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堕ちた先には

「ふ―ん……渚、彼女いるんだ……」


煉の瞳が暗い光をおび、抑揚の無い声で、喋った。


「煉は…?格好良いんだから、可愛い彼女の一人いそうだよね……」


「彼女はいない。でも…、好きな子はいるよ…。俺の欲しい子は、その一人だけ…。そいつしか、愛せない。」


「その女の子は、そこまで煉に思われてるんだと嬉しいんじゃないかな。何か僕にできることがあったら言ってね。応援してるから」


僕が笑顔で言うと、煉はなぜか切ない表情になるが、それも一瞬のことで気を取り直したように微笑む。


「ありがと。あとは、俺、その渚の彼女に会ってみたいんだけど。今度紹介してね」


「うん」


渚は、笑顔で答えた


昼休み終了5分前となり、日直である僕と透は授業の準備のため、煉より一足先に教室に戻った。



誰も居なくなった屋上で、煉は渚が出てった方向を見つめ、暗く凍てついた表情を浮かべ、呟く。



「許さない……、渚は俺だけのものなんだ。渚を愛するのは、渚が愛していいのは俺だけだ。俺以外の奴をつくるなんて、許さない。邪魔な虫は消さないとね……。」



これから穏やかな日常が崩れていくことを、この時の僕は知る由もなかった。

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