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少年は荊(イバラ)に捕らわれて
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重い体を押して、一段一段階段を踏みしめながら、屋上へと続く階段を上った。

ドアを開けると、さわやかな風が吹き込んだ。


「気持ちいいなぁ」


屋上のフェンスに寄りかかり、ぼんやりと空を見上げた。ポケットに入れていた振動が、電話が来たことを知らせた。

携帯電話を取り出し、ディスプレイに目をとめると、大好きなあの人の名前が表示されていた。ごくりと唾を飲み、一呼吸置くと、通話ボタンを押した。


「ひな」


通話越しに聞きなれた、低く、それでいて甘い声に胸が疼いた。


「流星……、元気?」


「ああ、こっちはあまり変わりないな。チームの奴らひなに会いたがっているぞ。早く、ひなに会いたいってうるせ―くらいだ。まあ、俺は奴ら以上にひなに会いたいんだがな。」


「ふふ、僕も会いたいな」


「ひな……、お前は元気か?」


……疲れた。何だか、疲れちゃったよ、流星。


流星の傍に行きたい。


泣きたいけど、心配はかけられない。


でも、流星の声を聞いたら、少しは心が軽くなったから…


だから大丈夫。


僕は、もう少し頑張れるよ。


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