世界で一番きみが好き 5 貴之と一緒に帰り、家のドアを開けると姉の熱烈な抱擁に迎えられる。 「る――い――!!!」 がばっとまさに効果音が聞こえてきそうなほど、姉は僕を抱きすくめる。 「ゆ、由姉……」 ―立花由真、通称由姉(ゆうねえ)。 僕の姉で、ブランド「Ray」のデザイナー兼モデルの23歳。身長は174cm。亜麻色に染めた腰までの長さの髪に、すっと通った鼻筋に、くっきりとした目を特徴とした美人さん。 男である僕より背が高く、さらにヒールを履いているため、自然と僕の顔が由姉の豊満な胸に埋められる形となり、満足に息ができない。 男にしたら嬉しい状況かもしれないけど、今の僕にとっては凶器でしかないよ。 ゆ、由姉…… く……、苦しいです……。 息苦しさを覚え、さすがに命の危険を感じたため、由姉の背中を軽く叩き、サインを送る。 それに、気づいたのか、由姉はゆっくりと僕の体を軽く離すと、「ごめん、ごめん」と言って困ったように笑った。そして、僕が一息ついたところを見計らうと、 「瑠衣ちゃん……、お願いがあるんだけどぉ―」 由姉が瞳を潤ませて、口調をワントーンあげる行動をとるときは、ろくなお願いじゃなかった気がする。 [*前へ][次へ#] [戻る] |