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堕ちた先には

教室に戻ったのは1限目が終わった休み時間だった。


「無理はするな」


軽く肩を叩いた透に対し、ぎこちない笑顔で答え自分の席に戻った。

次の授業は化学室への移動のため準備を始めた。

徐々に教室の中の生徒もまばらになり、しんと静けさが積もる。


「渚……、準備できたかー?」


前の席から透の声がかかる。


「まだ、だから先に行ってね」


「わかった。先に行ってるな」


僕に気がかりを残す透を見送った。

最後、教室に一人になると、落ち着くにはちょうどよい静寂な雰囲気が流れ、僕はゆっくりと周りを見渡すと自然とため息が出た。

必要な物を持ち、人通りの少ない廊下をゆっくりと歩いた。

もう少しで化学室に着こうかとする時、空き教室の前を通った所で、くいっと腕を引かれ温かい温もりに包まれた。

薄暗い視界の中で、ドアを閉める音がいやに大きく響いた。


誰かと思い、顔を上げると、そこには今一番会いたくない人物である煉の顔があった。


微動だにせず、息を呑む僕に対し、煉は口角を吊り上げ微笑むと僕の頬に手を添えた。


「な―ぎ―さ、さっきは夏沢とどこに行っていたのか
な……。」


「…………」


「……渚、渚は俺の彼女って言ったよね。だったら、他の男と二人っきりになっちゃだめだよ」


「違う、僕は煉の彼女じゃ……」


「違わない、だって渚はあの時俺に約束してくれたでしょ。そういうふうに言うなら、もう一度その体にわからせてあげなきゃいけないのかな」


息がつまり、目線をそらすと、煉は僕の耳元に口元を寄せ低い声でつぶやいた。




「渚、お仕置きだよ……」


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