リョーマの休日
アニメ・リョーマの休日の模造!
ヒロイン登場遅め
リョーマヒロイン大好き!
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休日の昼。いつもは壁打ちをしているリョーマだったが、今日はどこか出かける様子。ただガットを張り替えに行くだけなのに、南次郎は息子をからかいたいがためにデートだと決めつけた。一緒に行くのが竜崎スミレの孫、桜乃だと知ったからだ。リョーマはそんな好奇心で溢れる父親に気付かず、さっさと家を出ていくのであった。
「…ん、待てよ?あいつデートの仕方知ってんのか?こりゃーみものだぁ!!」
待ち合わせ時間の14時。リョーマはぼーっと桜乃を待っていた。頭の中ではこの後の予定を組み立て中。リョーマにも用事があるのだ。それを知らない竜崎スミレに、強引に桜乃のガットの張り替えに付き添わされるはめになったリョーマ。待ち合わせ時間を過ぎても姿を見せない桜乃に若干苛立ちながら、気分を落ち着かせようとジュースを買いに行った。
「張辰さんとここっち」
「っ?!ご、ごめんなさい!いっぱい待ちましたよね…」
「……」
14時30分。桜乃はがっくりと肩を落としていた。リョーマの姿がないのだ。さすがに30分も遅刻したら帰ってるだろう。せっかく2人きりだったのに…と涙ぐむ桜乃は、不意に後ろから声を掛けられた。それは長い間待たせてしまったリョーマ。謝ってもさっさと歩きだしてしまうから、相当怒っているのだと思って桜乃はまた肩を落とした。
(どうしよう…怒ってるよねぇ、30分も遅刻したんだから…どうしよう…)
リョーマはジュースを飲みながら前を歩く。隣に歩いていいのかも分からず、桜乃は微妙な距離を開けてリョーマの後ろを歩いていた。
そんな姿に、呆れている南次郎がいるとも知らずに。
(青いぜ、リョーマ。ちょっとくらいの遅刻も許せねえで男になれるか!)
リョーマが落ち込む桜乃に気にせず歩いてる頃、とあるハンバーガーショップに見慣れた人達。堀尾・カツオ・カチローの1年トリオと桃城だった。1年トリオは桃城にシューズ選びを学んでいたのだ。その帰り、桃城が3人に昼食を奢っていた。先輩として当然だと言っていると、視界にリョーマが映る。ガラス越しに見えたリョーマ。その後ろには桜乃の姿。
「あ、越前だ」
「ほんとだ、リョーマ君…竜崎さんと一緒だよ。デート、かな」
「デート、だよね」
「まーじかよ!あんにゃろう、羨ましい〜!」
トリオがそう言うと、桃城が立ち上がった。
「へぇ〜。やっぱあの2人ってそーゆー仲だったんかぁ。青春だねぇ〜…面白そうだ!ついて行こうぜ!」
「え…」
「桃ちゃん先輩…」
「「「暇ですね…」」」
このときトリオは見事に声をそろえていたとか。
「どこ行くんだろう、映画かな?」
「にっひひひひひひ!越前の奴、何も知らねえで」
こっそりと2人の後を追っている桃城達。後をつけられてるとは知らないリョーマに、桃城は面白くてニヤついていた。…と、不審な男が目に着いた。その男はお坊さんの格好をして、コソコソとしていた。見るからに怪しい。しかも、以前その格好をした人物を桃城は見ていた。
「あいつ、まさか…」
「この辺、初めてきたけど…スポーツ店いっぱいあるんだ」
「………」
思い切って話しかけた桜乃。リョーマは何か考え込んでいるのか、何も反応を示さずに目的地へ足を進めた。そんなリョーマにめげずに話しかける桜乃。だが、やはりリョーマは無言で先を進む。桜乃は諦めて初めて歩く道をキョロキョロ見渡した。そうしてるうちに、いつの間にかリョーマと距離があいてしまった。リョーマは少し先でこっち、と言って桜乃を待っていた。
「あ、待って!」
角を曲がるリョーマに置いて行かれまいと走る桜乃。後をつけていた南次郎は、会話の少ないリョーマに呆れてため息をついた。
「ちょっとおっさん!」
「んだ?」
「前に会ったよな。…あんた、越前の事付けてないか?」
「ワタシ日本語ワカリマセーン!……………あ!」
「「「「ん?…っあ、いない!」」」」
同じく2人の後をつけていた桃城達。不審な男…南次郎に声を掛けた。バレては面倒だ。だから南次郎は外国人のフリをしたが、誤魔化せるはずがない。あ!と言って空を指差して4人の視線を自分から外させた。その隙に逃げた南次郎。
「あやしー…」
「分かった…あいつ、彼女のストーカーに違いない」
「「「えっ?」」」
「なんて野郎だ…こーなりゃみんなで越前のデートを守るぞ!いいな!」
「「「は、はいっ!!」」」
「着いた」
「……あ、あの、ここなの?」
「うん、何で?」
「えっと、もうちょっと違うの想像してたから…」
「どんな?」
「どんなって言われても…ガットの張り替えって初めてだから、もっと綺麗なお店かと…」
「……」
着いた場所は、大通りとは違った古い店。リョーマは自分で質問したくせに、桜乃の話は聞き流して店に入った。
「こんちわー」
「いらっしゃい」
リョーマが呼びかけて出てきたのは、強面のおじさん。が、リョーマをみた瞬間一気に破顔した。リョーマと数回言葉を交わすおじさんは張辰。因みに愛称である。桜乃ともあいさつをすると、ガット張り替えを始める張辰。少し時間がかかるから散歩にでもと言うと、リョーマはすぐに店を出ていった。
「リョーマ君のラケットも張り替えるんですかい?」
「しなくていい」
「え?じゃぁなんで持ってきたの?」
「……行くよ」
「リョーマ君、今日はありがとう」
「…」
「あの張辰さんって人面白いね!」
「そう」
「…(はぅ〜…会話が続かないよぉ…)」
「しっかし、デートって感じしないなぁ。なんか越前がどんどん先行ってるし」
「いやいや、越前ならあんなもんだろ。…しかしあいつ、デートのなんたるかを分かっておらん!俺が彼女を大事にしろって言ってきてやる!」
「駄目ですよ、桃ちゃん先輩っ!」
「そっとしときましょうよー!」
「けどよぉ、あれじゃ彼女が可哀相だろ!」
堀尾の言うとおり、どんどん先へ行くリョーマ。そんなリョーマに後を付けている桃城は苛立ちを隠せない。頑張ってトリオで押さえるが…そろそろ我慢の限界、というところか。まぁ、デートではないのだから、リョーマに何を言っても意味は無いが。
(…よし、こうなったら朋ちゃんを見習って積極的にいこう!)
「えっと、リョーマ君って音楽とか何聴くの?」
このままじゃ嫌だと思い、桜乃は思い切ってリョーマの前に立った。
「音楽って…そんなの聞いてどうすんの?」
「えっ?どうするって、ただ何となく…」
「越前、盛り下がってるじゃねえか!」
「「頑張れ、リョーマ君!」」
「ったく、あの馬鹿息子!何やってんだよ、早く何か言え!」
道の真ん中で立ち止った2人を左右の草陰から応援する彼ら。一方に南次郎、もう一方に桃城と1年トリオ。傍から見たら異様な光景だ。気付かないリョーマと桜乃がある意味凄い。
「あの…なんか、今日さ……よく喋るね。何で?」
(えぇ〜?!)
(あちゃーっ)
「何でって…っ」
沈黙が続く中、リョーマが話しかけた。それに桜乃は喜ぶが、思いがけないセリフに桜乃は目に涙を溜めてその場から逃げ出すように駈け出した。
「…ん?」
「(もう我慢できねえっ)越前〜!!!見てたぞ、ずーっと見てたぞ!」
「何でこんな所にいるんスか?」
痺れを切らした桃城が草陰から飛び出した。そんな桃城に平然と答えるリョーマに、桃城は怒鳴りつけた。
「そんなことはどーでもいい!何やってんだ、お前は!」
「何って?」
「いいから、早く彼女を追いかけて謝ってこい!」
「…別に何も言ってないスけど」
「いいから謝ってこい!女の子を泣かすような奴はお天道様が許しても、この俺が許さねえ!」
「え?」
「先輩命令だ、急げぇ!!」
桃城はリョーマの背を押しだした。リョーマは仕方なく駈け出し、桜乃の後を追った。
(よし、それでこそ青春!)
「おう、少年。熱いじゃねえか。気にいったぜ」
満足げにリョーマの後ろ姿を見る桃城。そんな桃城に、サングラスを掛けた南次郎が肩を叩いた。
「おっさん、あんた何者よぉ?」
「おめーと同類だ」
「はぁ?」
(はぁ…私って馬鹿だなぁ、ひとりで怒っちゃって)
(いつもこんなだから、リョーマ君も…)
あの場から逃げ出した桜乃は足を止めた。今更ながら、自分のしたことに後悔したのだ。
「…え?」
「飲む?」
落ち込んで俯いていると、視界にジュースが。リョーマが桜乃に差し出したのだった。
「うん、ありがとう!」
ジュースを受け取った桜乃。喜ぶ桜乃に、リョーマは安堵のため息をついた。
「ねぇ、今度は俺の用事付き合って。すぐ終わるから」
店に戻ってラケットを受け取ると、リョーマは桜乃にそう言って返事を聞かないまま歩きだした。
(え?用事ってなんだろ…)
ごく普通に話すリョーマに、影からこっそり見ていた南次郎と桃城、1年トリオ。さっきので合流した5人は、2人の後ろ姿をみて楽しんでいた。
「いよいよクライマックスの…チュゥ〜?!」
(ど、どうしょう!リョーマ君とテニス?!)
「ビビんなくていいよ。フォーム見るだけ」
(リョーマ君、このためにわざわざラケット持ってきてくれたんだ…!)
「リョーマ君に教えてもらってからいっぱい練習したの。そしたらこの前、先輩にフォーム褒められたんだ!」
リョーマが向かった先はテニスコート。リョーマはおどおどする桜乃にリラックスしてもらうよう声をかけ、下から軽くサーブを打った。
「え……」
この前先輩のフォームを褒められたと言う桜乃。それを聞いてリョーマは軽くサーブを打…ボールを投げたのだが、桜乃は空振り。
「それが褒められたフォーム?」
「ま、まさか!そうじゃなくて…もう1回お願いします!」
リョーマと対峙する桜乃。嬉しくて、今ならな言えると思って桜乃は思い切って言った。
「リョーマ君、今日はおばあちゃんの代わりに来てくれてありがとう!」
「ん」
「え、おばあちゃんの代わり?」
「ってことは、デートじゃなかったってこと?」
「なーんだ。やっぱりな。越前がデートだなんておかしいと思った!」
それを聞いていたトリオ。堀尾は心底安心していた。
「「ちっ!なんでぃ…つまんねー」」
「馬鹿馬鹿しい。帰る。…うっ」
帰ろうとした南次郎が、不意にお腹を抱えて蹲った。桃城は大丈夫かと声を掛けたが…南次郎の腹が減ったと言う台詞に大きくため息をついて思った。何なんだ、このおっさん…と。奢ると言った桃城にすぐに立ち直った南次郎に、桃城はまたため息をついた。
ついでに自分も腹ごしらえするか、とその場を後にしようと思った桃城。…が、聞き捨てならない言葉をリョーマの口から聞いたら、ピタリと足を止めた。
「い、今…なんて、」
「じゃ、あと1球ね」
「えぇ?」
「俺、人と会う約束してるんだ」
(嘘ぉ〜!!)
たったの2球で終わり?!と驚く桜乃に、リョーマはすぐにサーブを打った。桜乃はラケットにボールを当てることはできたが、ネットをボールが越えることはなかった。もう1球…と言おうとしたが、リョーマはすでに自分に背を向けていた。
「ラケットにボール当てられたし、ちょっとは成長したんじゃん?」
「リョ、リョーマ君?!」
桜乃は納得いかず、リョーマの後を追うようにコートを出ていった。もちろん、会話を聞いていた南次郎や桃城達はその後を追う。
「今度こそデートか?」
「うっしゃ!今度こそクライマックスのチュゥ〜かぁ?!」
((このおっさん……))
「リョーマ君、あの…途中まで一緒行っていい?」
「別にいいけど、あんたん家こっちなの?」
「ぅ…そ、そーゆわけじゃ…(ここでくじけちゃ駄目だっ!)」
またしても先を進むリョーマ。隣を歩こうそするが、さっきよりリョーマは早歩きだ。少し急いでるようにも見える。
「あの、リョー「凛!!」…ぇえ!?」
(((な、なんだぁ?!!!)))
リョーマは公園のベンチに1人で座っている人に駆け寄った。しかも、名前を呼び捨てで。桜乃はもちろん、後を付けていた南次郎や桃城達もピタリと足を止めた。
「ごめん、遅くなって。ちょっとした野暮用で」
(((野暮用?!)))
「音楽聞いてたし、そんな待ってないよ」
「へぇ…誰の?」
「洋楽!リョーマもこのアーティスト好きでしょ?」
「……あぁ、この人か。インディー…あぁ、日本じゃインディースって言うんだっけ?その時のCDなら家にあるよ」
「嘘?!聞きたい!」
「いいよ。今度持ってくるね」
「ありがとー!」
リョーマは彼女の隣に座ると、ごく自然に彼女にイヤホンを片方取った。曲を聴くと、リョーマはすぐにアーティストを言い当てCDを貸すと言った。普段より口数が多いきがするし、リョーマの表情は綻んでいる。しかも、喜ぶ彼女の頭に手を置いたのだ。こんなリョーマはを初めて見る南次郎達は、口をあんぐりあけて見ていた。
「いーやーだっ!子供扱いしないでよ、リョーマ」
「はいはい………どっか行く?俺的にはこのままのんびりでもいーけど」
「…行く場所、ひとつしかないでしょ?」
そう言って彼女は足元に立てかけていたラケットを目の前にチラつかせた。
「はいはい、ストリートテニス場ね」
「…あ、リョーマ」
立ち上がったリョーマを彼女は引き止めた。さり気なくリョーマの服の裾を掴む彼女に、遠くから見ていた南次郎達は唖然。その姿を見て南次郎達の心の声が一致していた。
(((か、可愛い…)))
(あんな子、うちの学校にいたっけ…?)
「遅くなった罰。ここでキスして」
((((な…っ!!))))
「…しょうがないなぁ」
「わーい!」
「遅れてごめんね」
リョーマは座って目を瞑る彼女の頬にキスをした。
「む……なんで口じゃないのぉ?」
「………あんたさ、その顔で見ないでよ」
「…………あ、」
リョーマは片手で顔を覆って呟いた。彼女は首を傾げてリョーマを見上げる。すると何かに気付いて、次の瞬間にはクスクスと笑っていた。
「笑わないでよ…ったく、」
「だって、可愛い!リョーマの顔あか…っ」
笑いながら彼女が言うと、リョーマは帽子とラケットをベンチに置いて彼女に跨った。リョーマが急接近したことに驚いた彼女は途中で言葉を止めた。顎はリョーマの手で上向きにさせられ、嫌でもリョーマの顔が目の前にある。恥ずかしさのあまり、今度は彼女が顔を赤くする番。
「ちょ、近「黙って」…ぅ、ん…」
リョーマは彼女の唇に自分のを押し当てた。片手は彼女の顎を抑え、もう片手は抵抗する彼女の両手を塞いでいる。彼女が息をしようと口を開けた瞬間、自分の舌をねじ込んで貪るようなキスをするリョーマ。周りなんて、見えていなかった。
(リョ、リョーマ君…?!)
(越前…っ///)
(それでこそ男だ!)
リョーマが彼女にキスをする姿を見てショックを受ける桜乃と、顔を赤くして見ている桃城と1年トリオに、ガッツポーズをして自分の息子を褒める南次郎。そんな彼らにリョーマはいつの間にか気付いていた。が、止めたくもない。というわけで、リョーマは1人この状況を楽しんでいたり。
「…外野多いから、凛の家にでも行こっか」
「え…がい、や…?」
肩を揺らして息をする彼女に、リョーマは自分の斜め後ろを見るように耳元で囁いた。彼女が視線を向けた先には、顔を赤くして口をパクパクさせてる4人とニタニタしてる怪しいお坊さん。少し離れた場所では、自分達を凝視する女の子。
「っリョーマ、気付いてたの?!」
「あんなに視線突き刺さってたら気付きたくなくても気付くでしょ。…まぁ、凛はキスに夢中で気付いてなかったみたいだけど?」
「な…っ///リョーマの馬鹿、早くどいてっ」
「どいてもいいけど、俺が顔離したら凛の赤い顔がみんなに丸見えだよ?」
「ぅ…そ、それはイヤ!もう、リョーマったら…」
ずるい。そう彼女は呟いて、リョーマの背に自分の腕を回した。
「どーした?」
「…あの女の子、リョーマの何?泣きそうな表情で見てたけど…まさか、ずっとあの子と一緒だったの?」
「まぁ……けど、ただの案内だけだったし。ガット張り替えに行ってたんだ」
「そっか……試しに打ってあげたの?」
「うん、2球だけ。1球しかボールに当たってなかったけど」
シレっと言うリョーマに、彼女はふわりと笑った。リョーマらしい。そう言ってぎゅっとリョーマの服を握りしめた。それは一種の合図でもある。キスして、と。
「ほんと、あんた可愛過ぎだから…」
キスをせがむ彼女に、リョーマは参ったという表情をした。
「へへっ……リョーマ、好きだよ」
「俺も……すき、凛…」
今度こそ2人の世界に入るのを見て、見物人達はその場を後にした。
(越前の奴…っ)
(羨ましい!)
((リョーマ君、カッコいいなぁ…))
(今日からお前は青年だっ!)
(うぅ…リョーマ君に彼女ぉ…っ)
家に帰ったら南次郎、次の日には桃城からリョーマが質問攻めされたのは、言うまでもない。
リョーマの休日
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キスシーンありのリクエストをしてくださった方が多かったので、今回UPしました。
この小説を書いて分かった事が1つあります。……キスシーンは難しい!
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