少年は荊(イバラ)に捕らわれて
14
重い体を押して、一段一段階段を踏みしめながら、屋上へと続く階段を上った。
ドアを開けると、さわやかな風が吹き込んだ。
「気持ちいいなぁ」
屋上のフェンスに寄りかかり、ぼんやりと空を見上げた。ポケットに入れていた振動が、電話が来たことを知らせた。
携帯電話を取り出し、ディスプレイに目をとめると、大好きなあの人の名前が表示されていた。ごくりと唾を飲み、一呼吸置くと、通話ボタンを押した。
「ひな」
通話越しに聞きなれた、低く、それでいて甘い声に胸が疼いた。
「流星……、元気?」
「ああ、こっちはあまり変わりないな。チームの奴らひなに会いたがっているぞ。早く、ひなに会いたいってうるせ―くらいだ。まあ、俺は奴ら以上にひなに会いたいんだがな。」
「ふふ、僕も会いたいな」
「ひな……、お前は元気か?」
……疲れた。何だか、疲れちゃったよ、流星。
流星の傍に行きたい。
泣きたいけど、心配はかけられない。
でも、流星の声を聞いたら、少しは心が軽くなったから…
だから大丈夫。
僕は、もう少し頑張れるよ。
[*前へ][次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!