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終焉が奏でる始まりの歌

呉羽と絶え間ない時を過ごし気がつくと、部屋が夕暮れに染まる頃になっていた。
帰る僕を城門まで見送るという呉羽と並んで、長い回廊を歩いていた時、事態は一変した。


一人の男が奇声を発しながら僕達の方向へと走って来た。


目は血走って見開き、その視線は呉羽に注がれていた。考えている余裕はなかった。


異様な雰囲気に恐ろしくて声が出せない僕は、咄嗟に呉羽の体を突き飛ばした。


僕の行動に驚く呉羽を目に入れた直後、背中に熱が走った。じわじわと生まれる痛みに、僕は小さく呻きその場に足をついた。


「神楽ぁ―――!!」


叫んだ呉羽は飛跳ねるようにして駆け寄った。
呉羽は青ざめた顔で僕を見つめ、震える手で僕を抱えた。僕の背中から流れ出る血は、僕の体を支える呉羽の手や衣服を赤く染めていった。


滴り落ち床に赤い水たまりを作るのを、呉羽は呆然と見つめていた。


「く、れ、は……大丈夫?」


「何言っているの、神楽!僕は大丈夫だ!でも、神楽、君が僕を庇って傷を……」


「大丈夫だよ。……呉羽が無事でよかったぁ」


無事な姿に安心した僕は、弱弱しい笑みを向けた。


呉羽は苦渋の表情を浮かべ、僕の首筋に顔を埋めた。


刃物で傷つけられた背中は燃えるように熱かった。その一方で、冷たい汗が体を伝っていく。


呉羽は兵士に抑えつけられた男に鋭い眼差しを向けると、片手で僕の体を抱えたまま、腰にあった剣を抜きとると躊躇いもなく切りつけた。


男の首から血が噴水のように噴き出し、豪華な床を赤い水で染め上げていった。断末摩の悲鳴をあげ、その場に崩れ落ちる男を、呉羽は氷の様な冷たい視線で見据えた。


「……神楽を傷つけたことは万死に値する、死をもって罪を購え」


血の付いた剣を無造作に放り投げた。


赤い飛沫は呉羽や僕の顔や衣服を赤く染め上げていた。その異様でなおかつ壮絶な光景に、その場にいた人々は恐怖や驚愕といった感情を持って大きく目を見張った。


痛みで遠くなる意識の中で、僕が目にしたのは、ゆっくりと広がる赤い、赤い血の海。


その光景が頭にある記憶の中の映像とリンクした。


「いやぁ――――!!!」


僕は両手で頭を抱え大きく叫んだ。綺麗で透き通った瞳は焦点が合っていなかった。その表情は恐怖に満ちていた。


声なき悲鳴を上げたあと、意識は闇の中に落ちた。


「……、かぐ、ら、神楽、神楽!どうしたんだ、神楽っ!!」


尋常でならない僕の様子に呉羽は息を飲む。しかしすぐに、我に帰ると何度も神楽の名前を呼んだ。


だけど、僕の目が覚めることはなく、力尽きたようにその場に崩れ落ちていた。


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あきゅろす。
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