少年は荊(イバラ)に捕らわれて 6 僕は、ふっと肩に入れていた力を抜いた。 「陽向、どこも怪我はない?」 「うん、大丈夫」 響は陽向の無事を確かめるように体のあちこちを触る。不安そうな表情だったが、怪我がないことを確認すると、ほっとした表情を見せた。 「よかった……、陽向に怪我がなくて」 「僕だって、男なんだから。少しぐらい大丈夫だよ」 「だめだよ、陽向はこんなに可愛いんだから。僕らに守られてて。ねっ」 舌を転がすように甘い声を出すと、抱きしめた。 響は、僕の腕の中にいるクロに目をとめ、 「陽向、その猫どうしたの?」 「草の茂みの所にいたんだ。飼い主がいるのかどうかも分からないし、飼おうかと思ってるんだけど…」 「へえ、かわいいね」 響がクロの頭を撫でようと手を伸ばした時、白く細長い指に赤い線が走った。小さく顔を歪めた。 「響!」 「痛いなぁ…、ふふっ、どうやら僕はその子猫に嫌われているみたいだね。猫の扱いには、慣れているんだけどな。家でも猫飼ってるし。……ねえ、陽向、僕の傷舐めてくれる?」 「えっ……」 何時にない、響の熱のこもった眼差しに、ぞくりと背筋が震える。 どう言葉を返したらいいか戸惑う僕の表情を見て、響は小さく笑った。 「ふふっ、冗談だよ」と苦笑する響に自然と入れていた肩の力を抜いた。 「さあ、生徒会室へ行こうか」 僕の手をやんわりと取り、引いて歩いていった。 [*前へ][次へ#] [戻る] |