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堕ちた先には

「なぎ、なぎさ、渚…」



僕を呼ぶ声に導かれるようにして、重たい瞼をうっすら開けた。


目を覚ますと、見慣れない部屋。

僕の名前を呼ばれ、声の聞こえた方向に顔を向けると、心配した様子の透の姿があった。


「と、お、る?」


透の家に泊まったことを、ぼんやりと思い出す。


「渚、大丈夫か?何だか、だいぶうなされていたようだったけど…」


「…………」


「…まだ時間があるから、ゆっくり眠りな」


眠りを促されるようにして目元に置かれた透の手の温もりによって、渚は意識を闇に落としていった。



夢を見たような気がするけど、よく覚えてない。


でも、前みたいに思い出すなって僕の中で警告が発している気がするから、あまり考えないほうがいいと思った…。



そう……



あんなことがあったんだ……



今は何も考えないで……



ただ、この優しい温もりに浸かっていたい……

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