08※
ううぅ………っ!
もう無理っ!
出したい、出したいのにっ!
先ほどからずっと、陽炎の荒い息遣いと、壮絶な色気を放つ声が信長の耳を犯していた。
それに加え、股の間を犯す陽炎が、信長を同時に擦りあげているのだ。
感じるなと言うほうが無理だ。
再び強烈な吐精感に苛まれ、悶えた。
も、体、力入らなっ………。
縛っている結い紐をほどきたいけれど、ガクガク震える体では、腕を動かすのも困難で。
「ひ、ぃうっ……!ぁあぅっ」
腰に集まる熱が、出口を求めて渦を巻く。
陽炎に腰を固定され、揺さぶられ、その上、胸の尖りをコリコリ捏ね回すのだから、堪ったものではない。
「はっ……ぁあ、ぃい……」
ため息混じりの艶かしい声が、信長の腰を砕いていく。
互いの先走りの露が足の間まで流れ、それが狡猾油の役割を果たしているらしく、陽炎にはそれが気持ち良いようだ。
それ、それやめろ!
そんな声出すなっ!余計、腰に来るっ!
こちらは達しそうで達せない苦しさと、恥ずかしさで喘いでいるのに、陽炎は実に気持ち良さそうだ。
腰の動きが早まり、互いの下半身がぶつかり合うぱちゅん、ぱちゅんっという音が、羞恥心と吐精感を煽る。
「こっちも、弄ってやらないとな」
「ひぃっ!?……ひぃぅぅ……!や、やめっ、そこっ……触、ん、なぁ……!」
胸の尖りを捏ねていた陽炎の手が、またもや信長の中心を握り込む。
陽炎が腰を揺らせば、自然と擦りあげられる。
「ほら、気持ちいいだろ?」
気持ちいい。
確かに気持ちいいけど、出せない苦しみのほうが勝っている。
頭を左右に振って気をまぎらわせようとしても、余計に頭が朦朧とする。
「ぅあっ、ぁ…………く、苦しっ、い!」
先端を指で擦られ、軽く弾かれると、星がチカチカと飛んだ。
「ひっ!……〜〜〜っ、うぁ!」
「本当、良い声で、啼く…なぁっ」
出したい、出せない、苦しい。
働くことを放棄した思考は、それしか浮かんでこなくて。
「かげ、ろおぉ………出したい……出したいぃっ!」
みっともなく泣きながら、信長は懇願した。
兎に角、さっさと出すものを出して、この苦しさから解放されたかった。
「……あぁ、一緒にっ、吐き出そうな」
息の乱れ具合からも、陽炎も限界が近いのだろう。
腰の動きを速めた陽炎は、ようやく結い紐をほどいてくれた。
解放されれば、留められていた強烈な、痺れを伴うほどの吐精感が、腰から先端にかけて一気に噴き出した。
「〜〜〜〜〜〜…………っ!!」
あまりにも強い快感に、声すら出なかった。
「………………はっ、ぁ、ぁぁぅ、あっ」
陽炎も達したのか、ビクビクと震わせながら精を吐き出していた。
内股に陽炎の熱い滑りが滴ってくる。
体を震わせながら荒い息を整えようと、懸命に空気を求めた。
息を整えた陽炎が、ゆっくりと離れていく。
体が重くてまだうまく動けない信長は、陽炎に言いたいことが山ほどあった。
いや、確かに最後まではしていない。
してない、けどっ………!
視線を下に向けると、己の放ったもので汚れた草が、重みでしなっている。
信長は先程の行為を思い出してしまい、恥ずかしさと怒りで顔を赤く染めた。
どちらの度合いが強いかは、勿論、恥ずかしさであるのだが。
ここは外で。周りに木々が繁っているとはいえ、誰に見られるのかわからない状況で、下半身を丸出しにした男が二人。
しかも、明らかに事後。
最後までは致してないが。
「信長、ちょっと拭くぞ」
いつの間にか手拭いを濡らしてきたらしい陽炎は、丁寧に汚れた部分を拭っていく。
これはこれで、恥ずかしさ倍増だ。
「………陽炎」
「どうした?」陽炎がそう答えるよりも早く、信長は、思いきり向こう脛に蹴りを入れた。
「いっ………てぇぇぇ!」
「やめろって言ったのにっ!こんなところで、なに考えてんだ!?」
悔しさのあまり、涙まで浮かびそうだ。
陽炎の声に弱い自分。結局最後は抗えない自分。
自分で自分が情けなくて。
「だから、加護だっつっただろ!?」
「今回加護は要らないって言っただろ!!暫く城に籠るだけなんだからな!」
なるべく外出を控えて、部屋に閉じ籠っていれば良い。頃合いを見て、嘘の噂を流せば事足りるのだ。
「それでもだ。一族すら纏められてねぇんだ。何が起こるわかんねぇからな。多少でも無いよりはましだろ。お前がどのくらいの期間で見てるのか知らねぇけどな、俺は定期的にお前に加護を与えるつもりだ」
そんな情報要らん!
とは思うものの、頭の片隅の冷静な部分が、陽炎の言うことも正しいのだとわかる。
確かに一族すら掌握出来ていない。
つまりは、どこにどんな間者が潜んでいるのか、分からないと言うこと。
信長にとって、それは痛い言葉だった。
でも、死のうは一定、である。
そこで潰えるなら、それまでの運命だったということ。
陽炎の加護は有り難いと思う。
こんな自分の何が気に入ってるのか知らないが、くれると言うものは貰ってやる。
でも、陽炎の言う加護。
それは即ち、行為そのもの。
だから簡単に体を繋ぐ。
俺の気持ちとは違う。
………?
……気持ち?
なんだ、胸の奥がもやもやする。
思考に蓋をしても、気になり始めたそれを、無視できなかった。
ああ、そうか。
なぜこんなに陽炎に抗えないのか。
きっとそれは、陽炎を好いているから。
気持ちが向かう方向が違うからこそ、簡単に繋がることに抵抗するのだ。
俺は、陽炎が好きだ。
―――これは、気づきたくなかったなぁ。
信長は、必死に無表情を装いながら、陽炎に背を向けた。
「………帰る」
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