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堕ちた先には

返す言葉もなく戸惑う渚に、莉桜は困ったように微笑んだ。


「渚君の顔、元気ないよ?」


「ん…。大丈夫…かな…。ただ、双子の弟…煉と会うのが久々だったから、何だか変に緊張して少し疲れただけだよ。3年間会わずに連絡も一切取れなかったから、また昔みたいに戻れるのかなって色々と気にしちゃって。昔は、どこへ行くのも一緒で仲良かったんだよ。両親が離婚して離ればなれになった中学1年までだけど。中学1年……ってその頃何してたんだろう……?何故だろうね、そんな昔のことでもないのに、その頃の記憶が…はっきり覚えてないんだけどね。」



ふと、不安に駆られ、思わず足元を見つめた。


どうしてか、煉と離れたときの事が、よく思い出せない。


渚は、痛みを感じ、瞳を閉じ眉間にしわを寄せると、髪をつかむように頭を押さえた。


渚の行動に、莉桜は眉を寄せ、「大丈夫だよ」と何度も呟き、優しく包み込むようにして抱きしめた。


莉桜の温もりに安心したかのように、渚は、ほっと軽く息を吐き、「大丈夫だよ」と呟いた。


莉桜は、僕を気遣うかのように柔らかな頬笑みを見せた。
公園で話した後、いつもの場所で別れようとした時、



「あの…、渚君!!」



「んっ?莉桜?」


「……、ううん、ごめんね、何でもないよ。また…明日ね…」



莉桜は遠ざかっていく渚の背中を見つめながら、ぽつりと呟いていた。



「煉…、貴堂煉……。どこかで、あの顔を見たことあるんだけど。……まさかね、あんな所で会うわけないし、何より、あの時の顔の表情と大分違うもの。ただ、いやな予感がする。思い過ごしであればいいのだけれど」




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