世界で一番きみが好き
モデル
今日は、ポスター撮影日。
僕達は、電車を乗り継いで、撮影所に来ていた。
入る前、僕の容姿が黒縁メガネとぼさっとした髪だったせいか、入り口にいた警備員さんには変な目で見られたのが、何だか気まずかったな……。
そんなことを、ぼんやりと思いながら僕はスタジオに入った。
「玲奈さん――!!」
由姉は、人の輪の中心にいる女の人に向かって大きく右手を振った。
届いた声に振り向いた女の人は、由姉に向けていた視線を僕に移すと、怪訝そうな顔で上から下まで、じろじろと見渡たしていると、次第に唖然とした表情になる。
「由真と…、瑠衣ちゃん……?」
「こんにちは、玲奈さん」
玲奈さんの前まで歩くと、にっこりと笑いぺこりとお辞儀をした。
玲奈、こと田上玲奈さんは、由姉が手掛けるブランドの社長さんで、由姉と親友でもある。
由姉と同じくらい背が高く、腰までの長さの黒髪を持つ、スレンダーな美女だ。
僕は唖然とした表情の玲奈さんを見つめながら、美女さんはどんな表情をしていても美女さんなんだなと、何だか変なところで感心していた。
「……、いやぁ―、私の瑠衣ちゃんがなんでそんな格好になってるの―!!」
しばらくすると、黙って僕を見つめていた玲奈はさん、握りしめていた両手を震わせ、突然叫びだした。
その声の大きさに驚き、思わずびくりと体を震わせた。自然と周囲の視線が集まる。
今まで、何回か玲奈さんに会ったけど、玲奈さんの前でこの姿を見せるのは初めてだったかも。
でも、何もそこまで驚かなくてもいいような……。
ただ、スタッフさんの視線が痛いので、早くこの場から立ち去りたい……。
そんな僕の心情を察したのか、由姉が「さて、そろそろ準備に入りましょうか」と締めくくる。由姉に半ば引きずられる玲奈さんと共にたどり着いた先は、メイク室だった。
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