるよう努力して…三席まできました」 「(健気ね…っ)」 「玉砕覚悟で告白したら、上手くいって。…これ以上の幸せはないって思ってました」 「漸く冬獅郎の瞳に私が映ってくれたって思ってた………けど、」 「映っているのは、私だけじゃなかったんです」 「私は、欲張りなんですかね…?たまには、家族よりも優先して欲しいって思うのは…それを感じ取ってほしいって思うのは、やっぱり欲張りなんでねすかね…?気付いてくれなくて傷付くのって、我儘なんですかね…っ」 いつも、私からだった。 告白したのも。 一緒に食事しようと言ったのも。 お泊りしたいと言ったのも。 全部、私からだった。 "好き"って言ってら、"俺も"と言う冬獅郎に寂しさを覚えた。 だから、今回は……今回だけは、今回だけでいいから、冬獅郎に気付いてほしいの。冬獅郎に言われたの。私を必要とする言葉を。 「…ごめんなさい、乱菊さん。お食事中にこん「私は何も知らないわよ?」…え、」 乱菊さんは、ニコッと笑って言った。 「だって、あんたの独り言でしょう?私なんか、いつだって独り言いってるわ。お煎餅食べた〜いとか、お酒ぇ〜とか。ま、独り言で気にするほど、私は神経質じゃないのよ?分かったらとっとと食べなさいっ!そして太ってしまえ!」 「……太ってしまえは余計ですよ、乱菊さ〜んっ」 そう言って口に入れたものは、いつもより塩加減が出来ていなくて…しょっぱかった。 (涙の味) (…嬉し涙の味) (乱菊さん、本当にありがとうございます) [*前へ][次へ#] [戻る] |