堕ちた先には
1
昼ごはんにする為、僕達は教室を出て、人混みの廊下を通り抜け、階段を上がり、屋上へと向かった。
扉を開けると、光が射し込み、思わず目を細め手のひらを顔にかざした。
穏やかな風が吹き、気持ち良い。
奥のフェンスに寄りかかって、渚を真ん中に挟んで3人並んで座った。
「お腹空いたぁ。ご飯食べよ」
渚はお弁当を広げた。
今日のメニューは、自分で焼いた玉子焼きと昨日の残り物のおかずであるハンバーグだ。
お母さんは働いているから、食事当番はほとんど渚の担当だ。
パンでもいいかなって思うときもあるけど、僕の身長伸ばす計画には栄養も必要だからね。
いただきますと両手を合わせて玉子焼きを口に含んだとき、横でパンッと袋を破る音が聞こえた。
モグモグと口を動かしながら視線を横に向けると、煉は惣菜パンを食べていた。
「煉…、もしかしてそれだけ?」
煉の手に持っている他には見当たらない。
それにしても、それだけで、身長があるなんて、羨ましい。
……じゃなくて、栄養が偏るよ。
「ああ。渚は自分で作ってるの?おいしそうだね」
「じゃあ、僕の玉子焼きあげる」
玉子焼きを箸でつまみ、口を開けた煉の中にいれた。
「ずるい」と横で透の不満げな声が聞こえたけど、無視して少し緊張して聞く。
「味はどうかな…?」
「おいしいよ。渚はいいお嫁さんになるね」
優しい笑みを浮かべ僕の頭を撫でながら言った。
「玉子焼きで大げさだよ。しかも、僕男だよ。お嫁さんなんて変だよ」
クスクスと笑った。
それからお腹がいっぱいになったのか眠りに入った透を横に、渚と煉は離れていた間のそれぞれの生活や趣味などを語り合い、穏やかな時間を過ごす。
そのなか、一つの間を置いて、ぽつりと煉は口を開いた。
「渚は……、好きな人いるの?」
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