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番外編-1-
泣き疲れて眠ったのか、信長は陽炎に体を預けたまま、静かに寝息をたてていた。
随分と長い間、泣いていたように思う。
陽炎は顔に残る涙の跡を、そっと指で拭ってやった。

こうして寝顔を見ていると、実際よりも幼く見える。
強く握られた着物は、多分皺になってしまっているが、そんなことは気にしない。

頭を撫でて、額に口づける。

信長を起こさないように抱え直すと、既に敷いてあった褥に横たえた。

「……ん、」

信長は小さく身じろぎ、陽炎の温もりを探すように、手をさ迷わせた。温もりを感じなかった信長は、まるで子供のように体を丸めた。

「ほんと、寂しがり屋だな」

小さく呟くと、陽炎自身も横になった。
勿論、信長を正面から抱き締める形でだ。それに安心したように、擦り寄ってくるような仕草をした。
陽炎にとって、それがまた可愛かった。
信長は自分に好意を寄せているのだと、陽炎は確信している。口には出さないが、信長を見ていればわかる。
とても寂しがりやな反面、人と密に接することを極端に嫌がる。周りに裏切り続けられた結果だろう。

これまで、一度も愛されたことのない信長は、愛することにとても臆病だった。
実の母に疎まれて、殺されかかったのだ。
誰でも臆病になる。
そんな信長を憐れだと思う。

本当は心優しい信長、弱くて臆病で。
でも、生に執着がないように見えて、必死に生きている。

「……残酷すぎる道を歩ませてるのは、俺か」

本人は知り得ないが、信長が家督を継いだのは、陽炎が守護したから。
本来であれば、元服前の母親の襲撃で死んでいた。
そこを気まぐれに助けた。
潰えたはずの未来が、開けてしまった。
だからこそ、信長には過酷な道が待っている。

守護しているのも自分だが、過酷な道に引きずり込んだのもまた、自分だ。

「俺は、お前の優しさに付け込んでいるのかも知れねぇな」

可哀想で、憐れな信長。
だからこそ、その命が潰えるまで、俺はお前を守護しよう。


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あきゅろす。
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