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Oath of love
Mutual infatuation 続編
桜乃・朋ちゃん悪役
(レギュラー陣はリョーマとヒロイン溺愛←)
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「ほんと、最悪なんだけど!」

「うっ…」

「あんた達のせいだよ!」

「いっ…」






「そろそろ帰ろう?」

「そうだね。こんな奴等に時間かけてたら勿体無いよねー」

「じゃ、カラオケにでも行こっか!」

「いーねいーね!」


放課後の屋上。部活動に励む声がうっすらと聞える中、コンクリートに蹲る女子生徒を6人の生徒が囲んでいた。――――――虐め現場だ。蹲ってガタガタと震えているのは、桜乃と朋香。虐めているのは……リョーマに冷たい視線を向けられた人達だ。2人のせいだ、と腹いせに暴力を振るっていたのだった。彼女達は気まぐれに2人を屋上に呼び出しているのだ。暴力といっても、つい最近まで小学生だった彼女達。そこまで酷くもないが、人数が6人と言うのと、大好きなリョーマにあの視線を向けられた原因というのもあり、2人にかなりのダメージを与えていた。


「けほっ……何で、何で私達ばっかり…っ」

「そぉよ…っ!どうして…、何でこんな目に…」


いつの間にか解けていたリボンをびゅっと握りしめる朋香。桜乃はそんな朋香の手に自分の手を重ねた。


「何で私達だけがこんな思いしなきゃいけないの…………そうだよ、あの子も苦しまなきゃいけないんだよね…っ!」


「そうだよ!…あいつだけ、笑ってるだなんて許せない!」


2人は覚束ない足取りで屋上を後にした。







向かった先は、美術室。こっそり中を覗うと、教室には誰もいなかった。よかった、と思って中に入る桜乃と朋香。美術準備室に忍びこむと、ある絵を探した。美術部員は21人。だが、半数以上が幽霊部員で、彼らの絵は1枚もない。あるのは、部長・副部長と3人くらいの絵だけ。キャンバスの裏には鉛筆でうっすらと名前が書いてあって、他の物にも名前が書いてある。その中からある特定の人の絵を探しだしては、2人で顔を見合わせて不敵な笑みを浮かべた。

「これで全部…」


「絵が、だーいすきなんだよねー………そんなもの、なくなっちゃえばいいんだ…っ!」


片手には、大きなペイント用のハケ。その先は黒のインクがたっぷり染み込ませられていて。


「こんなんじゃ気が済まないけど…っ!」


「私達の苦しみなんて、こんなんじゃ分からないだろうけど…っ!」



2人は、大きくハケを振り上げては怒りをぶつける様に絵を黒く塗りつぶしていった。
















「今日の天気はテニッス日和〜♪スケッチびーより♪なーに描こうっかなぁ〜♪」

放課後、凛はスケッチブックを片手に校舎内をスキップしていた。傍から見れば変人だが、生憎凛はそんなもの気にしない。誰もいない教室。木漏れ日に当てられる机。そんな何気ない一瞬をどんどんスケッチしていく凛だった。



「…あ、やべっ」


教室の窓側の一番後ろの席。そこから窓の外を見たとき、偶然にも顧問の先生を見つけた。何故外にいるのかと疑問に思う前に、凛は思い出したのだ。昨日、部室である美術準備室の片付けを忘れていたことに。あとでどやされるのは避けたい。スラスラと動かしていた手を止めて絵を描くのを中断した凛。数分前とは一変。めんどくさいオーラを発しながら、凛は美術室に足を進めた。










「………っ、」

言葉が、でなかった。

美術室に入ると、やけにインクの匂いがした。片付けるのを忘れて放置したせいだと思って、準備室に入った。すると、そこは妙に荒らされていて。水道には、切り捨てられた絵。大きなキャンバスもボロボロで、故意的にハサミで切った後があった。驚くのはそれだけじゃない。そこにある"絵だった物"は全部、凛の描いたものだった。凛の描いた絵だけが、無残な姿に変わっていた。入部してから何ヶ月も経っている。ここにはもう、自分じゃ数えきれないくらいの絵が置いてあったのに。全部全部…


「ひ、酷い…っ!」

体はガタガタと震え出して凛はその場にへたりと座りこんだ。


「誰がこんなこと…っ」


…いや、知っている。確証はないが、こんな卑劣なことをする人がいるのだ。それも、自分の知っている人の中に。信じたくはない。もう二度とこんなことはないと思っていたから。だが、起こってしまった。また、やられた。











「ねぇ、何やってんの?」


「………え、リョーマ?!」

振り向くと、そこにはここにいないはずのリョーマ。今は部活の時間なのに…と、凛は首を傾げた。



「休憩時間になると、いっつも駆け寄ってくるのにさ。今日は凛が来てくれなかったから、美術室で絵でも描いてるのかなーって思って来たんだけど……………それ、どうしたの?」



「………見てのとーり!ぜーんぶなくなっちゃった!」

ケロリと笑ってみせる凛。リョーマは休憩中。ということは、この後すぐに部活に戻らなくちゃいけない。だとしたら、余計な心配はさせたくない。だから凛は笑った。…笑ったはず。






「素直に泣けばいいのに……ばーか、」

リョーマは不意に凛を抱きしめた。座り込んでいる凛を、優しく抱きかかえるように。頭を何度も撫でて、親が子をあやすように。



「……バカはどっちよ…っ、リョーマのばか…、な、泣かせんじゃ、ないわよ…っ」



台詞はいたって強気だ。だが声は涙声になっていて、リョーマの首に腕を回して引き寄せた。



「これからも、いっぱい絵描くから、こんなの気にしてないんだからね…っ」



「…うん」



「全然、平気なんだからね…っ」



「うん…分かってる。ちゃんと分かってるから」




よしよし、とリョーマは凛の頭をなでる。大丈夫なんだから、と何度も呟く凛に、リョーマは相槌を返して宥める。…その瞳には、優しさと、怒りを宿して。




「……凛。今回ばかりは許せない。凛がなんと言おうと、絶対に許さないから。こんなことした奴…奴等に、後悔させてやるから。凛も犯人の見当はついてるでしょ?だから……凛は、保健室にでも行ってて?」


「…え?」


「何にも心配しないで、凛には保健室で待ってて欲しいんだ。凛に、見せたくないことするから。…それくらい俺、怒ってるんだよね」



「…………すごくきっぱり言ってるけどさ、確証はどこにもないじゃない」



「前科持ちだよ?あいつ等しかいない。そうでなきゃ、誰が俺の凛を泣かせるようなことするんだ?…すぐに迎えに行くから、凛は心配しないで」



「………しょーがないなぁ。私はリョーマの言葉を信じて待ってればいいんでしょう?」



「そーゆーこと。ちゃんと1人で行けるね?」



「わ、私はそこまで子供じゃないですよーだ!」



見えないが、リョーマがニヤリと笑ったのを空気で感じた凛。あの人と2人きりにするのは嫌だ。だけど、リョーマが言うんなら…と自分を納得させて、凛は保健室へ駆けだした。



「あの2人………どこにいたっけ?」

凛を見送ってから、リョーマも行動に移った。















「竜崎、小坂田!」

リョーマは水道で手を洗っている2人に駆け寄った。突然のことにたじろぐ2人。反射的に後ろに下がっていた。
リョーマの表情をチラリと見ると何も表してはいない…ただ、無表情だったのだ。きっと、あの絵を見たのだ。自分が犯人だと疑われているのだ。そう感じた2人は、ドキリと心臓を鳴らせた。


「ねぇ、2人とも…その制服に着いてる染み、どうしたの?」


「え?これは…泥が跳ねちゃって」


「そうそう!じゃれあってたらつい…」


「それ、ペンキじゃない?美術室にあったやつ。早く洗わないと落ちなくなるよ?まぁ、そんなのどーでもいいけど」


「…っ」


「2人にお願いがあんだよね。…俺の机の中にさ、大事な物入ってんだ。取ってきてくれない?」


リョーマは有無を言わさない笑みを顔に張り付けていた。リョーマのお願いなら、行かなくてはいけない。何か嫌なことがありそうだけど、取ってきてと言われたからには行かなきゃいけない。


「わ、分かった…すぐ取ってくるね!」


「ここで待っててください、リョーマ様!」



「あ、ねぇ…人を呪わば穴二つって言葉知ってる?」


「え?うん、まぁ…」


「知ってる…よね、桜乃」



「そっか…じゃ、よろしく」


ヒラヒラと手を振るリョーマに戸惑いながらも、2人は教室へ向かった。


「凛を傷付けた罰だよ………さーて、部活もないだろうし、帰るか!」








「…リョーマ?なんでそんなに笑顔…なんですか?」

「…いや?泣き腫らした凛もかわいーなぁって思って」

「っ///…本当に、それだけ?」

「んー…まぁ、そんなもんかな?凛は気にしなくていーの!…俺だけの事、考えて?」

「う、あ、はい…///」

リョーマは凛と手を繋いで帰路についた。凛にはあの後何をしたのか言っていないし、この先言うつもりもない。…凛には、自分だけを思っていてほしい。リョーマの言ったことは本心だった。異様に顔を近付けられ、息がかかるくらい耳元に顔を寄せられてしまえば、凛は顔を赤くして返事をすることしかできなかった。


「ねぇ、凛」

「は、はい?」

「…これから先、ずっと俺の事を好きでいてくれる?返事は"はい"か"イエス"しか聞かないけど」

「…両方!」

凛は大きく頷いた。それを見て安心したリョーマは、ぎゅっと繋いだ手を握りなおす。


「…好きだよ、凛」

「私も、リョーマのこと大好き!」










Oath of love



(愛してるは、未来の為にとっておくよ)

(照れくさいから、今は言わない)











************************

「「え……?」」

桜乃と朋香が教室に入ると、中にはよく見知った人達がいた。



「ど、どうしてここに…?」

「部活はどうしたんですか?」




「これも部活の一環だよ?僕等は"越前と凛ちゃんを見守る部"…部員になるためには、男子テニス部のレギュラーにならなきゃいけない部活なんだ。競争率半端ないんだよね」


「そうそう!俺達、こーゆー時のために日々筋トレしてきたようなもんなんだにゃっ!」


「ウオォォォォ!かわゆい2人に手を出した奴にはグレイトハドゥーキュー!」


「三つ編みちゃんとツインテールちゃん、生かしちゃおけねーなぁ、おけねーよ」


「君達2人が何時何分何秒に何をしたのかは調査済みだよ。学園内には俺が仕掛けた監視カメラがあるからね。因みに俺は、監視に適しているからレギュラーを外されてもこの部に所属できているんだ。運の良い確率100%だよ。逆に2人は100%不運だな。なんてったって、俺達に目をつけられたんだから」


「フシュゥ〜…罠に掛ったな…いたぶりがいの無さそうなガキ共だ」


「…みんな、脅すのはもういいよ。…どうかな、髪の毛は女の子の命って聞いたことがあるから、俺の頭みたいに丸刈りにするってのは」


「はいはーい!俺、家庭科室からハサミ持ってきたにゃっ!」


「油断せずいこう。でなければツルツルの坊主になってしまう。…さぁ、そろそろ部活を始めるとしようか!」



「「い、いやああああああああっ!!」」



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…というわけで、2人は最後いじめられます。それも、一人称や口癖、言葉遣いで誰だか判断できる(であろう)彼らに。リョーマ達が愛を誓い合ってる間にも、いじめは続いてたりします。日々鍛えられている彼らによってこてんぱんにされた2人は、1ヵ月くらい姿を現しませんでした。……という落ちまで考えてました。ですが、そこまで書くと1Pに収まらないので省略してしまいました。スミマセン。桜乃と朋ちゃんをセットにしたのは、ただ単に2人が嫌いだからです。(え)

Mutual infatuationの続編をリクエストしてくださった千夏様に感謝します!

長々と申し訳ございませんorz
レギュラーの反応、どうでしたか?!
不満な点などあれば、お手数掛けますがメールお願いします。
希望通りでしたら幸いです。

[Oath of love=愛の誓い]


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