[携帯モード] [URL送信]

禍福は糾える縄の如し
春休みには


「くれぐれも休み中に問題は起こすなよ。以上解散」

この担任の一言で私たちは短い春休みに突入した。

「雪花 、いっぱい遊ぼうね!!」

「春休みそんな長くないからね」

「そうだけどさ……せっかく宿題もないんだし」

「宿題はないけど休み明けにテストあるからね」

「麗、今回のテストで前回から一気に10位ほど順位が下がったらしいな」

「なんで柳がそれを……」

「隠し通せると思ったか」

げっ…開眼した!? 普通に目を開けられるんだからやっぱりいつもは……いや、考えないようにしよう。

「とりあえず麗のことは春休み中に勉強ということにして、私たちこれから部活だから行くね」

麗をズルズルと引っ張りながら部室へ行くともう全員が揃っていた。全員と言っても元々の人数が少ないだけなんだけどね。ちなみに私の部活は新聞部だったりする。

「全員集まったしミーティング始めるよ。みんな気になる春休みの部活だけど……特になし!! ただし宿題。一人一枚学校に関する記事書いてくること。それ集めて新入生に配る新聞の特別号作るから。あっ、題材だけは今日決めるから。そのためにこれ作ってきたわよ」

紫先輩が出したのはあみだくじ。随分と古典的な方法を……。


結果

「………なんですかこれ」

「題名の通り部活ピックアップのコーナーよ。有名な部活のエースとかにインタビューしてくるの」

部活ピックアップってなんだよ。麗とか学校のお勧めスポットとかじゃん。まだそっちの方が分かりやすいよ。

「じゃあ、うちの部活ピックアップでいいですよね」

「真面目にやりなさい」

「じゃあ、どんな部活ならいいんですか?」

「そうね…毎年全国いってる部活から選んでるけど…今年はテニス部外せないでしょうね」

「なんでですか!?」

「テニス部は今年全国制覇したのよ。ピックアップしないでどうするの」

……なるだけ関わりたくない。…というか幸村君及び柳君が怖いのだあと柳君から課せられるペナルティーも。

「テニス部の部長には私が連絡してあげるから。あと雪花 テニス部に知り合いいるから大丈夫でしょ」

大丈夫じゃないです!!

「あと、担当換えとか受け付けてないから」

そんなぁぁぁ!!

「なんでそんなテニス部嫌なの? イケメン多いじゃない」

「そういう問題じゃないんですよ…」

「雪花 は柳と幸村君にいじられる回数多いですから」

「そういえばこの前も柳君とじゃれあってたわね」

「じゃれあうとかいうレベルじゃないんですよ!!」

真面目に痛いんですから。

「なんにしても担当変えはなし!! 異論は受け付けません!! 以上」

「酷いですよ!!」

「これでも雪花 の能力見こんでるのよ」

「能力?」

「人の警戒心を薄くできるの。だから人から話を聞き出しやすい」

「それは分かります。雪花 って話しかけやすいですよね」

「そうそう。だから最近ファンクラブ出来てちょっと神経質になってるテニス部にはちょうどいいと思うの。あみだだったけど良い人選だと思うわ」

「なんかうまい具合に纏められた気がするんですけど」

「まあまあ、そんな拗ねないで。マッ〇くらい奢ってあげるから」

「先輩」

「何?」

「マ〇クよりビッ〇ボーイが良いです」

「先輩奢ってくれるんですか!! じゃあ私ガ〇トがいいです!!」

「あんたらいい加減にしなさいよ。というかどれだけがっつり食べる気なのよ」

「「ゴチになりまーす」」

「なんかムカつくわね」

という訳で紫先輩と(何故か居る)麗と私で(これまた何故か)麗の提案したガス〇に行くことになった。


「雪花 ちゃんじゃなか?」

「あ、仁王君」

仁王雅治。ちょっとした出会いから仲良くなって現在マブダチ状態だ。そして彼もテニスの王子様のキャラ。まぁ、そんなの関係なしに面白い奴なんだけどさ。

「今部活終わったんじゃよ。そっちもじゃろ?」

「そうだよ。今から先輩の奢りで御飯なんだ」

「仁王俺たちも行こうぜぃ!!」

「ブンちゃん…いつのまに来ちょったんじゃ」

………あれ? こいつ丸井ブン太じゃね?

「あれ? こいつら新聞部の奴らじゃね?」

「丸井君、こいつ呼びはいけませんよ」

「失礼だろブン太」

柳生比呂士にジャッカル桑原まで出てきたァァァ!!

「なんだよ…柳生にジャッカルまで…」

「ブン太何やってるの」

げっ…………そういえばここテニスコートの近くだった。

「あ…幸村君。帰りどっか寄って何か食って帰らねぇ?」

やっぱり幸村君居たァァァ!!

「まあいいけど。それより雪花 なんで居るの」

疑問型のはずなのにクエスチョンマークついてないんですけどォォォ!!

「帰り道の確率98%だな」

どっかのドSまで来たし!!

「結城たちか」

真田君この二人なんとかして!!

「雪花 今変なこと考えてなかった」

「滅相もございません!!」

やっぱり無理だと思う。

「ブン太、何か食べて帰るのはいいけど雪花 たちも一緒ね。雪花 たちもいいよね」

「そこら辺は大丈夫よ。もともと食べて帰る予定だったし」

紫先輩何で言ったんですか!?

「じゃあ決まり」

そんな…少女のように微笑まないで下さい。裏に何かあるんじゃないかと疑ってしまうので。



in 〇スト

「いらっしゃいませ何名様でいらっしゃいますか?」

「えーと…10人ね」

多い。店員さんとか慌ててテーブル片付けてるよ。

「お待たせしました。こちらへどうぞ」

案内された大きなテーブルに座り、各々注文する。

「そういえばまだ自己紹介してなかったよな。俺丸井ブン太シクヨロ」

「ジャッカル桑原だ。よろしくな」

「申し遅れました。柳生比呂士です」

「雪花 ちゃんは知っちょるが、お二人さんは初めてじゃな。仁王雅治じゃ」

テニス部で初めましての人たちが自己紹介をする。

「あたしは吉成麗。よろしく!!」

「結城雪花 です。よろしくお願いします……」

「切原紫。みんなより1年先輩だから」

「先輩の苗字切原だったんですか?」

「雪花 あんた知らなかったの!?」

そりゃ気づいたら名前でしか呼ばれてなかったし。名前さえ知ってれば問題ないし。

「迂闊だったわ。今度からはちゃんとフルネームで自己紹介しなきゃ」

「雪花 、私のは知ってるよね!!」

「うん。ケータイのアドレス帳にフルネームで入ってるから」

「ちょっとケータイ貸しなさい。私のもフルネームで入れるから」

「ちょっ、先輩勝手にケータイ弄らないで下さい!!」

「雪花 雪花 、じゃあ俺の名前言える?
なんかいつも苗字で呼ばれてるから名前覚えられてるか心配になってきたよ」

「それなら俺と弦一郎もだな」

「大丈夫だよ。ケータイに入ってるから」

「まさかケータイないと分からないとか言わないよね。ほらケータイ見ないで答えてみてよ」

なんで一言呟いただけでこんなことに……。

「もしかして本当に分からないわけ?」

「分かるよ!! 幸村精市君に、柳蓮二君、真田弦一郎君でしょ!!」

一気に言いきった。途端に周りがシーンとなった。

「お客様…周りのお客様のご迷惑になるようなことはお止めください」

「………すいません」

ほら私怒られちゃったじゃん。
他のみんなは…何で笑いたいの堪えてんのさ!!

「お前すごいぜぃ!! 俺ともメアド交換しようぜ!!」

「何が凄いんだか知らないけどメアドね。赤外線でいい?」

「いいぜぃ」

その後何だかんだで柳生君、ジャッカル君ともメアドを交換した。ジャッカル君なんか「ブン太が迷惑かけてきたらここにメールしてくれ」だってさ。本当に保護者だよね。


「そういえばさ…」

みんなそれぞれ料理を食べ終わってゆっくりしていた時に紫先輩がぽつりと呟いた。

「4月からうちの弟も立海に通うんだよね…」

紫先輩弟居たんだ。私紫先輩について知らないこと多いな。

「えっ!? 赤也立海来るんですか!?」

ん…アカヤ?

「吉成は切原先輩の弟を知ってるのか?」

「うん。髪の毛クシャクシャでワカメみたいなんだよ」

ワカメだと?

「麗、それは天パの私に対する嫌味かしら」

「ち違います!!」

「まあいいわ。その弟がテニス上手くなったらしくて調子のってテニス部入るらしいから厳しくしてね」

先輩の苗字は切原……切原アカヤ……切原赤也!! 先輩の弟って切原赤也なの!?

「もちろんです。一切手は抜きません」

真田君燃えてるよ。切原赤也大変だろうな。

「面白い奴だといいんだけど」

「精市がやり過ぎると泣くぞ」

「すぐ泣くような奴はつまらないだろ。どれだけ喚いても泣かないような奴がいいな。雪花 みたいにさ」

ぞわっとした。怖っ!!



俺幸村君の一番の被害者は真田だと思ってたぜぃ」
 
あいつも相当みたいだな」
 
「幸村は気に入ったやつしか相手にせんからのぅ
 
なんか横3人は小声でなんか話してるし目の前の幸村君は怖いし…もうやだ。
 
「ブン太、ジャッカル、仁王なんか言いたいことあるならはっきりいいなよ(黒)」

「「「なんでもないです!!!」」」

ちょっと全員標準語なんですけどォォォ!! 仁王君今更やっちまったみたいな顔しても遅いからね!!

「君たちの関係本当に面白いね」

「紫先輩笑い事じゃないんですよ!!」

「このぶんなら記事の件大丈夫なんじゃない?」

「それはどういうことですか?」

真っ先に食いついたのは柳君。

「新入生用に新聞配るんだけど雪花 の担当が部活ピックアップっていう注目の部活のエースとかにインタビューして話聞くっていうやつなんだけどね、テニス部は今年全国制覇したから外せないってことになったの。」

あ…背中に尋常じゃない冷や汗が……。

「面白そうだな」

柳君開眼しないで下さい…

「楽しそうだよね」

いや、同意できません。

「さて、テニス部のエースは誰かしら?」

「もちろん幸村君、真田、柳の3強だぜぃ!!」

丸井ィィィ!! その中にはドSが二人も含まれてるじゃないか!!

「いいんじゃない? 雪花 3人とも仲良いでしょ」

「でも、毎日練習で忙しいよね?」

忙しいと言ってくれ。

「部活が終わった後少しなら構わないよ」

幸村君!! なんでそんなこと言うんだ!!

「良かったね雪花 」

なんで笑い堪えながら言ってんの麗!!

「じゃあ後なんかあったら連絡して」

え、これもう逃げられないの?

「じゃあ雪花 頑張って!!」

はい、逃げられないこと確定。もう全力で頑張らせていただきます。

春休みに入ったその日の出来事でした。


春休みには?   了


[*前へ][次へ#]

第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!