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禍福は糾える縄の如し
春休みの出来事


春休み

ヤバい気が重すぎる……。部活ピックアップという記事を書かなくてはいけなく、テニス部のエース…つまり幸村君、真田君、柳君の3強にインタビューというどうなることかが目に見えている作業をしなければいけない。

とりあえずだいたいどんなこと聞くかは事前にメールで送っておいた。普通のことばっかりだったから柳君あたりは予想出来ていたかもしれない。
あとは、記事に載せる用の写真を撮るためのデジカメと新聞部の腕章を持って家を出る。


学校に着いてテニスコートの方へ行けばいつもより少ないギャラリー。そのほとんどが部活帰りの子らしく、各々の部活を示すものを持っていた。その一角に入って練習風景を撮影し始める。周りはチラッとこっちを見るが新聞部の腕章を見ると納得したようにまた応援に戻る。

「雪花 さん、こんなところで何をしているんですか?」

「あ、柳生君。例のインタビュー今日なんだ。それで今練習風景撮影中」

「そうですか頑張って下さい」

そうして柳生君はコートに戻っていった。

「雪花 さんこんなところで何をしているんですか?」

あれ? デジャヴ。振り向けばコートに戻っていったはずの柳生君が後ろに立っていた。

「ドッペルゲンガー?」

「………………」

あ…しまった。違った。仁王君と柳生君は入れ替われるんだ。つまり、さっきの柳生君と今目の前にいる柳生君、どちらかが仁王君ということ。どっちがどっちかはさっぱり分からないけど。

「さっき柳生君らしき人がコートの中へ入っていったけど」

「それは仁王君ですね…先程入れ代わって練習していたので」

なるほどこっちが柳生君か。

「なんじゃつまらんのう」

コートの中からもう一人の柳生君が来る。柳生君の姿の中身仁王君がその言葉で喋ると違和感以上の何かがある。真面目にやめてくれ。

「仁王君いつまで私の格好をしているつもりですか」

「雪花 ちゃんの反応が見たくてのぉ。『ドッペルゲンガー?』は良かったぜよ」

あー…恥ずかしい!! でもそう思うくらい似てるんだよ!! あとね、視線が痛い!! 言っとくけどここギャラリー。春休み中だからいつもより人は少ないんだけどそれでも0じゃない。中には柳生君や仁王君のファンも居るわけで、このやり取りが気に入らないのだろう。今にも「仁王君と何話してんのよ!!」とか「柳生君に話しかけてもらって調子のんないでよ!!」とか言って飛びかかってきそうなくらい恐い。

「仁王君、柳生君そろそ「仁王!! 柳生!! 早く戻らんか!!」

真田君来たー!! 怒られて大人しく帰っていく二人。柳生君に関しては謝ろう。完全とばっちりだしね。ごめんなさい。仁王君はあれだよね? 絡んできたのそっちじゃんみたいな感じ。

「結城もう来ていたのか」

「うん。練習風景とかも載せたかったから撮ろうと思って少し早めに出てきたんだ」

「撮れたのか?」

「一応」

「練習が終わるまで30分くらいあるのだが」

「じゃあ、私部室行ってバックナンバー探してくるから練習終わりそうな時に行くね」

「すまんな」

「いや、私が早く来ただけだし。じゃあ、また後で」

それから職員室に行って鍵を借りて部室に向かう。

「特別号のバックナンバーは……っと」

棚にファイリングされた新聞を見る。

「去年はバスケ部で、あ…一昨年京一郎さんじゃん。あの人本当に強かったんだ……」

新聞にはざっと1年の時の戦歴が載っていて大体勝っていた。
私は京一郎さんの試合を一回しか見ていない。それも剣道のルールなんて心得てないから本当にただ見ているだけ。勝ってたからおめでとうございますと言ったら本当に喜んでた。

そういえば卒業式以来全然話してないな。というか、卒業のお祝いとか言ってないじゃん!! 電話したら出るかな!?

RRRRR…………

「もしもし雪花 ちゃん? どうしたの?」

「京一郎さん卒業おめでとうございます!!」

「…………もしかしてそれだけのために?」

「はい。お祝い言ってなかったこと思い出したので。もしかして忙しかったですか?」

「いや、大丈夫。それより雪花 ちゃんが電話してきてくれてスッゲー嬉しい!!」

「そうですか」

「やっぱりすぐいつもの感じに戻るのな」

「あと………ボタンありがとうございます。高校でも頑張って下さい」

「!!」

「どうかしました?」

電話先の様子が変だ。

「いや何でもないよ。ただ高校隣だからすぐ会いに行くから」

「…盲点でしたね」

「嫌?」

「嫌というかなんか焦って電話したのがバカみたいに思えてきて…」

「焦って電話してくれたんだ。尚更嬉しいんだけど」

「もう切ります」

「えー………」

「そろそろ時間も迫ってるんで」

「分かった。じゃ、今度会いに行くから」

「来なくていいです。さようなら」

電話を切って時間を見るとちょうどいいくらいだった。

「さて、行くか」





テニスコートの方へ行くとちょうど人がバラバラと出てきたところだった。紫先輩がある程度連絡してくれたらしいが挨拶くらいしておこうと思って部長さんに声をかける。

「錦先輩ですよね?」

「ああ。その腕章、新聞部の奴だな。切原から話は聞いてる。取材のことは全部幸村たちに任せてるからよくわからないが、頑張れよ」

「ありがとうございます」

なんか普通に良い人で良かった。恐い人だったらどうしようかと思った。

「雪花 こっち」

「幸村君、今行く。では、錦先輩失礼します」

「じゃあな」

幸村君に呼ばれて部室まで行くとテニス部3強こと幸村君、真田君、柳君とこの前ガス〇に行った時の人たちが勢揃いしていた。

「俺たちも見学させてもらうぜぃ」

「まあいいけど」

特別変わった質問もないので居ても問題はない。

「まず最初に………」

そんなこんなで取材はスムーズに進み、予定より早く取材は片付いた。

「よし。これで後は記事を書くだけ。みんなありがとうございました」

よし、一番面倒な取材が終った。
早く帰って記事書こう。

「なあなあ、ここら辺に上手いアイス屋あるからこの後みんなで行かね?」

「最近俺も食べたかったんだ。行こうか」

丸井君の言い出したのをきっかけに幸村君がのって最終的には全員がのった。まさか真田君までのるなんて思ってなかった。多分保護者的な何かだと
思いたい。

「雪花 ちゃんもいくじゃろ?」

アイスか…。最近食べてないな。なんか考えてたら食べたくなってきた。

「私も行く」

「それじゃ早くいこうぜぃ」

「おいブン太一人で突っ走るな!!」






「ストロベリーお待たせしました」

アイス屋で私が頼んだのはストロベリー。丸井君はチョコとリンゴシャーベットのダブル、ジャッカル君はオレンジシャーベット。仁王君はチョコミントで柳生君はラムレーズン。幸村君はバニラ、柳君は抹茶。そして気になる真田君のチョイスは小豆だった。最後2人は和風のものがよく似合う。アイスより団子とかお煎餅食べてるイメージの方が強いもん。

パクリと一口食べれば甘味が口の中に広がる。なるほど丸井君の情報は間違っていなかったらしい。

「雪花 、一口頂戴」

「え?」

私のストロベリーアイスの一角は既に幸村君に取られていた。

「バニラも好きなんだけどストロベリーも好きなんだ俺」

「幸村君、言ってくれれば最初から半分こしたのに」

「え?」

嫌、何で逆に聞き返されてるの?
幸村君的にはバニラも好き、ストロベリーも好き。だけど丸井君みたいにダブルはちょっとキツいかもしれない。そこでちょうどストロベリーを頼んでた私から一口もらったわけでしょ。最初に言ってくれれば半分こでもなんでもしたのに。そういうことだよね。

「私も麗とよく半分こするけど一度に2つの味が楽しめるからお得だよね」

「ああそうなんだ」

えっ!? なんか幸村君黒いもの背負い始めたんだけど!!

「何も背負ってないよ」

だから会話が成り立ってないよ!!

「雪花 アイス溶けるてるぞ!!」

ジャッカル君に言われて気づく。
あっ、ヤバイ!!

ストロベリーアイスを急いで食べる。
美味しいからもっとゆっくり食べたかった……。

「さて、全員食い終ったしかえろうぜぃ」

「そうですね」

各方向ごとに別れて帰る。ここからだと帰り道は柳君と同じだ。柳君は小学校は違えど家はそこそこ近い。だから帰りが一緒になると必然的に二人になる確率が高い。

「雪花 、ペナルティーのことは覚えているな」

「…………………」

せっかく忘れかけていたことを…。

「黙っても無駄だ」

「はい……」

「次の日曜日は空けておけ。10:00に駅前に集合だ」

「分かりました」

内容を言わないところがなお恐い。

「良いデータが取れることを期待しているからな」

口角をあげて言う柳君に若干恐ろしさを覚えました。

なにより日曜日が今から恐いです。



春休みの出来事 了








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あきゅろす。
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