堕ちた先には
1
窓に差し込む朝日に誘われるようにして、渚は重い瞼をゆっくりと開いた。
しっかりと開かない目で、部屋をゆっくりと見渡すと視界に映るのは、見慣れない空間。
真っ白な羽毛布団にベッドとテレビ、パソコンのみで、それ以外は家具という家具はない、とてもシンプルな部屋だった。
少なくとも僕の部屋にはCDコンポや机とか、もう少し家具が置いてあったはずだと、ぼんやりと思った。
どうして……
昨日いったい何が……?
思い出そうとするが、それを拒否するかのように、頭に霧がかかってしまう。
強い倦怠感を振り切るようにして起き上がろうとしたが、腰に響く鈍痛に起き上がろうとすることは叶わず、またベッドに逆戻りする形となる。
「ぃっ………!」
体に走る痛みに、昨日あった情景が一気に蘇ると、吐き気を催した。
そうだ……
昨日、ここで……、
僕は煉に……
弟に犯された……
どうして……
久しぶりに煉に会えて、また仲良くできると思って、僕は嬉しかったのに!!
僕と煉は決して許されない禁忌を犯してしまった。
もう元には戻れない。
僕の頬を涙が伝ったが、拭うこともせず、目の前の現実から逃れるかのように両手で顔を覆った。
「渚……、おはよう……」
真っ暗な視界に、今一番聞きたくない声が耳に響いた。
[次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!