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少年は荊(イバラ)に捕らわれて

僕は、ふっと肩に入れていた力を抜いた。


「陽向、どこも怪我はない?」


「うん、大丈夫」


響は陽向の無事を確かめるように体のあちこちを触る。不安そうな表情だったが、怪我がないことを確認すると、ほっとした表情を見せた。


「よかった……、陽向に怪我がなくて」


「僕だって、男なんだから。少しぐらい大丈夫だよ」


「だめだよ、陽向はこんなに可愛いんだから。僕らに守られてて。ねっ」

舌を転がすように甘い声を出すと、抱きしめた。
響は、僕の腕の中にいるクロに目をとめ、


「陽向、その猫どうしたの?」


「草の茂みの所にいたんだ。飼い主がいるのかどうかも分からないし、飼おうかと思ってるんだけど…」


「へえ、かわいいね」


響がクロの頭を撫でようと手を伸ばした時、白く細長い指に赤い線が走った。小さく顔を歪めた。


「響!」


「痛いなぁ…、ふふっ、どうやら僕はその子猫に嫌われているみたいだね。猫の扱いには、慣れているんだけどな。家でも猫飼ってるし。……ねえ、陽向、僕の傷舐めてくれる?」


「えっ……」


何時にない、響の熱のこもった眼差しに、ぞくりと背筋が震える。
どう言葉を返したらいいか戸惑う僕の表情を見て、響は小さく笑った。


「ふふっ、冗談だよ」と苦笑する響に自然と入れていた肩の力を抜いた。


「さあ、生徒会室へ行こうか」


僕の手をやんわりと取り、引いて歩いていった。


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あきゅろす。
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