意 味 不 明 2 (完)
「まったく、彼女の私を置いていくなんて…私ってやっぱテニス以下の存在なんだね、リョーマ…っ!!!」
「……ドラマの見過ぎなんじゃないの?」
「あ、ばれた?昨日の連ドラでやってたんだよねー。いやー…何か感動的な台詞だよね!!」
「………あっそ」
これが、休憩中の私達の会話だ。リョーマの隣にいた桃がまた笑っていたけど、放っておいた。私にシリアスは似合わないらしい。私が迷惑なのかどうか…彼女達の考えが本当なのかどうか知りたくて、めちゃくちゃ急いでリョーマに駆け寄ったけど…。結局言い出せなかった。んで、今は部活が終わってみんな部室にいたり、1年は片付けをやってたりするんだけど…。
「えっと、人違いなんじゃないですかー?」
とうとう呼出しされちゃった★…って、可愛く言ってみたけど、そんな雰囲気じゃないみたい。だって、呼び出した人は…例の人達。あの時偶然会話を聞いちゃったのは、この前兆だったのか…っ!!・・・それどころじゃないですよね、はい。
「私達の前でキャラ被らなくてもいいんだよ?」
「そーそ。素で話そうよ」
「いやいや、これが私の素なんですけどー。てゆーか私の質問無視ですか」
「…あんたのそーゆーのムカつくんだよね」
「そーゆーの?…って、どーゆーの?」
「だからっ!!!…もうイラつく!!あんた、全部がうざいんだよ!!!」
うっわ。女って怖いですねー。あ、私も女だ。
「うざいって言われても…。てか、話ってそれだけですか?」
って、私、なんでタメに敬語で話してるんだろー。…そっか。敬語って一種の境界線なんだ。私と貴方の間には敬語という名の壁がありますよーって感じの。そーいえば、リョーマも私のこと凛先輩って呼ぶっけ。…まぁ、それはそれ。あれはあれだ。私だってたまに君付けで呼んだりするし、別もんだよね。
「っこの…っ!!!」
きゃ、きゃーっ!!!初めて両親以外に打たれた!!!
「……、用がこれだけならもういいですよね?」
痛い痛い痛い痛い。何で。
よく分からないけど、胸がぎゅーってなった。私ってもしかして…。
「どこ行ってたの?早く帰るよ」
「私、心臓病なのかも」
「……は?」
「なんか、ぎゅーって痛い」
彼女達のもとから去って、何食わぬ顔でリョーマのもとへ向かった私。疑問をぶつけたら、いつものように"は?"と返されてしまった。
「…何があったの?てゆーか、赤くない?」
「ぎゃっっ」
「……せめて、"きゃっ"にしときなよね…」
「いやいや、突然だったから仕方ないよね」
リョーマはさっき打たれた左頬に右手を当ててきた。うっわー…もの凄く恥ずかしい。
「…で、どうしたの?」
「蚊に刺されましたー」
「嘘」
「ごめんなさい」
私って、本当に年上なのかな?付き合ってから何回リョーマにごめんなさいって言ったんだろ…。年上の威厳無しですかいな。
「お前らって、ほんと仲良いよな!!」
「…桃?これのどこが仲良いのかな?」
「お前らの会話ってコントみてーだし、似合ってるぜ?」
ほんと、桃ってよくリョーマの近くにいるよねー。あ、別に変な意味じゃないし。てゆーか、変な意味ってどんな意味だって感じ。
「いや、別にお笑い芸人目指してるわけじゃないし…。やっぱ。私って変人なの?」
「今更?」
「…リョーマくん。一応彼女なんだけどー」
「一応って何。凛先輩が変なのは前からでしょ」
「うっわ。再びカルチャーショック的な」
しかもまた桃に笑われてるし…。桃って笑い上戸だったっけ?
「今みてーなのが、もう名物だよな」
「桃先輩、変なのは凛先輩だけッスから」
「ちょっとちょっとーっ!!やっぱリョーマも私が変人だと思ってんのー?」
「俺…も?」
「あ、」
口が滑った―――っ!!!
「ここ赤いのとその話、関係あるよね?」
「断定ですか」
「真面目に」
うーん。私に真面目を求めちゃいけないよ。私って典型的な不真面目だからさー。
「私ってキャラ被ってんのかなー?」
「………そんな器用なこと、凛先輩ができるわけないじゃん」
「そーだよねーっ…って、リョーマ酷くない?!」
つまり私は不器用なんですかっ!!
「本当のこと言っただけ。…それで?」
「うーんと、えーっと……私ってムカつくらしい」
「は?」
包み隠さず全部言うしかないよねー、これ。
「可愛くないくせにリョーマの彼女なのが気にくわないらしいよー。ブサイクで、変人で…。あ、私ってお笑い芸人目指してるらしい」
「………」
「色目使って、みんなの気を引こうとしてるんだって。私、純日本人だから目は黒いのにねー。どーやって使うんだろ?」
…え、ここ黙っちゃうとこ?!
「ちょっと、こっち来て」
リョーマは私の後を見てからそう言って、私の手を掴んで場所を変えた。
「え、リョーマ?」
何故に。私の目の前にはリョーマ。背中には壁。ついでに、リョーマは私を逃さないように顔の横に手をついて…つまり、右を向くとリョーマの左手。左を向くと、リョーマの右手とこんばんわ、だ。
「さっきの、誰に言われたの?」
「え?知らない子達だけど…?」
「もしかして呼び出されたの?」
「ビンゴ―っ!!」
「何で俺に言わなかったの?」
「(私の"ビンゴ"スルーされた…)いや、だって部室に行っちゃってたし?別に大したことじゃなかったし?」
「……あんたさ、バカじゃないの?」
「へ?それ、今言うことなの?」
―――――――――っ
突然、息ができなくなった。
いつもと違った荒々しいキス。強引で、何かをぶつけるような激しいキス。
「リョ、…っふ、は、」
「俺、心配しすぎて壊れそう…」
リョーマの顔がゆっくりと離れていく。目を開けると、初めて見るリョーマの切なそうな表情。何で、何でリョーマがそんな顔するの…?
「心配って…」
「凛先輩って、天然だから俺の知らないうちに傷付いてるんじゃないのかって…。それに、先輩って滅多に人を嫌わないじゃん。だから、ほっぺ叩いた人の事も笑って許しちゃうんじゃないかって…。痛いの我慢して、全部笑って誤魔化しちゃうんじゃないかって…。そんなんじゃ、相手煽るだけなんだよ?」
「煽る…?(何語だ…?)」
「凛先輩は可愛いよ。色目も使ってないし…まぁ、変と言っちゃ変だけど…それが先輩のいいとこなんだから。だから、先輩は何も変わんないで…」
「リョーマ?」
「…俺、凛のこと、ちゃんと好きだから…」
「…………か、」
「か?」
ごめん、リョーマ。………空気の読めない私でごめん!!!
「可愛い―――――――――――っ!!!」
「わっ」
思わずぎゅーってリョーマを抱き締めた。だって、世界で一番可愛いよ!!暗くても分かるくらい顔赤くしちゃって、"凛のこと、ちゃんと好きだから…"なんて、犯罪だよ!!しかも、普段呼び捨てなんてしないのに、こーゆー時に……っ//////
「だから、可愛くないって…」
「いーや!!宇宙一可愛いよっ!!」
「…それは、凛先輩だよ」
「うっ///今日のリョーマ、変…っ」
「先輩に感化されたんだよ」
……………前言撤回します。ふわっと笑ったリョーマは、世界一カッコいい!!!
意 味 不 明
私って矛盾しまくってるよね。
可愛いとかカッコいいとか
けど、それが私の彼氏だっ!!!
(ねぇ、お願いがあるんだけど)
(なになにー?!)
(可愛いとか、言わないでよね)
(なんでー?)
(―――――――――――、)
刹那、私の顔は真っ赤。夕日より赤くなった。
(好きな人には、カッコいいって言われたいんだよ)
リョーマ、カッコいい!!!
←前次→
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!