1+1=?
君愛 番外編
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「そういえばさ、俺聞いちゃったんだけどさー?」
「何すか?」
練習が終わり、帰路に就く男子テニス部員。リョーマは家に帰ってから南次郎に相手をしてもらおうと思案していた。その時、菊丸がリョーマの肩を叩いて話し出したのだ。
「この前、1+1が1になるダブルスって言ってたよねー?」
「!まぁ、言ったけど………先輩、耳良すぎだから…」
それは、先日徳川が特別に来た日の事。徳川の話を聞いてるうちに、リョーマと凛の会話を菊丸は聞いていたのだ。
リョーマは片手を額に乗せて呆れていた。で、どーなの?!と問いただす菊丸に、リョーマは大きくため息をついた。
「俺と大石はさ、そうじゃないんだよねー。なんてゆーかー、こう…」
「はぁ…?」
「悔しいけど、おチビ達強かったし…その、コツってゆーかー…」
菊丸は自分が何を言いたいのか分からず、言葉を濁していた。そんな菊丸が面白くて。リョーマは笑った。それはもう、盛大に。
「わーらーうーにゃー!」
「…先輩達には先輩達らしいやり方でやればいいんじゃないっすか?」
「ほえ?」
「俺達は、2人で1人になるダブルスをやってきました。互いが互いの一部になるように…だけど、先輩達にそれは似合わないと思います。先輩達は、2人で2人以上の力を発揮する。1+1が3にも4にもなる。それでいいんじゃないっすか?」
ひとしきり笑った後。リョーマは論うように言った。その時のリョーマの表情は、今はここにいない彼女がまるで隣にでもいるかのような、優しさが浮かんでいたのを、リョーマ自身気付いていなかった。
「(やーっぱ雰囲気変わったにゃ)…そっか…うん、そーだなっ!あんがとな、おチビ!」
じゃ、また明日〜!と言って菊丸は前を歩く大石の元へ駆けて行った。
寂しくない、なんて言ったら嘘になる。
だけど、いつか必ず迎えに行くから。
必ず会えるんだから。
その時のために、俺は。
強く、なりたい。
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1+1が1になるダブルスと言った彼女を思い出した菊丸が、リョーマにその意味を尋ねる話。なんてことはない、ほんの2、3分くらいの些細な出来事。
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