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世界で一番きみが好き

過去を思い出し、一瞬目の前が真っ暗になるが、僕を呼ぶ声が意識を現実に引き戻す。


「……い、るい、瑠衣、大丈夫か?」


「大丈夫です…、颯人さん……」


心配掛けないよう笑みを返したつもりだったけど、どうやらぎこちなかったみたいだ。颯人さんは、はあっと小さい溜息を吐いた。僕の両頬を軽くつまむと横に引き伸ばした。


「ひゃやとさん、な、何すりゅんですか…」


頬を横に引き伸ばされたまま喋ったため、うまく言葉にならない。


「瑠衣が可愛いから、何だか急に構いたくなった。……あまり無理すんな」


最後の言葉は独り言の様にぼそりと呟かれたものだったため、僕の耳には届かなかった。
でも、颯人さんの太陽のような眩しい笑顔に目頭が熱くなり、なぜか泣きそうになった。


「ありがと……、颯人さん」


「ん……」


颯人さんは、僕の髪をくしゃりと撫でると、屈託のない笑顔を送った。



由姉に連れられ、撮影現場に向かうと、大勢のスタッフが忙しそうに動き回っていた。


僕に気付いたスタッフの何人が、「ルイ久しぶり」と笑顔で挨拶を送ってくれる。スタッフの皆が真剣に頑張って働いている姿を見ると、絶対にこの仕事を成功させてみんなの努力を無駄にしたくない。



緊張で自然と手に力が入った僕に視線を向けた由姉は、


「瑠衣、緊張しすぎるのは、あなたの悪い癖よ。まだ、撮影まで時間があるから気分転換がてら建物内でも散歩してらっしゃい」


僕は、由姉に促されるような形で建物内を散歩に出かけた。




その先にある出来事が、僕……立花瑠衣の運命を変えていくことになるなんて知る由もなく……。

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