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帰りの道中、信長は宿をとった。
家臣たちは交代で宿の見張りをすることになっている。

疲れが出た信長は、湯に入るとそのまま褥に横になった。

「なんだ、疲れたのか?」

「うん……」

陽炎は傍に腰を下ろし、目を閉じて小さな声で返事をする信長の髪を、優しく鋤いてくれる。

京の荒廃振りを目の当たりにして、信長は動揺した。
物見遊山の気分ではなくなり、将軍家の権威の失墜を悲しく思った。

確かに、将軍義輝には政治手腕も器量もあるが、陽炎の言う通り、純粋な政治機関で、軍勢も領地もない。それは、他国の大名にお願いして戦をしてもらうということ。諸大名の力が強くなるのも道理と言うものだ。

それでも、義輝公は着実に力を付けてきている。
本当に強い人だと思う。
俺も、もう少し強くならないと……。

信長は陽炎の手が心地よくて、そのまま眠りについてしまった。


***********


意識が浮上して、ひどく窮屈で、身動きが取れないことに目を覚ました。
目の前には逞しい胸板があり、陽炎にしっかりと抱き込まれていることに気づいた。

ああ、いつの間にか寝てしまっていたのか。

息を吸い込むと、やはり、お日様のような匂いがする。
この匂い、好きだなぁ。

信長は陽炎を起こさないように、小さく身じろぎして、少し動けるように隙間を作った。
視線を上に向けると、陽炎の寝顔が間近にある。
寝ているときの陽炎の表情は、厳つさが消えて穏やかになる。普段も表情豊かだけど、信長はこの顔が一番好きだった。

こうして度々夜中に目が覚めると、しばらく陽炎の寝顔を眺める。
陽炎は神だから、この想いを告げることは叶わない。
守護だ、加護だと言って体を重ねる。
虚しくないとは言わないけど、それでも良い。
その時だけは、俺だけを見てくれるから。

「どうした、眠れないのか?」

目を閉じたままの陽炎が、声を発したことに驚いて、信長はビクリと体を揺らした。

「お、起こしたか?」

閉じられていた陽炎の目がゆっくりと開き、その瞳の中に信長を映した。
その他愛のない動作が、とても艶っぽくて、信長は顔に熱が集中して、鼓動が速まるのを感じた。

な、なんか……壮絶な色気を感じるんですけど!?

「そうだな、起こされたみてぇだ」

「え?」

真剣な眼差しで組み敷かれて、頭がついてこなかった。
陽炎の精悍な顔がゆっくりと近づき、唇が触れる。
半開きだった唇の隙間から、陽炎の舌が侵入してくる。

「ん………ちゅ、」

口内をねっとり舐め回され、舌を吸われれば、飲みきれない唾液が顎を伝った。
寝間着の上から胸の尖りをまさぐられる。

「………す、すんの?」

唇が離れた隙に、喘ぎながら聞けば、当然のように、

「ああ、嫌な予感がするから、念のためにな」

「………分かった」

こうして、加護だと言われる度に、胸が苦しくなる。
陽炎にとって、俺とのまぐわいは加護を与えるためだけの行為。
それ以上でも以下でもないのに、阿呆の一つ覚えみたいに、毎回期待してしまう。
その中に、少しでも良いから、好意を含んでいないか。
でも、好意の欠片も見出だせなくて。
胸が痛むのを見ない振りをして、与えられる快楽に身を委ねるしかない。

乳首を舌で転がされ、脇腹から腰を撫でらるれると、背中にぞくぞくした快感が走る。

「あっ、んん………」

みっともなく声が出そうになり、慌てて口を押さえる。
声が出てしまうのが、とても恥ずかしい。
それに今日は、城の中ではなく、不特定多数のいる宿に泊まっているわけで。

「声、押さえんなって」

陽炎はいつもそう言うけれど、信長は首を振った。

「だって、城じゃない……か、らぁ……」

「ふむ………それもそうだな。だったら少し我慢しろよ」

「う、んんっ……んっ」

話している間も陽炎の手は止まらない。
乳首を舌先で転がされながら喋られると、陽炎の温かい息が胸をくすぐる。

陽炎が優しく触れる度に、さざ波のように全身に悦びが拡がっていく。

気持ちいい……。
もっと、もっと触れてほしい。

まだ、乳首しか愛撫されていないのに、信長の中心は次の快感を待ちわびて、ゆるゆると起ち上がってしまっている。

恥ずかしいのに。
もっと触れてほしくて、自然と腰が揺れてしまう。


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