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堕ちた先には

授業中のため、ひっそりと静まり返った廊下の中を透に手を引かれながら、どちらとも言葉を発することなく淡々と歩いていた。


前を歩く透の背中しか見えず、その表情はうかがいしれない。

僕はうつむき、教室を出る瞬間の煉の冷たい瞳を思い出した。


いつも僕に対し笑顔を見せていた煉……


煉のあんな冷たい瞳はみたことはなかった……


透が危ない……?


一瞬過去の映像がフラッシュバックしかけたが、はっきりと思い出すことはなく、感覚的に恐怖で身がすくむだけだった。

教室からだいぶ離れ、行き先が気になり始めた。


「透、どこに行くの?」


「屋上だよ……」


屋上に続く階段を上がり、錆びた音を立ててドアが開いた。
そこには以前、煉や透と初めて昼ご飯を食べたときの穏やかな風はなく、今にも雨が降りそうなどんよりとした空が広がっていた。


まるで……


今の心情を表しているかのように……


ぼんやりと空を眺めていると、ふっと視界が陰り、温かい温もりが僕を包んだ。


「とお……る?」


いつもとは違う抱きしめられ方に、戸惑い目を見開いた。


「渚……何かあったら俺に言えよ……」


僕の耳元でぼそりと呟いた。


「……ありがと……」


煉とのことは絶対に透には言えない……


そう思ったけど、透の心使いは嬉しかったから、ぽつりと言葉が出たのかな……


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