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堕ちた先には

なんとなくいつもと違う教室の雰囲気に気をひかれ、自分の席に向かいながら、会話に耳を傾けた。


「え〜、ショック〜」


「彼女できたんだ…」


女子達の落胆した声を気にすることもなく、煉はゆっくりと微笑んだ。


「ああ、とっても可愛い彼女ができたんだ。名前は秘密だけど、ヒントだけ教えてあげようか…。彼女はこの学校の子でイニシャルはNだよ」


そういうと煉は女子の肩越しに僕を見つめ、口角を釣り上げた。


―渚、僕の彼女になって


―渚、渚、渚……愛してるよ……


昨夜の情事が思い出され、思わず歩みを止めた。
その行動に不審に思ったのか透は僕の顔を覗き込んだ。


「渚、顔色悪いけど大丈夫か?」


眉を下げ、心配そうに見つめる透の手が僕の頭に触れそうになったとき


「渚……おいで……」


僕を呼ぶ声は優しいのに、それでいて威圧感もある声の方向に振り向いた。


「煉……」


視線の先には熱い眼差しで僕を見つめ、ことさら優しく微笑む煉の姿があった。


煉の呼ぶ声によって皆の視線が僕に集まる。


居心地悪いものを感じながら、人混みをかき分けるようにして、ゆっくりと煉の側まで歩きを進めた。
普段、煉と学校で話すことがないため、なぜ呼ばれたのか真意がわからず、戸惑う。


「………なに?」


体を強ばらせ、両手を握りしめ、ぼそりと呟いた。


煉は突然僕の手首を掴み軽く引いたため、胸に倒れ込んだ。


煉は僕の体を膝の上に乗せると、頭をゆっくりと撫でながら、


「煉は俺の彼女知ってるよね……」


その言葉を聞いた瞬間、不安、絶望、焦燥感に襲われた……。


あまり言葉を交わすことないのに……


どうしてこんな時に…


嫌な予感はしたけど……


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