少年は荊(イバラ)に捕らわれて
5
殴られる!!!
痛みを覚悟した僕の体に衝撃が襲うことはなく、かわりに柔らかい温もりと香りに包まれた。
この香りは……。
ゆっくりと目を開けると、驚愕に目を見開いた二人の生徒がいた。
「響様!!!」
「君達、確か久遠の親衛隊だよね……。ここで何してるのかな?」
「えっと、あの……」
予想にしない突然の人の登場で、二人のさっきまでの強気な態度は影をひそめていた。
さっきまでの余裕な表情は一転して顔面蒼白となり、不自然なほどに体がカタカタと震えていた。
「もし、陽向に何かしたら僕だけじゃなく、生徒会を敵に回すと思ってね」
見上げた響の表情は、別名王子様と呼ばれるさわやかな笑みとは程遠い、薄暗い頬笑みを浮かべ冷たい瞳で二人を睨んでいた。
響……?
響の普段とは違う冷たい表情に、思わず息を飲んだ。
二人は、上下に何度も首を振ると、その場を逃げるように立ち去った。
響は二人に目をくれることなく、僕をその目に映した。
その目には、さっきまでの冷たい光は影を潜め、いつもの穏やかな色を見せていた。
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