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世界で一番きみが好き

校門の前に、黒い高級車が一台とまっていた。ドアの前では、上質な黒いスーツに身を包んだ、若く背の高い男性が畏まるようにして立っている。


貴之に手を引かれながら車に近寄ると、頭を下げた男性がゆっくりと後ろのドアを開いた。


「あの……、ありがとうございます」


「瑠衣、乗って」


にっこりと笑った貴之は、僕の頭が車にぶつからないよう車の中へとエスコートする。その後に続いて車に乗り込むと、運転手へと行き先を指示した。


どうみても、相手の方が年上のはずなのに、毅然とした口調で話していた。


僕といえば、当たり前のようにくつろぐ貴之と違って、高級車と慣れない空間に緊張していた。
背筋をまっすぐに伸ばして両膝を揃えまっすぐ前を向く僕を見て、貴之はくすりと笑い、肩に手を回すと体を引き寄せた。


「ふふっ、そんなに畏まらなくてもいいのに。僕の車に乗るのは初めてでもないのに、まだ慣れないんだね、瑠衣は。瑠衣のそういうところ好きだよ」


柔らかく微笑んで僕の髪をすくように撫でた。


車の外から代わる代わる景色をぼんやりとみていると、いつの間にか目的地に着いたみたいだった。


そこには、僕でも聞いたことがあるような銀座にある一流ブランド店だった。お店を目の前にして、気後れする僕の手をやんわりと握り、貴之は店の中へと入った。


店の中にある商品を数点目にして、貴之が定員と言葉を交わしている間、僕はきょろきょろと落ち着きなく周りを見渡していた。明らかにお金持ちだと分かる豪華な服装に身を包んだ人々。


貴之の意図がわからなく、困惑していると話を終えたのか、手を引かれ試着室の鏡の前に立たされた。


やんわりと、眼鏡が外され、髪を横に流されると視界が広がった。
眩しそうに僕を見た貴之は、背後に立つと、胸の前に服装を当て体の線に合わせた。


「うん、これが似合いそうだね。瑠衣、これ着てごらん」


「でも……」


「だめだよ。素直に言うこと聞いて」


貴之の有無を言わさない口調に肩を落とした。しばらくして、いつものラフな服装と違い高級な服に身を包んだ僕は、別人みたいだった。


満足そうに目を細め、唇の端を引き上げると、


「うん。瑠衣にはこれが似合うね」


頷いた貴之の吐息が耳にかかってくすぐったい。弱い刺激に思わず肩をすくめた。

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あきゅろす。
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