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終焉が奏でる始まりの歌

思い返すこと数年前、何の前触れもなく事は起きた。


朝起きて鏡を見た僕の前には栗色ではなく銀色の髪を纏った自分がいた。ただ呆然としてその場にたたずんでいた。

時間をほどなくして起きた両親は、僕の姿を見て驚き、すぐに色んな方法で髪を元に戻そうと試した。だけど、どんな染料を使っても僕の髪の色が元に戻ることはなかった。


まるで、運命に逆らうなと言っているかのように……。


銀色の髪の色。


この世に存在しない色。


人は見た目で、物事の考え方を180度変える。それはいいようにも、悪いようにも。


僕のこの変化は後者だった。


村の人々はより一層薄気味悪そうな目で僕を見るようになり、もともと希薄だった付き合いがさらに酷くなった。


村の人々からの視線や言葉に心が傷つけられることはあったけど、両親や呉羽、風音様の存在に、僕の心は壊れることなく救われていた。


そんな遠い過去に思いを馳せていると、ふいに訪れた刺激に身をすくませた。


冷たい指が僕の首筋を掠め、「ひゃうっ」と声を上げると呉羽はにやりと笑みを浮かべた。  


「感じた?」


にやりと笑った呉羽の言葉に、頬に熱が集まった。


「もう、そんなことないよ!」


からかうような呉羽に対して、僕は頬を膨らませ拗ねたように口を尖らせた。そんな僕に呉羽は悪戯な笑みを浮かべる。


「可愛いよ、神楽」


「そういう言葉は、僕なんかじゃなくて、婚約者の麗羽様に言えば……」


「僕には神楽だけいればいい」


僕の言葉を途中で遮り、切なそうな声で、耳元で囁いた。背後から僕を包み込むように抱きしめ、首筋に顔を埋めた。


だから、僕は、この時呉羽がどんな顔をしていたか知る由もなかった。


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