少年は荊(イバラ)に捕らわれて
3
「焔、遅い〜」
扉をあけると、イチゴポッキ―を口にくわえた久遠の間延びした声に迎えられた。
その傍らでは、眠いのか昴の頭が上下に揺れていた。
目の前のテーブルの上には、久遠が好きな甘いお菓子が所構わず散乱していた。
「ああ、悪い。ちょっと今日は用事を済ませてきたからな。セラフィムの動きはどうなっている」
ドカッと音を立ててソファーに座り、視線を響に合わせた。
『セラフィム』は、bPのチームだ。俺達のチームとは天敵の中でもある。
「今のところは、変わった動きはないよ。ただ新しい情報が一つあるよ。」
「どうやら、セラフィムの総長…リュウに『恋人』ができたって噂。ただ、詳細は不明。女か…、男かも知れないし、名前、年齢、性別、容姿含め一切分からない。調べようとしても、情報がブロックされるんだ。まあ、よほど大切にされているんだろうね。」
響が漏らした言葉を黙って聞いていたが、しばらくしてクックックと肩を小さく揺らした。
唇を歪ませて嬉しそうに笑う俺の目には狂気に彩られた冷たい光が宿っていた。
「……壊してやろうか。リュウの目の前で、その大切な恋人やらを。泣き叫び、狂わしてやろうか…。リュウの澄ました面がどんなふうに歪むのか楽しみだな」
その言葉に同意するように、響、久遠は歪んだ笑みを浮かべ、昴は小さくうなづいた。
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