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禍福は糾える縄の如し
柳君と勝負


今日こそ勝負の時!!

「よーしテスト返すぞ。席につけ。あとどんな結果でも騒ぐなよ」

そう今日で全てのテストが返却される日。つまり柳君とのテスト対決に決着がつく日。ここまでは5点差で私が有利だ。このまま負けるわけにはいかない。

「柳君私今回は自信があるの」

「俺も今回は負ける気はしない」

私と柳君の席は隣同士。つまり面と向かって宣戦布告状態なのだ。

「先生!! 後の席の柳君と結城さんが怖いです!!」

「柳、結城その臨戦体勢のオーラ仕舞え。さもなくばテストを0点にする」

そんなことされたらたまんない。すぐにオーラを仕舞う。

「じゃあ、出席番号順に取りにこい」

順番にテストが渡されていく。ちなみに今の時間は社会。1年生ということもあり、内容は簡単。2年生からの選択に備えた経済、歴史、公民の触りの部分。ただ、ジャンルがばらついているので点は取りにくい方だ。

「結城」

「はい」

「まー頑張ったわな」

点数は………88点。90いかなかったか。

「柳君点数いくつ?」

「これだ」

柳君が見せつけてくるテストの数字は90。負けた………。

「お前は88か。まあ悪くはないな」

「くやしい……」

「柳、雪花 何点だった……って二人ともすごっ!!」

「麗悔しい!! 負けた!!」

「負けてても凄いよ。私なんて48点だったんだけど」

「麗流石にそれは頑張ろう」

「あれ? あたし慰めてたはずなんだけど!?」

「騒ぐなって言っただろ!!」

あまりの騒ぎ様に先生が怒鳴る。

「騒ぐななんて無理なんだよ」

「そうだよ!!」

「バーカ バーカ」

「こんな難しいテスト作りやがって」

先生へクラス全員からヤジが飛ぶ。騒ぐなってのは無理だと言っているが、私の隣の男は落ち着きはらっているのだが。いや、先程より若干口角が上がっているからテンションは上がっているのか?

「たしかに今回のテストは難しくした。しかし、そのテストで80点以上とってる奴が二人もいるんだよ。しかも一人は90点。もちろん今回の最高得点だ」

一気に私と柳君へ視線が集まる。

「どっちが上なんだ?」

「結城か?」

「いや、反応的に柳だろ」

「マジであいつらの頭半端ないな」

私も柳君も何も言ってないんだけど…。

「とりあえず静かにしろ。解説始めるぞ」


まあ、そんなこんなで社会の時間は終わり、昼休みのすぐあと、5限目に返ってくる古典でfinishだ。とりあえず今はお昼を食べることに集中しよう。だが、それを邪魔する奴が一名。クラスメイトの中原君だ。

「結城なんとしてもテストで柳に勝ってくれよ!! 俺の昼飯かかってんだからな!!」

Why? いやいや、なんで私のテストに中原君の昼飯かかってんのよ。

「あれ? もしかして知らない感じ?」

中原君はだらだらと冷や汗をかき始める。

「じゃ、何も聞かなかったということで!!」

「待て待て待て。中原君どういうことか説明してもらおうか」

「誰か説明してくれよ!! 俺無理!!」

中原君の言葉にクラスのみんなはシカト。世の中そう甘くはないのだよ。

「なんでだよ!! みんな『さすがに結城でも知ってるよな(笑)』って言ってたじゃんかよ!!」

「それを真に受けて結城本人に言いに行くバカはお前だけだ」

「高松の裏切り者ォォォ!!」

いや、高松君が裏切り者でもなんでもいいけど私をおいて話を進めないでくれ。地味に辛いんだが。

「も「もう訳が分かんないとお前は言う」

「柳君…」

人の台詞に被せやがって…。

「お前のために今の状況を説明してやろう。簡単に言えば俺とお前のテストの点数がクラスの奴らの賭けの対象にされている」

「え…本当に……?」

「そうだよ。雪花 知らなかったの?」

麗知ってたんなら教えてよ!!

「知らないんだけど!!」

「雪花 ちゃん変なところ抜けてるもんね」

「そうそう結城ちゃんって本当に面白いよね」

そんな…春ちゃんに高原さんまで。

「因みに賭けの参加者は?」

「クラス全員ですね」

おいこら委員長、何普通に言っちゃってんの!? ていうかお前も参加してんの? 何真面目そうな顔して「僕は柳君に賭けました」とか言ってるのよ。お前の眼鏡かち割るぞ。

「そういうわけだ雪花 。余計負けられなくなったな」

そう言って笑う柳君が無性に苛ついた。ここは大人としてにっこり笑って「そうね」くらいの対応を…………

「上等だよ!!」

できるはずもなく、言っちゃったよ………。子供っぽくて悪かったな!! これでも中身の年齢はそこそこいってんです。

「フッ…その言葉忘れるなよ。因みに…」

まだなんかあるの?

「今回の俺の勝率は79%だ」

なにその異様な高さ。柳派が歓喜の声あげてるんだけど。まだ決着ついてないからね。


私が柳君の言葉を聞いてバカみたいにボケッとしてる間に昼休み終了の鐘がなる。しまった、お昼食べそこねた。

そんな私をよそに授業は始まる。

「ではテストを返します。出席番号1番から来てください」


……………

「結城さん。よく頑張ったわね。でも、ちょっとケアレスミスがね…」

点数は…82!? 柳君は!?

「柳君点数は?」

「88だ。どうやら俺の勝利のようだな」

The 敗北★

あ、また柳派が歓喜してる。教室が二分してるよ。私派は真面目に落ち込んでるし。先生はいまいちよく分かってないみたいだし。

「とりあえず解説始めますよ」

解説なんか聞いちゃいない。あー今回のペナルティーはなんなんだろう。そんなこんなでいろいろ考えてたら5限どころか6限まで終わっていた。

柳君の帰り際の「ペナルティーは後日」という言葉は最悪だった。

「雪花 元気出して!!」

「もう無理」

「じゃあ何で勝負なんてするかな」

「だって2回目のテストで惨敗したのショックだったんだもん」

「ああ、あの時ね。あたしも覚えてるよ。確か最初のテストで負けた柳が突っかかってったんだよね。それで2回目のテストから勝負するようになったんだっけ?」

「そうそう。負けたのが悔しいとか涼しい顔して意外だよね」

「だよね。あの柳が悔しがってるのとか想像つかない」

「というか想像の時点で笑える」

「誰の想像だ」

「そりゃ柳君………うん、なんでいるのかな柳君?」

噂をすればなんとやら。本人登場。

「忘れ物をとりにきたんだがな。教室まで来たらお前たちの話が聞こえたというわけだ」

最悪すぎる。神様は私のことが嫌いなのかもしれない。いや、会ったことないからわかんないけどさ。

「どうやらこの前頬をつねっただけでは駄目だったようだな」

「いひゃいいひゃいれす!!(痛い痛いです!!)」

またつねられた!! ここは麗に助けを求めるしかない。喋れないからアイコンタクトで。

(麗ヘルプ!!)

(ごめん、それは無理。頑張って)

(麗の裏切り者ォォォ!!)

今なら中原君の気持ちが分かります。

明日あたり謝ろう。

ていうか柳君痛いよ!! いい加減離して!!

「雪花 !! 麗!! 遅い!!」

バンッという効果音と共に入ってきたのは私と麗の部活の先輩。紫先輩。

「なかなか部活来ないし、電話しても出ないしどこにいるのかと思ったら…」

「あ…本当だ。紫先輩すいません」

「ちゃんと連絡とれるようにしておいてね」

「はーい」

「よろしい」

二人ともそこで話を完結させないで!!

「ほらほら柳君も部活始まってるんじゃないの?」

「そうですね」

やっと離れて部活行ってくれた。柳君のつねり方容赦ないよね。

「なんで私ばっかりこんな目に……」

「雪花 が『想像の時点で笑える』って言ったから」

「今回はそうだけどさ………」

「まあまあ、柳ファンとかだったら代わってとか言い出しそうなシュチュエーションじゃん」

「私柳君ファンじゃないから!!」

「雪花 が柳君ファンじゃないにしても柳君のファンの前であんなことされたら死刑ものだね」

柳君ファンはドMか?

「あっ、ヤバいここにきてからかなり時間経ってる。雪花 、麗ダッシュっ!!」

「「はい!!」」

その後廊下を走ったら委員会活動中という真田君に怒られ、部活ではかなり遅れたので副部長に怒られました。



翌日

「中原君ごめんね!!」

「なんか分かんないけどいいぜ!!」

「中原君超優しい!!」

「でもお前のせいでとんだ昼飯をおごってほしい」

「それは無理」

柳君と勝負 了





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