堕ちた先には
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涙をぬぐってゆっくりと顔をあげると心配した様子の透の顔があった。
「渚、どうした…?」
透の穏やかな瞳に見つめられ、一度はせき止めた涙がまたあふれ出しそうになる。
透は何も言わず唇を震わせている渚の手を掴み歩き出した。
何故だろう……。
繋いだ手から伝わってくる温もりが、いつもより温かく、懐かしい気がした。
温かいね……。
懐かしいね……。
嬉しい時、困った時、怒った時、悲しい時、いつでも君は優しく抱きしめてくれた。
透……
何処に行くのか分からないまま、透に手を引かれ連れて行かれる途中、「透」と名前を呼ぶと、優しい眼差しで、大丈夫だよと伝えてくれた。
お互い何も喋らないまま、10分ほど歩き着いた先は、透の家だった。
透の家は、一軒家で両親と大学生である姉との4人暮らしだ。
「今日は、俺ん家泊まれ」
「え…、でも僕が急に泊まったら家族の人に迷惑じゃ……」
「ばーか、気い使うな。それに、今ちょうど、両親は旅行に行ってるし、姉きは友達のとこに泊まりに行くって言ってたから、俺以外はいない。それに、家族だって渚なら大歓迎だぜ。前に渚が泊まった時だって、お袋なんて渚ちゃんみたい子が子供に欲しいわ―なんて言ってたしな」
泊まるだろ?という透の言葉に、渚は微笑み、「ありがと」と小さく頷いた。
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