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少年は荊(イバラ)に捕らわれて

僕の名前は、紫藤響。

生徒会選挙で2位になり、副会長となった。

廊下を颯爽と歩いていると、


「きゃあ―、響様ぁ」


「かっこいい―」


男とは思えないほど甲高い声を出す奴らに、煩わしさを感じながらも、作った笑顔を返す。
それが偽りの笑顔だとも知らず、頬を染める奴らを心の中で嘲笑する。


生徒から、僕は、祖母譲りの金色の髪と蒼色の瞳という外見のせいか、別名で王子様と呼ばれている。


王子様か……、そういえば、こんな物語があったね。



『茨姫』

あるところに子供を欲しがっている国王夫妻がいた。ようやく、女の子を授かり、祝宴に12人の魔法使いを呼んだ。しかし、一人だけ呼ばれなかった13人目の魔法使いが現れ王女に呪いをかける。

順調に成長し、王女が15歳の時に一人で城を歩いている中、城の塔の一番上で老婆が紡いでいた錘で手を刺し、眠りに落ちた。城中に波及した呪いで、茨が繁茂して誰も城に入れなくなった。侵入を試みた者は絡み合った茨に阻まれ、入ったはいいが突破出来ずに命を落とした。


100年後。


近くの国の王子が噂を聞きつけ、城を訪れる。

王子様からのキスによって呪いが解け、王女は目を覚ます。二人は、その日のうちに結婚し、みんなから祝福されて末長く幸せに暮らしました。



―本当にそれでよかった?



お姫様が目覚めた後、その美しい姿を何十人、何百人の人々が目に映したのだろうか。


僕なら、お姫様…陽向が目覚めてその綺麗な瞳に僕以外の奴らを目に映すぐらいなら眠ったままでいいと思う。そうすれば、澄んだその瞳が汚れることはないから。


僕までも映らないのは、とても悲しいけれど、その分たくさん愛撫して、快楽を与えよう。


どんな声で鳴いてくれるのかな。


陽向のことだから、きっと甘い声を聞かせてくれるよね。


僕だけを感じて


僕達だけの世界。


揺り籠の中で大事に大事に……そう。

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