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世界で一番きみが好き

「や、やめてください。女の人が嫌がっているじゃないですか!!」


「ちょ、ちょっと何なのよこの子―!せっかく海斗と良い雰囲気だったのに邪魔して!!」


えっ……?


強い力で腕を引っ張られ振り向くと、女性の不満そうな顔があった。


襲われていたんじゃなくて……?


もしかして、邪魔したのだろうか……僕は


勘違いに恥ずかしくなり、頬に熱が集まっていく。


僕は恋愛経験が皆無といってもいいほどになく、その為男女の睦み事には特に疎かった。

ただ、それには、瑠衣の家族を除き男女含め自分以外には絶対に関わりを持たせないといった貴之からの影響が非常に大きかったが……。


「ご、ごめんなさい……」


頭を下げる僕の言うことに一切耳を貸さず、女性は一方的に怒っていた。


「ちょっと、謝ればいいと思ってんの!!……あなたモデルのルイ?……あなた知ってるのかしら?本当は、私が今日のポスタ―撮影のモデルだったのに。それを、急にルイに変えるなんて言われて…あなたのせいで降ろされたんだから!憎らしい…。あんたなんか、消えてしまえばいいのに!!」


女性は美しい顔を醜く歪め、僕に罵詈雑言を浴びせる。
向けられる悪意に、僕の戸惑っていた心が痛みを感じ始め、唇をかみしめ表情は強張る。


「あなたさえ……、あなたさえいなければ!!!」


女性の言葉に、僕の顔は青ざめ、体が震える。その場に立っているのもやっとのほどであった。


女性の心の奥底にある叫びが、僕の忘れることのできない記憶と重なっていく。



―お前と出会わなければよかったよ……



―お前さえ……、お前さえいなければ!!!



―俺は、お前を許さない……



や…、やめて……!!!



僕の心が悲鳴を上げる。



かたかたと体の震えが止まらない。



頭の中では、女性の言っていることが、理不尽なものと分かっていても、今の僕にはそれをしっかりと認識できる状況ではなかった。

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