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少年は荊(イバラ)に捕らわれて

可愛いな…。


黒猫か…。黒猫ってある意味不吉の象徴みたいにいわれることもあるけど、どうしてその色だけで、外見だけでそんなふうに決められなきゃいけないのかな。

誰しも、望んだ姿で生まれてくるわけじゃないのに……。


―おまえなんか生まれてこなければよかったのに!!!


―どうしてこんなにも似てないのかな


―一族の恥だね。厄介者。


ふいに封印していた暗く淀んだ記憶の断片に捕らわれ、息苦しさを覚え始める。
不規則な呼吸を繰り返していると、徐々に目の前の景色がぼんやりと霞んでいく。


苦しい……。


真っ暗な闇の中、助けを求め思い描くのは大好きなあの人の顔。


リュウセイ、タスケテ!!!


心の中で大きく叫んだ時、ふいに生温かい湿った感触が僕の頬をくすぐった。


「ひゃあっ!」


僕の意識は一気に現実へと引き戻された。

でも、目が覚めても何も覚えていなくて、痛む頭に自然と手を寄せていた。


何か、恐ろしい夢のような……


もう一人の自分が思い出してはいけないと警告しているような気がした。


ぼんやりしていると、


にゃあ。


「ク、ロ?」


クロの真っ黒な瞳を見つめた。


僕はクロを押しつぶさない程度の、ちょっと強めの力で抱きしめ、ぽつりと呟いた。


「君は温かいね……」

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