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終焉が奏でる始まりの歌

いつものように、泉で動物達と過ごした後、取った薬草を手に取り村に戻ると、それぞれが各々の仕事をこなしていた。


僕の村は人口200人ほどの小さな村で森と水に囲まれている自然豊かな所だ。自給自足が主で、若者の中には、年に数回、都まで出稼ぎに行っている者もいた。


同年代の子は、「こんなところつまらない。早く都へ出る」って言っているけど、僕はこの村が大好きだ。だから、きっとこの村で一生を終えると思う。


見知った顔に挨拶し歩いていく中、畑を耕す男の子が目に入った。


「啓太、おはよう」


「おはよう、神楽」


「今年も豊作だね」


「ああ、そうだな。この村は神様に守られた土地だからな。そうじゃなきゃ、他の村みたいに日照りや災害で作物もろくに育たないっていうのに、この村だけ被害がないのは考えられないからな。でも、いつかしっぺ返しが来る気もしないわけでもないけど」


浮かない顔をしている啓太に僕は首をかしげた。


「なんか啓太元気ない?」


「……あっちでさ、達がいつもの動物苛めやっているからさ気分悪く…って神楽どこ行くんだよ」


啓太の声を背中に受け、村の奥の方へと走ると、同じ年頃の少年達が何かを取り囲んで騒いでいた。弾んだ息を整えながら、輪の中心に向かって歩みを進め覗きこむと、一匹の白蛇がつつかれていた。


「やめなよ」


人の波をかき分けるようにして中心へと入ると、蛇を背に庇うようにして間に立った。


「何すんだよ、神楽ぁ」


「邪魔するなよ!」


僕の行動が気に食わなかったのか、少年の一人が舌打ちをすると僕の体を突き飛ばした。僕はバランスを取る間もなく、強く体を地面に打ち付け顔を歪めた。


白い肌からは一筋の血が流れ落ちた。


「痛ぁ……」


「でしゃばるから、そんな痛い目にあうんだよ」


突然、背後で響いたつんざくような悲鳴に僕の肩がびくりと震えた。顔を上げると、今まで強気な態度を見せていた少年達は、顔を真っ青にしていた。急に怯え始め逃げるようにしてその場を立ちさった。


小さくなっていく少年達の背中を目にした後、振り返った僕の視線の先にはそして、白蛇がいた。ふと見ると、その綺麗な白い体には所々小さな傷ができていた。


僕は、ごそごそと音を立てながらポケットの中から小さな入れ物を手に出した。蓋をあけて、一つ指にクリームを手にとり、しゃがみ込むと丁寧に蛇の体に塗った。


「早く治ればいいね」


一通り蛇の傷の具合を確かめながら薬を塗り終えた後、その場を離れ家へと向かった。


遠くなっていく僕の背中を蛇は鎌首をもたげて、じっと赤い目で僕を見つめていた。


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あきゅろす。
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