世界で一番きみが好き
2
「入るわよ―」
由姉の言葉とともに開けられたドアの先にいたのは同じ顔をした男女二人。
「あれ?もしかして、瑠衣か……?お前、ずいぶんと変わったな―」
「瑠衣さん、久しぶりです」
笑顔で出迎えてくれたのは、メイク担当の瀬上颯人さんとスタイリスト担当の彩乃さんだ。
二人は、双子で顔は似ているけど、違う印象を受ける。
颯人さんは、オレンジ色のくせ毛の髪をもち、背が高い。僕を含め、誰に対しても分け隔てなく接してくれて、太陽のように周りの雰囲気も明るくし、ある意味ムード―メーカーな存在だと思う。
彩乃さんはウェーブがかかった腰まで長さの茶色髪でふんわりとした印象。
美人さんだけど、迫力のある玲奈さんとはまた違ったタイプで、どちらかというと大人しく、清楚な印象を持つ。加えて、年下の僕に対しても敬語を使い柔らかい口調で話すところが、より清らかな部分を引き立たせる気がする。
「こんにちは、颯人さん、彩乃さん」
僕はにっこりと笑い、軽く頭を下げる。
「おうっ、久しぶりだな。それにしても……、瑠衣はそのままでも良いとは思うけど、やっぱり、こっちの方が可愛いし、癒されるよな」
颯人さんは、無理矢理僕の黒縁眼鏡を取ると、にかっと白い歯を見せ大きく口をあけて笑い、豪快な手つきで僕の髪を撫でまわすと、抱き寄せた。
僕は、颯人さんが髪をなでる手のくすぐったさに、肩をすくませ、目をつぶった。
「颯人、瑠衣ちゃん独り占めして、ずる―い!私も混ぜて―!」
そこに、玲奈さんが飛び込んできて、またその場が賑やかになる。
由姉と彩乃さんは、そんな僕達の様子を見て「あら、あら」と苦笑し、温かく見守っていた。
玲奈さん、颯人さん、彩乃さんといると、楽しくてとても心が温かくなってくる。
血は繋がっていないけど……
もう一つの僕の家族で……
大切な僕のもう一つの居場所……
だから……
もう僕の大切な場所を奪わないでください
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