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世界で一番きみが好き

撮影が終わってから1カ月。

季節は、春から初夏へと変わり新緑が目立つようになった。衣替えが始まり、制服はシャツへと変わった。
景色は、日々少しずつ変化を遂げる中、僕は相変わらず他人との接触を持たない、至って変わらない日常を送っていた。


『きっと、またお前は俺に会うことになるからな。覚えておけよ』と言った海斗とは、あの撮影以来、会うこともなく時折テレビのブラウン管の中でその姿を見る程度だった。

海斗とは、メールアドレスや携帯番号を交換したわけでもない。どうやって、お互い会うのだろうか……。


「ねえねえ、今月の発売号見た〜?」


「見た、見た! 「Ray」の特集だよね。海斗とモデルのルイが載ってた。海斗のルイを見る眼差しが優しくってさ―、何だか二人本当の恋人同士みたいだよね」


クラスメイトの女子の声が僕の耳に響いた。


僕の心臓がドキッと音を立てた。


「…い、るい、瑠衣……」


僕を呼ぶ声にぼんやりとしていた意識が現実へと引き戻される。

机を見ていた僕の目の前には影が落ちていて、ゆっくりと顔を上げると貴之が立っていた。


「何度も呼んだんだけど、調子悪い?何だか、顔が少し赤いし……」


心配そうに僕を見つめ優しく僕の額に手を触れる。


「ううん、大丈夫だよ。」


僕は、軽く手を振って笑みを返すと、貴之は安心した表情に戻った。


「じゃあ瑠衣、帰ろ…。」


貴之は柔らかい笑みを浮かべると、ごく自然な動作で僕の手を繋ぎ引き寄せた。

貴之に誘導されるような形で騒がしい教室を出ると、校門へと向かった。


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