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陽炎に可愛いなんて言われて、恥ずかしいのに嬉しい自分が少しばかり恨めしい。

俺、男なのに……。
何で喜んでんだよ!?

陽炎が話すたびに、息が耳にかかるのも、本当はぞくぞくしているのだ。
恥ずかしいことこの上ないのに、背後から抱きすくめられて安心してしまっている自分も大概だ。

陽炎の体温が心地よくて、思わず摩り寄ってしまいそうになるのを必死で耐えた。
陽炎にこの気持ちを知られる訳にはいかない。
陽炎との行為が、俺にとって別の意味があるなんて知られたら、陽炎が離れていってしまうかも知れない。

加護の為だけでも良い。
それで、陽炎と繋がっていられるなら。
多少の虚しさなんて、見ない振りをすれば良いのだ。

「こっち向け、信長」

「うん?」

何でもない風を装って振り向けば、陽炎の端正な顔がゆっくりと近づいてくる。

あ、口づけ……。

陽炎の暖かい唇が、信長の唇に落とされる。
啄むような口づけはとても心地よかった。唇を舌でなぞられれば、ぞくりと背中が粟立つ。

「ん……ふぁ、ん……っ」

ごく自然に口内に侵入した舌は、信長の弱いところを狙って舐め上げてくる。

信長はぼんやりとした頭で、全部知られてるな、なんて考えていた。

ねっとりと舌を絡め合い、互いの唾液を交換する。

気持ちいい……。
ずっとこのまま口づけていたい。

呑み込みきれない唾液が信長の顎を伝う。

「ふぅ、んん……んぅっ」

息が苦しくなり、信長が喘いだところで、銀色の糸を引きながらようやく互いの唇が離れた。

「立ったまましてみるか?」

「……何を?」

ぼんやりとした頭で聞き返すと、陽炎は口角を上げた。

「何って……そりゃ、ヤることは一つだろ」

「………」

陽炎の言葉を理解した途端、火を噴いたかと思うほど信長は真っ赤に顔を染めた。

「い、いい!そんなの無理っ!」

口づけだけでも気持ち良くて朦朧とするのに、立ったまま交じわうなんて、とんでもなかった。
絶対に腰が抜けて、立っていられない!

「そーか?たまには良いかと思ったんだが……」

全く良くないっ!

陽炎は茹で蛸のようになった信長を面白そうに見下ろした。

「うひゃっ!?」

陽炎は信長の両膝裏に腕を回すと、そのまま抱き上げた。
いわゆる、姫抱きだ。

「んな、可愛い声出すなよ」

「だ、出してないっ!」

もう、自己嫌悪だ。
陽炎に突然触れられると、毎回頭が働かなくなるのか、驚いて変な声を出してしまう。
陽炎にはそれが面白いらしく、いつもからかわれてしまうのだ。

落とされることはないと思うが、恥ずかしさから、陽炎の首に手を回して、しっかりと抱きついて顔を隠す。

褥にゆっくり下ろされれば、陽炎はそのまま覆い被さり、すぐさま濃密な口づけが落とされる。

「ん、……ふ、ぅ……」

鼻から抜けるような声が出るのが、また恥ずかしさを増長させる。

上顎を舌先で刺激されて、信長はとろけそうになってしまう。陽炎にも気持ち良くなって欲しくて、同じように返せば、陽炎にぎゅうっと抱き締められる。

気持ちいい……。
陽炎も少しは気持ち良く感じてくれているのだろうか。
そうであれば、嬉しい。

陽炎と深く舌を絡めて、吸い付く。

抱き締めてくる陽炎の体温も、匂いも、信長を幸せに感じさせてくれる。例えそれに、陽炎の好意が自分に向いていなくても。

好き………陽炎。大好き。

口には出せない思いを込めて、口づけで返す。

「なんか、今日は積極的だなぁ?」

「そ、そんなこと……は、ないと、思ぅ……」

どきりと心臓が鳴った。
そんなに分かりやすかっただろうか?

少しの居たたまれなさと恥ずかしさに、信長は視線を逸らした。

って、目、逸らしたら認めてるのと同じじゃないか!?

気づいても後の祭り。
陽炎が面白そうに笑ったのが耳に届く。

「ふーん。なら、存分に楽しませてもらうか」

その言葉に信長は呆然とした。
分かってる。陽炎は別に深い意味があって言っている訳じゃない。
でも、陽炎にとって信長を抱くのは、楽しみであって、愛情じゃない。

……愛情?
俺、陽炎になにか期待してた?
陽炎にとって、自分は楽しみを与えるだけの存在。
加護をもらう見返りに、体を差し出してる。
それ以上でも、以下でもない。
……現実だ。

「……どうした?」

「……何でもない」

陽炎は眉を潜めたが、信長は首に抱きついて、その顔をすぐに隠した。
目を閉じて陽炎の体温を存分に味わう。

今はなにも考えずに、陽炎の体温を感じていたい。
せめて、この一時だけでも……。


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あきゅろす。
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